コンフィグレーションガイド Vol.2

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6.4.1 シェーパモード

シェーパモードを設定することで,NIFごとにユーザキューの帯域制御方式が決まり,シェーパ機能が有効になります。シェーパモードを設定するときは,同時にユーザ帯域制御を設定してください。シェーパ機能が有効になったNIFのポートにユーザ帯域制御を設定していない場合,該当ポートからフレームが送信されません。ユーザ帯域制御については,「6.4.3 階層化シェーパの帯域制御」を参照してください。

シェーパモードには,RGQ,WGQ,LLPQ1,LLPQ2,およびLLPQ4の五つのモードとLLRLQオプションモードがあります。LLRLQオプションモードは,五つのモードと併用します。指定できるシェーパモードはNIF種別によって異なります。また,シェーパモードを変更すると該当NIFが再起動します。NIF種別との対応については,「6.10 NIF種別と送信制御機能との対応」を参照してください。次にそれぞれのモードについて説明します。

<この項の構成>
(1) RGQ
(2) WGQ
(3) LLPQ
(4) LLRLQ

(1) RGQ

RGQはユーザごとの最低帯域を保証するモードです。余剰帯域がある場合は最大帯域まで使用できます。ユーザ間で出力優先度は均等です。各ユーザには設定した最低帯域が分配されます。分配後に余剰帯域がある場合は,ユーザごとの重みに従って余剰帯域が分配されます。

また,ユーザの最大帯域と最低帯域を同じ値に設定した場合,固定帯域として動作します。RGQの概念を次の図に示します。

図6-10 RGQの概念

[図データ]

RGQの帯域の計算例を次の表に示します。この表ではポート帯域制御によって回線帯域を900Mbit/sにシェーピングする場合を想定します。

表6-6 RGQの帯域の計算例(回線帯域=900Mbit/s)

ユーザ 実際の
入力帯域
(Mbit/s)
最低帯域
(Mbit/s)※1
最大帯域
(Mbit/s)※2
重み※1 余剰帯域
(Mbit/s)※3
保証帯域
(Mbit/s)※4
実際の
送信帯域
(Mbit/s)
ユーザ1 500 200 900 3 150 350 350
ユーザ2 350 200 900 2 100 300 300
ユーザ3 250 200 900 1 50 250 250

注※1
各ユーザに保証される帯域は,最低帯域と重みに従って分配される余剰帯域の和になります。各ユーザに対して保証する必要がある帯域を考慮した上で,各ユーザの最低帯域や重みを決定してください。

注※2
各ユーザへ分配される帯域は,最低帯域と重みに従って分配される余剰帯域の和で決まるため,各ユーザの最大帯域に,回線帯域より小さい値を設定しないでください。小さい値を設定すると,回線帯域の利用効率が低下することがあります。

注※3
回線内の余剰帯域=回線帯域−各ユーザの最低帯域の合計
        =900−(200+200+200)=300(Mbit/s)
ユーザ1の余剰帯域=300×(3÷(3+2+1))=150(Mbit/s)
ユーザ2の余剰帯域=300×(2÷(3+2+1))=100(Mbit/s)
ユーザ3の余剰帯域=300×(1÷(3+2+1))=50(Mbit/s)

注※4
各ユーザの保証帯域(最大帯域以下)
        =各ユーザの最低帯域+各ユーザに分配された余剰帯域
ユーザ1の保証帯域=200+150=350(Mbit/s)
ユーザ2の保証帯域=200+100=300(Mbit/s)
ユーザ3の保証帯域=200+50=250(Mbit/s)

(2) WGQ

WGQはユーザ間での帯域比率を保証するモードです。ユーザ間で出力優先度は均等です。各ユーザには設定した重みに従って帯域が分配されます。

WGQの概念を次の図に示します。

図6-11 WGQの概念

[図データ]

WGQの帯域の計算例を次の表に示します。この表ではポート帯域制御によって回線帯域を900Mbit/sにシェーピングする場合を想定します。

表6-7 WGQの帯域の計算例

ユーザ 入力帯域(Mbit/s) 重み 送信帯域(Mbit/s)
ユーザ1 500 3 450
ユーザ2 350 2 300
ユーザ3 250 1 150

注※
ユーザ1の送信帯域=900×(3÷(3+2+1))=450(Mbit/s)
ユーザ2の送信帯域=300×(2÷(3+2+1))=300(Mbit/s)
ユーザ3の送信帯域=300×(1÷(3+2+1))=150(Mbit/s)

(3) LLPQ

LLPQ1,LLPQ2,およびLLPQ4の3モードはLLPQ方式で帯域制御します。LLPQはRGQと同様にユーザごとの最低帯域を保証し,余剰帯域がある場合は最大帯域まで使用できます。RGQとの違いは,すべてのユーザのユーザキューより優先的に出力できる低遅延キューを備え,その低遅延キューに対して帯域を制限できるLLPQ帯域制御を備えている点です。これによって,あるユーザの優先する必要があるデータが,別ユーザの通常データで遅延するのを防ぎます。なお,ユーザ間の低遅延キューの出力優先度は均等です。低遅延キュー以外のユーザキューについても同様です。

LLPQ帯域は該当ユーザの最大帯域まで設定できます。ただし,ユーザごとの最低帯域を常に保証するには,回線内のすべてのユーザでLLPQ帯域を最低帯域以下に設定する必要があります。また,すべてのユーザの低遅延キューは,低遅延キュー以外のユーザキューより優先的に帯域が割り当てられます。

低遅延キューに対して入力帯域がある場合,LLPQ帯域を上限として入力分の帯域が低遅延キューに割り当てられます。

低遅延キューに割り当てた帯域が最低帯域以下の場合,最低帯域から低遅延キューに割り当てた帯域を引いた帯域がユーザキューに割り当てられます。分配後に余剰帯域がある場合は,ユーザごとの重みに従って余剰帯域がユーザキューに分配されます。

LLPQ帯域に最低帯域以上を設定した場合,優先度の高いデータを広帯域で使用できます。また,バースト性を持つトラフィックも低遅延で送信できます。

最低帯域が保証されない例を次の表に示します。なお,ポート帯域制御および各ユーザの最大帯域は1Gbit/sとします。低遅延キューに対する各ユーザの入力帯域は,ユーザ1が700Mbit/s,ユーザ2がなしです。ユーザキューに対する各ユーザの入力帯域は,ユーザ1がなし,ユーザ2が700Mbit/sです。

表6-8 最低帯域が保証されない例

ユーザ 低遅延キューに対する入力帯域
(Mbit/s)
通常キューに対する入力帯域
(Mbit/s)
LLPQ帯域の設定値
(Mbit/s)
最低帯域の設定値
(Mbit/s)
送信帯域
(Mbit/s)
ユーザ1 700 600 500 600
ユーザ2 700 400

(凡例)−:なし


この場合,LLPQ帯域が600Mbit/sなので,入力帯域のあるユーザ1に600Mbit/sを割り当てます。ユーザ1は低遅延キューに最低帯域を超える600Mbit/sを割り当てているため,ユーザキューに割り当てる帯域がありません。ユーザ2は低遅延キューに割り当てた帯域がないため,最低帯域の500Mbit/sをユーザキューに割り当てようとします。しかし,未使用の帯域が400Mbit/sしかないので,ユーザキューに対して割り当てられる帯域は400Mbit/sです。このため,ユーザ2の送信帯域は,設定した最低帯域以下の400Mbit/sになります。

なお,LLPQ1,LLPQ2,およびLLPQ4のシェーパモード名の数値は,低遅延キューの数を示しています。同時に,スケジューリング種別で,低遅延キュー数以上のPQ数がある種別を選択することを意味します。例えば,LLPQ4は各ユーザの出力優先度の高いユーザキューの四つが低遅延キューになるモードで,スケジューリングとしてPQが四つ以上あるPQまたは4PQ+4WFQを選択できます。

LLPQ1,LLPQ2,LLPQ4の各概念を次の図に示します。

図6-12 LLPQ1の概念

[図データ]

図6-13 LLPQ2の概念

[図データ]

図6-14 LLPQ4の概念

[図データ]

(4) LLRLQ

LLRLQは,RGQ,WGQ,LLPQ1,LLPQ2,およびLLPQ4の各シェーパモードにオプションとして指定できるモードです。LLRLQオプションモードを指定した場合,基本のシェーパモードの帯域制御とは異なる独立した最優先出力の2ユーザ(LLRLQ1,LLRLQ2)を使用できます。

LLRLQ1およびLLRLQ2には,それぞれに設定した最大帯域が割り当てられます。基本のシェーパモードのユーザにはLLRLQ1およびLLRLQ2が使用していない帯域が,各モードの帯域分配方法に基づいて割り当てられます。

LLRLQオプション付きRGQの概念を次の図に示します。

図6-15 LLRLQオプション付きRGQの概念

[図データ]

LLRLQオプション付きRGQの帯域の計算例を次の表に示します。この表ではポート帯域制御によって回線帯域を900Mbit/sにシェーピングする場合を想定します。

表6-9 LLRLQオプション付きRGQの帯域の計算例

ユーザ 入力帯域
(Mbit/s)
最低帯域
(Mbit/s)
最大帯域
(Mbit/s)
重み 未使用帯域
(Mbit/s)※1
余剰帯域
(Mbit/s)※2
送信帯域
(Mbit/s)
LLRLQ1 100 200 100※3
LLRLQ2 200 150 150※3
RGQ ユーザ1 650 200 700 2 650 200 400※4
ユーザ2 400 150 700 1 100 250※4

注※1
RGQユーザに割り当てられる未使用帯域
   =回線帯域−(LLRLQ1の送信帯域+LLRLQ2の送信帯域)
   =900−100−150=650(Mbit/s)

注※2
RGQユーザの余剰帯域
   =RGQユーザに割り当てられる未使用帯域−各ユーザの最低帯域の合計値
   =650−(200+150)=300(Mbit/s)
RGQユーザ1の余剰帯域=300×(2÷(2+1))=200(Mbit/s)
RGQユーザ2の余剰帯域=300×(1÷(2+1))=100(Mbit/s)

注※3
LLRLQ1およびLLRLQ2の送信帯域は次のどちらかの値です。
   入力帯域≦最大帯域の場合:入力帯域
   入力帯域>最大帯域の場合:最大帯域

注※4
RGQと同様です。

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