導入事例
事例:株式会社 日本取引所グループ 様金融
(2025年3月)
高速で複雑な取引が行われるネットワークを
信頼性とサポート力の高さで支えるアラクサラ製品
東京証券取引所や大阪取引所などを運営し、我が国の経済の根幹を担う日本取引所グループ(JPX)。市場を巡る環境の変化に伴い、ネットワークの高速化が求められていた同社は、2009年に新統合ネットワーク「arrownet」を構築。現在では、データセンター内のLAN領域にアラクサラネットワークス(以下、アラクサラ)のスイッチを採用している。以来、同社は15年以上にわたってアラクサラ製品を利用し続けており、市場に求められる「レジリエンス」の強化と「公平性」の確立を実現している。

もくじ
-
株式会社JPX総研
ITビジネス部
デジタライゼーション部長
西端 恭一 氏 -
株式会社JPX総研
ITビジネス部
課長
江本 雄治 氏 -
株式会社JPX総研
ITビジネス部
調査役
高山 明久 氏
JPXの各種システムと投資家を繋ぎ日本の市場を支える
超広帯域回線サービス「arrownet」
日本取引所グループ(JPX)についてお聞かせください。
西端:東京証券取引所(東証)や大阪取引所を運営する取引所グループです。わが国における金融取引の国際競争力の強化を目指し、当時の東京証券取引所が持つ現物市場と大阪証券取引所が持つデリバティブ市場、それぞれの強みを活かすかたちで、2013年1月に両者が経営統合し発足しました。現在、商品デリバティブ市場を扱う東京商品取引所、株式やデリバティブ取引の清算を行う日本証券クリアリング機構も傘下に置き、取引所関連の総合サービスを提供するグループとして幅広く事業を展開しています。
2022年4月には、新たな金融サービスの創出に向けて、グループ内のデータおよびデジタル関連の事業を集約し、金融商品市場に関係するデータ・インデックスサービスや、システム・ネットワーク関連のサービスを一元的に担うJPX総研が事業を開始しました。JPX総研は、内製の開発力を持つシステムベンダーとして、取引関連のシステム開発、ネットワーク構築、コネクティビティサービス、システム運用などを行っています。
JPXが運用するネットワーク「arrownet」について教えてください。
江本:arrownetは、JPXの各種システム(売買系システム、清算系システム、情報系システムなど)と投資家等の取引参加者をつなぐネットワークです。2000年代以降、コンピュータを使った「アルゴリズム取引」が急増。売買注文処理の高速化が求められるようになったため、新取引システム「arrowhead」の東証専用ネットワークとして2009年に初代「arrownet version1.0」が稼働したのが始まりです。その後、大阪証券取引所や東京金融取引所(TFX)など、東証以外の金融機関への接続を拡げるため2代目「arrownet version2.0」のプロジェクトがスタートし、2012年から稼働しています。
arrownetでは、処理時間の短いアルゴリズム取引に対応するため、コロケーションサービスを提供しています。コロケーションサービスとは、投資家のデータセンターをJPXのネットワーク内に作るようなイメージで、JPXの売買系システムとの物理的な距離を短縮することで発注時のレイテンシー(遅延)を低く抑えています。また、マーケットの急激な変化に伴う注文集中や相場配信データの増大などに対応するため、超広帯域回線サービス(10Gbps回線)を提供しています。
初代「arrownet version1.0」の事例はこちら
アラクサラ製品の信頼性の高さ、迅速で的確なサポートを評価
15年以上にわたって利用を継続
arrownetとアラクサラの関係を教えてください。
江本:2009年の初代arrownetからアラクサラの製品を使っており、コロケーションサービスのネットワークにも採用しています。さらにいえば、arrownet以前の統合ネットワークの時代から使い続けている実績があります。arrownetは複数のベンダー製品から構成されていますが、アラクサラ製品は主にデータセンター内のLAN領域で使われています。
arrownetのデータセンターはプライマリセンターおよびセカンダリセンター(バックアップサイト)によって冗長化されており、災害時におけるJPXの事業継続性や、市場参加者の取引継続性を確保しています。コロケーションエリアもプライマリセンター近傍に設置されており、これらの領域でアラクサラ製品を採用しているのですが、2013年のJPX発足時に導入したコロケーション向けのスイッチが保守切れを迎えることから、2024年にリプレースを行い、現在も継続して利用しています。
アラクサラのスイッチはどのぐらいあるのでしょうか。
高山:arrownetにあるL2、L3スイッチのうち、半分以上がアラクサラ製品です。

初代arrownetが稼働を開始した2009年からアラクサラ製品を利用し続けている理由はどこにありますか。
江本:なんといっても信頼性の高さです。15年以上にわたる利用の中で、アラクサラスイッチの故障によって通信影響が発生したことはほとんどありません。また、一般的なIT製品は標準の保守が5年程度で更新となりますが、アラクサラは10年間の保守に対応しているので、安心して長期間使い続けることが可能です。
サポート面にも満足しています。障害発生時の問い合わせに対する回答や調査のスピードも速く的確なので、国内ベンダーならではの安心感があります。
西端:近年、金融のシステムやネットワークの分野でキーワードとなっているのが「レジリエンス(強靱性)」で、故障が発生したとしても業務に影響がないようにしたり、業務影響が出ても速やかに復旧したりといったことを重視する傾向が強くなっています。中でもデリバティブ取引は夜間も祝日も取引を実施するようになったことで、その間もネットワークは動き続ける必要が出てきました。また、FX(外国為替証拠金取引)でも土日を除いた平日にほぼ一日中取引が行われています。こうした環境においても安定して動き続け、また復旧へ迅速に取り組むなどサポートもしっかりしているアラクサラ製品は高く評価しています。
高山:幅広い世代のOSサポート(TACへの問い合わせなど)を継続してもらえる点も助かっています。他のベンダーの場合、新しいOSがリリースされると、古いOSは一定期間後にサポート外となるのが一般的です。したがって、JPXで検証済みの安定動作しているOSもバージョンアップが必要となり、再検証や更新作業の工数がかかります。しかしアラクサラでは、長年使い続けて実績のある安定したOSバージョンを使い続けられるので工数を削減でき、システムの長期安定稼働に大きく寄与しています。

長期安定稼働を実現するソリューションの情報はこちら
取引が高速化、複雑化していく中、
アラクサラ製品により「公平性」を確保
ネットワークに関して、JPXが重視している点はどこにありますか。
西端:先ほど申し上げた「レジリエンス」に加えて、「公平性」も重視しています。1秒間で数千回の取引を行う超高速取引業者が増えている現状、ネットワーク機器が原因で特定の対象だけが高速になる、といったことは許されません。すべての人が同等のレイテンシーで取引できることが必須になります。アラクサラのスイッチはそのあたりの開示がしっかりしていますし、高い意識で対応いただいています。
江本:2009年当時はミリ秒単位で行われていたシステム取引が、あっという間にマイクロ秒(1000分の1ミリ秒)になり、今はさらにその1000分の1のナノ秒クラスの競争になっています。レイテンシー自体がますます小さくなっていく中、機器に求められる公平性はより高まっているといえるでしょう。アラクサラ製品は取引が高速化した際も機器ごとの揺らぎが少なく、市場参加者からの期待にうまく応えてくれていると思います。
高山:近年、コロケーションの分野ではシステムトレードが主流で、コンピュータのリソースに対する考え方や戦略は投資家によって変わってきます。こうしたさまざまな思惑のもとに接続してくる投資家からのアクセスを引き受けるのがスイッチですので、堅牢性を維持しつつ複雑な通信要件をクリアしセッションを成立させることが最も重要です。この点、アラクサラのスイッチはそれらの要件を満たしています。
また、私たちは開発の過程で各種機器に対し、要件や設計に合致しない動作が発生しないことはもちろんですが、公開されている機器仕様に照らして不整合な動作が発生しないか、レイテンシーが要求にマッチしているかなど、厳しいテストを行ってから本番で利用しています。このテストの中で、1台でも不合格品があったりすると、本番環境への導入にもおいても疑心暗鬼になりかねません。そうした意味では、アラクサラ製品は性能のばらつきや機器の不具合等の理由で不合格になったことは一度もありません。どんな機器をどれだけ導入しても、同じパフォーマンスが発揮される点については安心感があります。
レジリエンスの強化に向けて
サイバーセキュリティ対策と経済安全保障対策を実施
今後の展望についてお聞かせください。
西端:WANの領域を中心にarrownetを更新し、2026年度中には3世代目となるarrownet 3.0への移行を完了させる予定です。
今後もarrownetにおけるレジリエンスの強化は継続して求められると思います。それゆえ、ネットワークに大きな影響を与えるDDoS攻撃などの脅威への対策が必須です。また、政府が進めている経済安全保障についても重要度を増していますので、部品から組み込まれているプログラムまでチェック体制を整備していく方針です。
最後にアラクサラに対する評価と要望をお聞かせください。
江本:取引の高速化はこれからも進み、ナノ秒から先の世界も見えています。そのためにも、信頼性の高い機器と、これまでと変わらない質の高いサポートの提供に期待しています。
高山:JPXでは今後もグローバル化を積極的に進めていきますので、私たちと歩調を合わせるかたちで、アラクサラにもグローバルでの存在感を高めていってほしいと思います。
ありがとうございました。
About 株式会社日本取引所グループ
2013年1月、東京証券取引所グループと大阪証券取引所が経営統合し誕生。子会社・関連会社を含めたグループ全体で、取引所金融商品市場の開設・運営にかかる事業を行っている。同社の子会社であるJPX総研は、金融商品市場に関係するデータ・インデックスサービスおよびシステム関連サービスの提供に加え、その他の取引所金融商品市場の開設に関する業務などを行っている。