解説書 Vol.1
マルチリンクPPP上で,接続相手局との間でリンク追加・削除をネゴシエートする手順をBAP(Bandwidth Allocation Protocol),マルチリンク上でBAPの使用を接続相手局とネゴシエートする手順をBACP(Bandwidth Allocation Control Protocol)といいます。
BACPはNCPと同様の動作になります。BACP/BAPを使用してリンク追加を行う場合のシーケンスを「図5-14 リンク追加シーケンス(発呼でリンク追加)」および「図5-15 リンク追加シーケンス(着呼でリンク追加)」に示します。また,リンク削除を行う場合のシーケンスを「図5-16 リンク削除シーケンスに示します。」
- <この項の構成>
- (1) BACP制御パケットフォーマット
- (2) BAP制御パケット
- (3) Call-RQとCallback-RQの使い分け
- (4) オーバーロードポート追加の拒否
- (5) BAP未使用時の注意点
「図5-8 PPPでカプセル化したデータフォーマット」のProtocolフィールドが0xC02Bの場合,該当するPPPフレームにはBACPパケットがカプセル化されます。BACP制御パケットの機能を「表5-16 BACP制御パケットの機能」に,BACPパラメータリストを「表5-17 BACPパラメータリスト」に示します。
機能および
適用プロトコルパケット名 Code値
(16進数)ID値 役割 リンク設定 Configure-RQ 01 任意の値 BACPのリンク接続要求パケット。
相手局に自局の受信条件を通知します。
データフィールドにパラメータリストを格納します。Configure-Ack 02 Configure-RQに等しい値 受信Configure-RQに対するAckパケット。
相手局から通知された受信条件で接続できる場合はこのパケットで応答します。
データフィールドにパラメータリストを格納します。Configure-Nak 03 Configure-RQに等しい値 受信Configure-RQに対するNakパケット。
相手局から通知された受信条件で接続できず,受信条件の変更を求める場合の応答です。
データフィールドにパラメータリストを格納します。Configure-Rej 04 Configure-RQに等しい値 受信Configure-RQに対するRejectパケット。
相手局から通知された受信条件で接続できず,受信条件の撤回を求める場合の応答です。
データフィールドにパラメータリストを格納します。リンク切断 Terminate-RQ 05 任意の値 BACPのリンク切断要求パケット。
データフィールドはありません。Terminate-Ack 06 Terminate-RQに等しい値 BACPのリンク切断要求に対するACKパケット。
(BACPにはリンク切断要求に対する拒否パケットはありません。)
データフィールドはありません。未知Codeパケット拒否 Code-Rej 07 任意の値 受信したBACP制御パケットのCode値に認識できないものがあった場合の応答です。
データフィールド内容は認識不能なパケットです。
プロトコル種別 Type
(16進数)Length パラメータ・データ Data長 内容※ BACP 01 6 4 Favored-Peer 注※ パラメータの詳細については該当のRFCを参照してください。
「図5-8 PPPでカプセル化したデータフォーマット」のProtocolフィールドが0xC02Dの場合,該当するPPPフレームにはBAPパケットがカプセル化されます。
BAP制御パケットの機能を「表5-18 BAP制御パケットの機能」に,BAPパラメータリストを「表5-19 BAPパラメータリスト」に示します。
機能および
適用プロトコルパケット名 Code値
(16進数)ID値 役割 リンク追加 Call-RQ 01 任意の値 BAPのリンク追加要求パケット。
相手局に自局から発呼してリンク追加の要求を通知します。
データフィールドにパラメータリストを格納します。Call-Response 02 Call-RQに等しい値 受信Call-RQに対するResponseパケット。
データフィールドにパラメータリストを格納します。Callback-RQ 03 任意の値 BAPのリンク追加要求パケット。
相手局に自局に着信してリンク追加の要求を通知します。
データフィールドにパラメータリストを格納します。Callback-Response 04 Callback-RQに等しい値 受信Callback-RQに対するResponseパケット。
データフィールドにパラメータリストを格納します。Call-Status-Indication 07 このパケットを発生させたCall-RQまたはCallback-RQに等しい値 BAPのリンク追加結果通知パケット。
データフィールドにパラメータリストを格納します。Call-Status-Response 08 Call-Status-Indicationに等しい値 受信Call-Status-Indicationに対するResponseパケット。データフィールドにパラメータリストを格納します。 リンク削除 Link-Drop-Query-RQ 05 任意の値 BAPのリンク削除要求パケット。データフィールドにパラメータリストを格納します。 Link-Drop-Query-Response 06 Link-Drop-Query-RQに等しい値 受信 Link-Drop-Query-RQに対するResponseパケット。
データフィールドにパラメータリストを格納します。
プロトコル種別 Type
(16進数)Length パラメータ・データ Data長 内容※ BAP 01 5 3 Link-Type 02 3以上 1以上 Phone-Delta 03 2 0 パラメータ・データなし。このパラメータリストはNo-Phone-Number-Neededを意味します。 04 4 2以上 Reason 05 4 2 Link-Discriminator 06 4 2 Call-StatusとAction 注※ 各パラメータの詳細については該当のRFCを参照してください。
本装置でBAPを使用する場合に,Call-RequestとCallback-Requestのどちらでリンク追加の要求を行うかを判断する条件として,Call-RequestとCallback-Requestの使い分けを次の表に示します。
表5-20 Call-RequestとCallback-Requestの使い分け
構成定義 状態 使用Request 発着信指定 相手電話番号 電話番号通知
※1発信規制中※2
でない電話番号着信専用 − − − Callback-Request 発着信両用 なし なし − Callback-Request あり − なし Callback-Request あり − あり Call-Request なし あり − Call-Request (凡例) −:該当しない
注※1 Call-Response送信サイトが,Call-Responseパケットに自局の電話番号を付加して通知するオプションです。
注※2 ISDN接続でネットワークまたは接続相手が原因と推定される障害を検出したとき,その相手電話番号への発呼を3分間規制します。
Call-RequestおよびCallback-Requestに対する拒否応答は,Nak(一時的な拒否)とFull-Nak(永続的な拒否)があります。本装置でのNak(一時的な拒否)およびFull-Nak(永続的な拒否)の応答理由を次の表に示します。
受信要求 応答 理由 Call-Request Nak
- 自局で回線使用率監視を行っており,回線を追加するほど回線使用率が高くありません。
- ISDNプール内で使用可能なチャネルがありません。
- 同一通信相手の別インタフェースの追加・削除が完了していません。
- 追加要求された回線の速度が既存のマルチリンクPPP内PPP回線の速度と異なります。
Full-Nak
- 使用中のマルチリンク内回線数が,構成定義で指定されたオーバーロードポート数に達しています。
Callback-Request Nak
- Callback-Requestで通知された相手側の電話番号が発信規制中です。
- Callback-Requestで通知された相手側の電話番号が構成指定値と異なります。
- 自局で回線使用率監視を行っており,回線を追加するほど回線使用率が高くありません。
- ISDNプール内で使用できるチャネルがありません。
- 同一通信相手の別インタフェースの追加・削除が完了していません。
- 追加要求された回線の速度が既存のマルチリンクPPP内PPP回線の速度と異なります。
Full-Nak
- 使用中のマルチリンク内回線数が,構成定義で指定されたオーバーロードポート数に達しています。
- 通信相手の構成指定が着信専用になっています。
- BAPネゴシエーションは,相手局との間でBACPが確立していることが前提です。BAPを使用するかどうかは,BOD構成定義で指定できます。BAPの使用を設定するとき,BACPネゴシエーションを相手が拒否した場合はBAPの使用を中止します。
BACPネゴシエーションを相手が拒否した場合,または構成情報でBAPを使用しないことを指定した場合は,オーバーロードポートの追加条件を検出しても追加を行わない場合があります。これは,発呼できないでallback-Requestのネゴシエーションもできないために発生します。リンク追加を行わないケースを次の表に示します。
構成定義 状態 発着信指定 相手電話番号 電話番号通知 発信規制していない電話番号 着信専用 − − − 発着信両用 なし − − あり − なし (凡例) −:該当しない
- 通信相手との間で使用するISDN回線数は,BOD構成情報で最大数を制限できます。BAPを使用している場合は,この制限を超えたリンク追加要求があった場合は,拒否応答できます。
BAPを使用していない場合は拒否応答ができないため,接続相手は発呼を行います。この場合にPAP/CHAP認証手順でリンク接続相手を識別する場合,ISDN着信時では相手局が特定できないため,該当する通信相手との間で使用するISDN回線数が,BOD構成情報の最大数制限を超えているか判定できません。このため,PAP/CHAP認証で接続相手が決まってから最大数制限を超えたことを検出してISDN回線を切断します。したがって,発呼側で不要な課金がかかります。この場合の通信シーケンスを次の図に示します。
図5-17 PAP/CHAP認証の場合の最大リンク数超えによる課金の発生シーケンス
この不要な課金は,発信者番号識別で接続相手認証を行う設定すれば避けられます。発信者番号識別を行う設定にすると,ISDNの着信時に通知された電話番号に基づいて相手を特定します。最大数制限を超えたことを検出して着信を拒否するため,不要な課金が発生しません。
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