事例:九州工業大学様
次世代を見据えた10Gネットワークを実現。
(1)導入背景:高速光ネットワークで、3キャンパス連携をさらにスムーズに
現在、九州工業大学様(※以下、九工大)は、3つのキャンパスで構成されています。福岡県北九州市戸畑区の戸畑キャンパスを中心に、同じく北九州市若松区の若松キャンパス、そして福岡県飯塚市の飯塚キャンパス。それぞれのキャンパスで、宇宙環境技術をはじめとして、次世代ネットワーキング技術、金型技術、バイオマイクロセンシングなど、日本のみならず、世界をリードする先進技術が日々研究されています。
また他学に先駆け、e-ラーニング事業推進室をいち早く開設するなど、遠隔教育の分野で先駆者的存在の九工大では、キャンパス間を連携させるネットワークも早期から整備を進め、データの連携はもちろん、教職員のみなさんによるテレビ会議システムなども以前から積極的に活用されていました。
「しかし、高速光ネットワークで、もっと高速に、もっと快適に、3つのキャンパスを連携させていこう、というのが全学の情報化に関する委員会である情報化推進委員会での統一したビジョンでした。学生たちに、そして研究の現場にも、もっと快適な通信環境を提供したいと考えたのです。」と今回のネットワークインフラの再構築の起点を、九工大情報科学センター助教授/中村豊氏は振り返ります。
従来のネットワークインフラ(* 図1)を見てみると、バックボーン自体は1Gbpsで構成されていましたが、導入されているスイッチは旧式のため、そのバックボーンを活用しきれない状況でした。また、戸畑キャンパスと若松キャンパスとをつなぐバックボーンはATM。一方、戸畑キャンパスと飯塚キャンパスは広域イーサネットによって連携されていました。3キャンパスを接続する遠隔会議や遠隔講義などでは、キャンパス間の通信帯域の問題により、問題が顕在化しつつありました。ネットワークインフラ整備をいち早く 進めてきた九工大だからこそ、ここにきて表面化してきた課題。情報化推進委員会でも、今後3キャンパスを連携させるには、やはり新技術を採用した次世代ネットワーク化を一気に進める必要があると即断されました。
「今回、ネットワークを刷新するにあたってテーマは2つありました。まずは、3キャンパスの接続点および対外接続点である戸畑キャンパス内のネットワークインフラの改善。そして二つ目が、3キャンパスを連携させるネットワークインフラの改善です。」と中村氏。
そこで、まずは安定した高速通信を目的にダークファイバーを活用。あわせてネットワークスイッチなどを次世代型へ刷新することで、大学全体に高速光ネットワークを整備するプロジェクトがスタートしたのです。
(2)製品選択基準:ギガビットネットワークによる、次世代のITインフラを確立
今回のプロジェクトで、まずダークファイバーの活用によって、ギガビットネットワークへの移行が可能になった九工大のネットワークインフラ。しかし1Gbpsではなく、10Gbpsでの構築が情報化推進委員会の統一意見でした。「やはり九工大としての今後のビジョンを考えると、10Gイーサネットに刷新することが必須でした。より長い期間、ストレスなく活用できるようにインフラとしての耐久性を高めることを、情報化推進委員会の総意として重視しました。単に現状を改善するだけでなく、将来への拡張性を重視した設計が必要だと多くの先生方からご意見をいただきました。そのため、ネットワークスイッチの要求条件の検討は特に慎重に行われました。」と中村氏。
さて、ネットワークスイッチの要求条件の選定に関して重視されたポイントは、具体的に3つあったと中村氏は語ります。
「まず、10Gbpsに対応していること。2番目は、高いルーティング性能を備えたレイヤ3スイッチであること。3番目は、IPv6・マルチキャストに対応していること。九工大が将来目指している教育環境を構築する上で、IPv6に対応したネットワークを構築することは不可欠だったのです。それらを条件に審査が行われ、結果アラクサラネットワークスのAX3630S-24T2Xが、コストパフォーマンスの面でも優れていると判断されました」。
1Uサイズボックス型でありながら10Gbpsに対応しているAX3630S-24T2X。10Gbpsの構内ネットワークを構築し、さらにルーティングプロトコルOSPFを活用して、キャンパス間も10Gbpsで接続も可能にしました。
その他、実際にテストを進めて行く中で、導入テスト中にアラクサラネットワークスが『純国産メーカー』という利点も感じられたようです。
「設計者も開発者も国内にいる訳ですから、こちらからの技術的な質問へのレスポンスが非常にスピーディーでした。ネットワークのテストがスムーズに進み、正式な稼働までの期間が想像以上に短期間だったことは、大きな利点でしたね。」と中村氏。
現在、戸畑キャンパスと若松キャンパスの連携、また戸畑キャンパスと飯塚キャンパスの連携には10G ER 標準規格をサポートしているAX3630S-24T2Xが導入され、長距離であっても10Gbpsの通信環境を安定して提供しています。また、戸畑キャンパス内のネットワークには複数のAX2430S-24Tが導入され、見事に九工大全体を網羅する高速光ネットワークが構築されました。
(3)導入効果:10Gbpsが生んだ、知のコラボレーション
10Gbpsのネットワークを活用して九工大は、回線コスト、運用コストの削減を実現し、かつ様々なデータだけでなく音声(VoIP)などIPアプリケーション追加や施設の移転などにも柔軟に対応できる、新たなネットワークインフラ整備に成功しました。また、3キャンパス間のデータ連携が一層スムーズになったことで、テレビ会議が一層積極的に活用され、教職員間での意見交流や新たなコラボレーションがどんどん生まれているようです。アラクサラネットワークスが提供するネットワーク環境が、九工大の新たな研究活動を創造するかもしれません。
(4)ビジョン:将来的には、無線LANでの遠隔講義の実施や、e-ラーニングもますます進展
現在、戸畑キャンパスでは、多くの講義棟で改築や新築が進められていますが、九工大では今後、それらのネットワークに無線LANを積極的に活用していく計画もお持ちです。
「今回の高速光ネットワークで、学内に無線LANをより積極的に利用することも可能になるでしょう。全ての利用者にユビキタス環境を提供することも不可能ではないと思います。例えば、若松キャンパスの学生が戸畑キャンパスで行われている講義を、移動せずに若松キャンパスでノートPCを介して受講できる学習スタイルが、近い将来九工大では当たり前になっているかもしれませんね。」と中村氏。
また、新たなネットワークインフラは、九工大が推進するe-ラーニングにも大きな影響を与えることが必至です。
「誰もが、必要な講義を、いつでも、どこからでも受講できるスタイルが確立されるかもしれません。」と、中村氏はユビキタス・ラーニングのインパクトの大きさを指摘しました。
学習スタイル、コミュニケーションスタイルを変え、新たな知のコラボレーションを育む、九工大の高速光ネットワーク。今日もアラクサラネットワークスが、支えています。