解説書 Vol.1
複数のPPPリンクを束ね,論理的に1本の通信路を確保する手順をマルチリンクPPP(MP)といいます。IPなどのレイヤ3プロトコルから見て,1本の通信路に見えます。マルチリンクPPPを構成する各リンクは,同一RPに収容される複数の回線にわたることができます。なお,各リンク上ではPPPが動作します。マルチリンクPPP転送の概要を次の図に示します。
- <この項の構成>
- (1) 構成例
- (2) マルチリンクカプセル化フォーマット
- (3) マルチリンクカプセル化とオーバーヘッド
マルチリンクPPPは,ISDNと専用線に適用できます。ISDNのPPPリンクだけの構成,専用線のPPPリンクだけの構成,ISDNと専用線のPPPリンクの混在した構成に適用できますが,各PPPリンクの通信速度は同一である必要があります。マルチリンクPPPを構成するPPPリンク数の最大は6です。マルチリンクPPPを適用した構成例を次の図に示します。
マルチリンクPPPは複数PPPリンクを束ねて論理的に1回線に見せ,各PPPリンクにパケットを分割して送信します。このため,各分割パケット(これをフラグメントといいます)の順序制御を行う機能を持っています。マルチリンクカプセル化フォーマットを「図5-12 マルチリンクカプセル化フォーマット」に,マルチリンクパケットの各フィールドの内容を「表5-15 マルチリンクパケットの各フィールドの内容」に示します。
図5-12 マルチリンクカプセル化フォーマット
フィールド名 値(16進数) Flag 7E固定 Address FF固定 Control 03固定 Protocol 0x003d B/E bit 開始/終結ビット。パケット分割時,先頭フラグメントのBビットをオンにし,終結フラグメントのEビットをオンにします。 Sequence シーケンス番号。フラグメントごとにシーケンス番号を付加します。 FCS ITU-T準拠の16ビットCRC
マルチリンクカプセル化を実現するため,各フラグメントに順序制御を行う情報を持ったMPヘッダと通常のPPPヘッダを付加します。このため,このヘッダのオーバーヘッドが発生します。
次にMPヘッダ付加の概要とオーバーヘッドの見積もり方について示します。
IPなどのレイヤ3プロトコルパケットをマルチリンクPPPで分割するマルチリンク分割方法を次の図に示します。
「図5-11 マルチリンクPPPを適用した構成例」を基に,X本のPPPリンクでマルチリンクPPP手順を使う場合のオーバーヘッドの増分(バイト数)は,次の式で表すことができます。
(4(PPPヘッダ)+4(MPヘッダ)+4(FCS+フラグ))×リンク数
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