解説書 Vol.1

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5.2.7 マルチリンクPPP(MP)

複数のPPPリンクを束ね,論理的に1本の通信路を確保する手順をマルチリンクPPP(MP)といいます。IPなどのレイヤ3プロトコルから見て,1本の通信路に見えます。マルチリンクPPPを構成する各リンクは,同一RPに収容される複数の回線にわたることができます。なお,各リンク上ではPPPが動作します。マルチリンクPPP転送の概要を次の図に示します。

図5-10 マルチリンクPPP転送の概要

[図データ]

<この項の構成>
(1) 構成例
(2) マルチリンクカプセル化フォーマット
(3) マルチリンクカプセル化とオーバーヘッド

(1) 構成例

マルチリンクPPPは,ISDNと専用線に適用できます。ISDNのPPPリンクだけの構成,専用線のPPPリンクだけの構成,ISDNと専用線のPPPリンクの混在した構成に適用できますが,各PPPリンクの通信速度は同一である必要があります。マルチリンクPPPを構成するPPPリンク数の最大は6です。マルチリンクPPPを適用した構成例を次の図に示します。

図5-11 マルチリンクPPPを適用した構成例

[図データ]

[図データ]

[図データ]

(2) マルチリンクカプセル化フォーマット

マルチリンクPPPは複数PPPリンクを束ねて論理的に1回線に見せ,各PPPリンクにパケットを分割して送信します。このため,各分割パケット(これをフラグメントといいます)の順序制御を行う機能を持っています。マルチリンクカプセル化フォーマットを「図5-12 マルチリンクカプセル化フォーマット」に,マルチリンクパケットの各フィールドの内容を「表5-15 マルチリンクパケットの各フィールドの内容」に示します。

図5-12 マルチリンクカプセル化フォーマット

[図データ]

表5-15 マルチリンクパケットの各フィールドの内容

フィールド名 値(16進数)
Flag 7E固定
Address FF固定
Control 03固定
Protocol 0x003d
B/E bit 開始/終結ビット。パケット分割時,先頭フラグメントのBビットをオンにし,終結フラグメントのEビットをオンにします。
Sequence シーケンス番号。フラグメントごとにシーケンス番号を付加します。
FCS ITU-T準拠の16ビットCRC

(3) マルチリンクカプセル化とオーバーヘッド

マルチリンクカプセル化を実現するため,各フラグメントに順序制御を行う情報を持ったMPヘッダと通常のPPPヘッダを付加します。このため,このヘッダのオーバーヘッドが発生します。

次にMPヘッダ付加の概要とオーバーヘッドの見積もり方について示します。

IPなどのレイヤ3プロトコルパケットをマルチリンクPPPで分割するマルチリンク分割方法を次の図に示します。

図5-13 マルチリンク分割方法

[図データ]

図5-11 マルチリンクPPPを適用した構成例」を基に,X本のPPPリンクでマルチリンクPPP手順を使う場合のオーバーヘッドの増分(バイト数)は,次の式で表すことができます。

 
(4(PPPヘッダ)+4(MPヘッダ)+4(FCS+フラグ))×リンク数
 

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