コンフィグレーションガイド Vol.1


7.7.2 スタックの注意事項

〈この項の構成〉

(1) コンフィグレーションファイルの操作について

(2) 装置またはVLANプログラムの再起動が必要なコンフィグレーションについて

スタックでは,変更した内容を反映するために装置またはVLANプログラムの再起動が必要なコンフィグレーションを編集した場合,すべてのメンバスイッチを再起動する必要があります。コンフィグレーションを編集してsaveコマンドでスタートアップコンフィグレーションに保存したあと,各メンバスイッチを再起動してください。再起動の手順については「8.2.6 スタックの再起動」を参照してください。

該当するのは次に示すコンフィグレーションコマンドです。

このうち,ip route static maximum-paths,ipv6 route static maximum-paths,およびmaximum-pathsコマンドは,コンフィグレーションの編集後に警告レベルの運用メッセージが出力された場合だけ各メンバスイッチを再起動する必要があります。詳細は「コンフィグレーションガイド Vol.3」 「8.4.2 ロードバランス仕様」を参照してください。

なお,すべてのメンバスイッチを再起動しないでコンフィグレーションを変更したメンバスイッチだけ再起動して運用すると,再起動したメンバスイッチにだけ新しいコンフィグレーションが適用されます。

例えば,次に示すコンフィグレーションコマンドでテーブルエントリについてのコンフィグレーションを変更した場合,コンフィグレーションを変更したメンバスイッチだけ再起動して運用すると,テーブルエントリについてメンバスイッチごとに異なる状態で動作します。

このとき,動作が保証されるテーブルエントリ数は,すべてのメンバスイッチの中で最小となる上限値までです。各メンバスイッチのテーブルエントリについて確認するには,運用コマンドshow systemを実行してください。

(3) IPv4マルチキャスト使用時のパケット転送について

スタックでIPv4マルチキャストを使用すると,マルチキャスト中継エントリの変更時に,該当する中継エントリで中継対象となるパケットをレイヤ2転送しないで廃棄することがあります。また,マルチキャスト中継のネガティブキャッシュの変更時にも,該当するネガティブキャッシュでレイヤ3廃棄の対象となるパケットをレイヤ2転送しないで廃棄することがあります。

(4) フローコントロールについて

スタックポートではフローコントロールは動作しません。

スタックでフローコントロールを使用して,あるメンバスイッチで受信バッファが枯渇しても,ほかのメンバスイッチではバッファが枯渇しないことがあります。そのため,あるメンバスイッチで送信パケットが滞留して受信バッファが枯渇しても,ほかのメンバスイッチからはポーズパケットが送信されません。

(5) MACアドレス学習について

スタックでは,各メンバスイッチが個別にMACアドレスを学習します。あるメンバスイッチがMACアドレスを学習してからほかのメンバスイッチへMACアドレス学習の結果が反映されるまで,最大180秒掛かります。MACアドレス学習を安定して動作させるために,学習MACアドレスのエージングタイムをデフォルトの300秒より短くしないことをお勧めします。

なお,各メンバスイッチが個別にMACアドレスを学習するため,次に示す二つの制限があります。

(a) MACアドレス学習の移動検出の制限

PCなどの端末を,あるメンバスイッチのポートからほかのポートへ移動した場合,端末が移動した先のメンバスイッチが移動を検出して,各メンバスイッチのMACアドレステーブルに,移動後に学習したMACアドレスを反映します。しかし,端末の移動数や移動の頻度によって,次のような障害が発生します。

  • 一度に多くの端末が移動すると,移動先を除いて,メンバスイッチのMACアドレステーブルには,移動前のポートで学習したMACアドレスが残ることがあります。この状態では移動前のポートにフレームを送信するため,正常に通信できないことがあります。

  • MACアドレステーブルの収容条件数近くまでMACアドレスを学習している場合,多くの端末の移動が頻発すると,各メンバスイッチで学習したMACアドレスが上記時間内にほかのメンバスイッチに反映されないことがあります。この場合,反映されていないMACアドレスを宛先とするフレームがフラッディングされます。

このような場合は,各メンバスイッチで新たに学習したMACアドレスが,ほかのメンバスイッチに反映されるまで待ってください。

(b) ユニキャスト通信の制限

2台の端末がそれぞれ別のメンバスイッチに接続している場合,この2台の端末間でユニキャスト通信をしても,どちらかの端末からのユニキャスト通信がVLAN内にフラッディングされることがあります。その場合,次のどちらかの条件が満たされるまで,待ってください。

  • フラッディングされたフレームの宛先である端末から,マルチキャストパケットまたはブロードキャストパケットが送信される

  • 各メンバスイッチが学習したMACアドレスがほかのメンバスイッチに反映される

(6) スタックで使用していたメンバスイッチの転用について

スタックでは,初めてスタックを構成したときのマスタスイッチの筐体MACアドレスが装置MACアドレスとなります。その後,マスタスイッチに障害が発生しても装置MACアドレスは変更しません。

そのため,スタックで使用していたメンバスイッチをスタックから外してこの装置を該当するスタックと同じネットワークに接続するときは,あらかじめ,スタックの装置MACアドレスと外したメンバスイッチの筺体MACアドレスが異なることを確認してください。同じ場合には,該当するメンバスイッチをスタックから外したあとスタックを再起動することで,スタックの装置MACアドレスを変更してください。

なお,スタックの装置MACアドレスについては「7.3.5 スタックの装置MACアドレス」を,スタックの再起動については「8.2.6 スタックの再起動」を参照してください。

(7) マスタスイッチを切り替える場合について

パケットの転送を継続したままマスタスイッチを切り替える場合は,次のどちらも満たしていることを確認してから切り替えてください。

バックアップスイッチの初期化中にマスタスイッチを切り替えると,初期化中のバックアップスイッチは再起動するためパケットの転送を継続できません。

バックアップスイッチの初期化が完了しているかどうか運用コマンドshow switchで確認できます。また,ポートがアップしているかどうか運用コマンドshow portで確認できます。

(8) マスタ選出優先度1を使用する場合について

マスタ選出優先度1のメンバスイッチ1台で構成されたスタックに,マスタ選出優先度2以上のメンバスイッチ1台で構成されたスタックを接続した場合,マスタ選出優先度2以上のメンバスイッチがマスタスイッチに選ばれます。マスタ選出優先度1のメンバスイッチは再起動し,バックアップスイッチとしてスタックに加わります。マスタ選出優先度2以上のメンバスイッチは,再起動することなくマスタ状態を継続するため,スタックの転送機能は維持されます。

しかし,マスタ選出優先度1のメンバスイッチ1台で構成されたスタックに,マスタ選出優先度2以上のメンバスイッチを接続して起動した場合,マスタ選出優先度2以上のメンバスイッチは,マスタスイッチを検出するため,初期状態でマスタスイッチからのバックアップ遷移指示を待ちます。同時に,マスタ選出優先度1のメンバスイッチは,マスタ選出優先度2以上のメンバスイッチを検出するため,再起動します。バックアップ遷移指示を待っていたメンバスイッチは,マスタスイッチの不在を検出し,再起動します。この間,マスタ選出優先度2以上のメンバスイッチがマスタスイッチとして初期化を完了するまで,通信断となります。

このように,マスタ選出優先度1を使用すると,マスタスイッチを切り替えるときに,通信断の時間が長くなることがあります。

マスタ選出優先度1は,既存のスタックにメンバスイッチを追加する場合に,意図しないコンフィグレーションの置き換えを防ぐための,一時的な運用に使用してください。通常の運用で,マスタ選出優先度1を使用してマスタスイッチの選出を固定するような設定は,お勧めしません。スタック構築後は,マスタ選出優先度2以上を設定して運用することをお勧めします。

(9) ストームコントロール使用時のメンバスイッチの起動時間について

スタックで,受信フレーム数の閾値を設定してストームコントロールを使用している場合,メンバスイッチを追加すると,ストームコントロールを使用しない場合と比べて,追加したメンバスイッチの起動完了までの時間が数分程度長くなります。なお,メンバスイッチの追加とは次のようなことを指します。

(10) スタック構成時のマネージメントポートの扱いについて

マネージメントポートはマスタスイッチだけで動作し,バックアップスイッチのマネージメントポートは閉塞します。

バックアップスイッチからマスタスイッチに切り替わった装置では,マネージメントポートが動作するようになります。この場合,マネージメントポートのMACアドレスが変更されるため,運用端末側のアドレス情報が更新されるまで通信できません。

(11) スタックリンクを接続できるポートの組み合わせについて

スタックリンクは,接続できるポートおよび接続インタフェースの組み合わせに制限があります。サポートしていない組み合わせで使用した場合,動作を保証できません。

表7‒7 スタックリンクを接続できるポートの組み合わせ(40GBASE-Rでの接続)

接続インタフェース

マスタスイッチ

バックアップスイッチ

ポート種別

ポート番号

QSFP+ポート※1

QSFP28/QSFP+

共用ポート※2

ポート49〜50

QSFP28/QSFP+

共用ポート※2

ポート51〜52

40GBASE-SR4

40GBASE-LR4

QSFP+ポート※1

QSFP28/QSFP+

共用ポート※2

ポート49〜50

QSFP28/QSFP+

共用ポート※2

ポート51〜52

40GBASE-CR4

QSFP+ポート※1

×

QSFP28/QSFP+

共用ポート※2

ポート49〜50

×

QSFP28/QSFP+

共用ポート※2

ポート51〜52

×

×

(凡例)○:サポート ×:未サポート

注※1

AX3660S-24T4X,AX3660S-24T4XW,AX3660S-48T4XW,AX3660S-16S4XW,およびAX3660S-24S8XW

注※2

AX3660S-48XT4QW,AX3660S-24X4QW,およびAX3660S-48X4QW

表7‒8 スタックリンクを接続できるポートの組み合わせ(100GBASE-Rでの接続)

接続インタフェース

マスタスイッチ

バックアップスイッチ

ポート種別

ポート番号

QSFP28/QSFP+

共用ポート

ポート49〜50

QSFP28/QSFP+

共用ポート

ポート51〜52

100GBASE-SR4

100GBASE-CWDM4

100GBASE-LR4

100GBASE-4WDM-40

QSFP28/QSFP+共用ポート

ポート49〜50

×

×

QSFP28/QSFP+共用ポート

ポート51〜52

×

×

100GBASE-CR4

QSFP28/QSFP+共用ポート

ポート49〜50

×

QSFP28/QSFP+共用ポート

ポート51〜52

×

(凡例)○:サポート ×:未サポート

注※ AX3660S-48XT4QW,AX3660S-24X4QW,およびAX3660S-48X4QW