解説書 Vol.1

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5.2.9 PPP関係タイマ値,リトライ値

本装置では,構成定義情報によってタイマ値,リトライ値を変更できます。PPPに関係する構成定義の設定項目を次に示します。

Echo trial times,Echo success times
回線品質監視の試行回数と,回線品質「良」とみなす閾値の設定です。あらかじめ回線品質が悪いことがわかっているシステムや,代替ルートがないWAN回線を適用するケースなどで,回線品質「悪」検出の感度を鈍くできます。

Echo interval
回線品質監視の試行間隔の設定です。相手局の性能の問題などで,試行間隔を開けなければならない場合などに試行間隔を伸ばせます。

PPP Retry Timer
PPP制御パケットの再試行間隔の設定です。リンク設定時にPPP制御パケットの取りこぼしがある場合などにリンク設定時間を短くして再試行待ち時間を縮められます。

本装置がサポートするPPPのイベント検出項目と関連するタイマ値およびリトライ回数を次の表に示します。

表5-23 PPPのイベント検出項目と関連するタイマ値およびリトライ回数

機能および
適用プロトコル
PPPのイベント項目 動作時間
(デフォルト値)
関連タイマ値,
リトライ回数
リンク設定
LCP
NCP※1
BACP
BAP
相手局無応答時間 33秒 PPP Retry Timer
Max Configure
ネゴシエーション未収束検出時間 数秒以下※2 Max Failure
リンク切断
LCP
NCP※1
BACP
相手局無応答時の切断時間 18秒 PPP Retry Timer
Max Terminate
リンクメンテナンスLCP リンク設定直後の品質確認時間 数秒以下※3 Echo trial times
Echo success times
Echo Interval
リンク設定直後のEcho無応答による回線品質劣化検出時間 最大21秒
通信中の品質監視間隔 最大21秒
通信中の回線障害検出時間 6〜21秒

注※1 本装置がサポートするNCPはIPCP,IPXCP,BNCP,IPV6CP,OSINLCPです。

注※2 厳密には「図5-20 ネゴシエーション未収束シーケンス例」に示す動作シーケンスを完了するまでの時間であり,相手の応答時間に依存しますが,通常は,即時に応答を返すため,数秒以内でシーケンスが完了します。

注※3 厳密には「図5-23 リンク設定直後の品質確認の正常シーケンス例」に示す動作シーケンスを完了するまでの時間であり,相手の応答時間に依存しますが,通常は,即時に応答を返すため,数秒以内でシーケンスが完了します。


本装置がサポートするPPP制御のタイマ値およびリトライ回数の一覧を次の表に示します。

表5-24 タイマ値およびリトライ回数の一覧

パラメータ名 適用 設定値
(デフォルト値)
役割
PPP Retry Timer 構成定義 1〜10
(3)秒
PPPのリンク設定,リンク切断フレームの送信間隔
Max Configure システム固定値 10回 リンク設定要求フレームの送信リトライ回数
Max Terminate システム固定値 2回 リンク切断要求フレームの送信リトライ回数
Max Failure システム固定値 10回 PPP接続条件が収束しないとみなすリトライ回数
Echo trial times 構成定義 1〜10
(7)回
リンク品質監視パケットによる品質判定の試行回数
Echo success times 構成定義 1〜10
(6)回
品質OK/NGを判断する品質判定試行回数の基準値
(Echo success times以上品質OKであれば回線品質は良いと判定する)
Echo Interval 構成定義 0〜255
(3)秒
回線品質監視パケットの送信間隔
<この項の構成>
(1) リンク設定時のタイマ
(2) リンク切断時のタイマ
(3) リンク品質監視のタイマ

(1) リンク設定時のタイマ

PPPのリンク設定時のタイマについて説明します。

(a) 正常なリンク設定

PPPリンク設定正常シーケンス例を次の図に示します。PPPは,LCPというレイヤとNCPというレイヤに分かれており,各レイヤについて自局/相手局間でConfigure-RQとConfigure-Ackの送受信が完了してPPPがオープン状態に入ります。詳細については「(3) リンク品質監視のタイマ」を参照してください。

図5-18 PPPリンク設定正常シーケンス例

[図データ]

(b) リンク設定時相手無応答検出

PPPリンク設定時,自局からのConfigure-RQ送信に対して,Configure-Ackなどの相手局からの応答がない場合に,一定間隔でConfigure-RQの送信をリトライし,リトライアウト発生契機に「接続相手局無応答」の障害を検出します。接続相手局無応答障害検出シーケンス例を次の図に示します。このシーケンスはLCP,NCPで共通です。

関連タイマ値,リトライ回数
PPP Retry Timer:Configure-RQ送信リトライ間隔,デフォルト値3秒
Max Configure:Configure-RQ送信リトライ回数,システム固定値10回

相手局無応答検出時間
(PPP Retry Timer)×(Max Configure+1)
したがって,デフォルト値使用時は33秒。

 

図5-19 接続相手無応答障害検出シーケンス例

[図データ]

(c) ネゴシエーション未収束検出

接続相手との接続条件が収束しないため接続できない場合に,ネゴシエーション・ループの発生を抑える目的から,PPPは「接続相手と接続条件が合わない」と判断する基準値を持っています。この値は次に示す二つのケースで使用されます。

  1. 自局が送信したConfigure-RQに対し,接続相手局が拒否パケット(Configure-Nak/Configure-Rej)を送信してくる場合。
  2. 接続相手局が送信してくるConfigure-RQに対し,自局が拒否パケット(Configure-Nak/Configure-Rej)を送信する場合。

これらのケースについて,ネゴシエーション未収束シーケンス例を次の図に示します。このシーケンスはLCP,NCPで共通です。

また,1,2のシーケンスが同時に発生した場合(Configure-Nak/Configure-Rejを送信し,受信しているようなシーケンス)でも送受信側それぞれ独立にカウントします。

関連タイマ値,リトライ回数
Max Failure:Configure-Nak/Configure-Rej送信リトライ回数です。受信の場合もこの回数で,「ネゴシエーション未収束検出」とします。システム固定値10回です。

ネゴシエーション未収束検出時間
通常,相手局は認められないConfigure-RQを受信したらすぐにConfigure-Nak/Rejを,また,Configure-Nak/Rejを受信したらすぐにConfigure-RQを送信するため,ネゴシエーション未収束を検出する時間は数秒以下です。

 

図5-20 ネゴシエーション未収束シーケンス例

[図データ]

[図データ]

(2) リンク切断時のタイマ

PPPのリンク切断時のタイマについて説明します。

(a) 正常なリンク切断

PPPリンク切断正常シーケンス例を次の図に示します。

図5-21 PPPリンク切断正常シーケンス例

[図データ]

PPPは,NCP,LCPそれぞれについて,Terminate-RQに対するTerminate-Ack受信が完了してPPPからレイヤ1に対するクローズ要求を発行します。このときNCPは,PPP上で複数のネットワーク層プロトコルが動作する場合は複数のNCPが並行でリンク切断を行い,全NCPの切断が完了した時点でLCPがTerminate-RQを送信します。

(b) リンク切断時,接続相手無応答検出

PPPリンク切断時,自局からのTerminate-RQ送信に対してTerminate-Ackの応答がない場合に,一定間隔でTerminate-RQの送信をリトライし,リトライアウト発生を契機として下位レイヤのクローズ要求を発行します。リンク切断時接続相手局無応答シーケンス例を次の図に示します。

関連タイマ値,リトライ回数
PPP Retry Timer:Terminate-RQ送信リトライ間隔です。デフォルトは3秒です。
Max Terminate:Terminate-RQ送信リトライ回数です。システム固定値は2回です。

相手無応答検出時間
(PPP Retry Timer)×(Max Terminate+1)×2
注※ NCP,LCPそれぞれについてリトライアウトの時間がかかるためです。
デフォルト値を使用すると18秒になります。

 

図5-22 リンク切断時接続相手無応答シーケンス例

[図データ]

(3) リンク品質監視のタイマ

本装置は,Echoの送達確認によるリンク品質監視手順をサポートしています。次にLCPリンク設定直後のEchoによる品質確認,通常のEchoによる品質監視についてそれぞれ構成情報と障害検出時間の関係をまとめます。

リンク品質監視は一定間隔でWANリンク上を流れる固定トラフィックになるので,契約帯域はこれも含めて検討が必要です。リンク品質監視は,Echo-RQ/Echo-Replyによって行い,このパケット長は142バイトです。パケット長はPPPヘッダ〜FCSの値で,Echo-Replyは接続相手局のEcho-RQ長に等しくなります。送信間隔は構成定義のEcho Intervalで指定します。なお,本装置はEcho Interval値を0に指定すれば,Echoパケットの送信を抑止できます。

(a) 正常なリンク設定直後の品質確認

LCPのリンク設定直後に(「図5-18 PPPリンク設定正常シーケンス例」を参照),Echoの送達確認による品質確認手順を1回実行します。リンク設定直後の品質確認の正常シーケンス例を次の図に示します。

関連タイマ値,リトライ回数
Echo trial times:Echo-RQの試行回数です。デフォルトは7回です。
Echo success times:回線品質が良いことを判断するEcho-Reply受信回数です。デフォルト6回です。

リンク設定直後の品質確認時間
通常のリンク設定直後の品質確認シーケンスでは,Echo-RQ/Echo-Replyの送信は,それぞれEcho-Reply/Echo-RQ受信を契機に行うため,本シーケンスには数秒以内で完了します。

 

図5-23 リンク設定直後の品質確認の正常シーケンス例

[図データ]

(b) リンク設定直後のEcho無応答による回線品質劣化検出

本装置からのEcho-RQに対し,Echo-Replyの応答が返らない場合のシーケンス例を次の図に示します。

Echo-RQ送信に対するEcho-Replyが返らない場合,次のEcho-RQ送信は"Echo Interval"で設定した値の後に行い,前回のEcho-RQ送信に対するEcho-Replyは欠落したものとみなします。

関連タイマ値,リトライ回数
Echo trial times:Echo-RQの試行回数です。デフォルトは7回です。
Echo Interval:Echo-Replyが返らない場合の,Echo-RQ送信間隔です。デフォルト3秒です。

リンク設定直後のEcho無応答による回線品質劣化検出時間
検出時間は,すべてのEcho-Replyが欠落した場合,最大となります。
(Echo Interval)×(Echo trial times)
このためデフォルト値を使用したとき,最大21秒になります。

 

図5-24 Echo-Reply欠落シーケンス例

[図データ]

(c) 正常な通信中の品質監視

Echoの送達確認による品質確認を行う場合の正常シーケンス例を次の図に示します。この場合,LCPリンク設定直後の品質確認と異なり,接続相手からのEcho-Replyが返る/返らないに関係なく,次のEcho-RQ送信は"Echo Interval"で設定した値のあとで行います。

関連タイマ値,リトライ回数
Echo trial times:Echo-RQの試行回数です。デフォルトは7回です。
Echo Interval:Echo-RQの送信間隔です。デフォルトは3秒です。

通信中の品質監視間隔
(Echo Interval)×(Echo trial times)
このため,デフォルト値を使用したとき,最大21秒になります。

 

図5-25 Echoの送達確認による品質確認の正常シーケンス例

[図データ]

(d) 回線障害検出

Echoの送達確認による通信中の品質監視を行うことで,回線障害を検出できます。次に,回線障害が発生してからそれを検出するまでにかかる時間と関連タイマ値およびリトライ回数の関係を示します。

最短のケース
回線障害の検出時間は障害発生のタイミングによって幅がありますが,最短になるケースは,回線障害発生直後に回線品質チェックの処理が動作し,回線品質チェック結果がNGになる場合です。回線障害の検出時間が最短になる場合のシーケンス例を次の図に示します。

 

図5-26 回線障害検出シーケンス例(最短)

[図データ]

最長のケース
回線障害の検出時間が最長になるケースは,回線障害発生直後に回線品質チェックの処理が動作し,回線品質チェック結果がいったんはOKになり,その後NGを検出する場合です。回線障害の検出時間が最長になる場合のシーケンス例を次の図に示します。

 

図5-27 回線障害検出シーケンス例(最長)

[図データ]

関連タイマ値,リトライ回数
Echo trial times:Echo-RQの試行回数です。デフォルトは7回です。
Echo success times:回線品質が良いと判断するEcho-Reply受信回数です。デフォルト6回です。
Echo Interval:Echo-RQの送信間隔です。デフォルトは3秒です。

通信中の回線障害検出時間

最短のケース:
(Echo Interval)×((Echo trial times)−(Echo success times-1))
したがって,デフォルト値を使用したときは6秒です。

最長のケース:
Echo Interval×Echo trial times+Echo Interval×(Echo trial times−Echo success times)
したがって,デフォルト値を使用したときは24秒です。

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