トラブルシューティングガイド
IPv6 PIM-SMネットワーク構成でマルチキャスト中継ができない場合は,以下に示す障害解析方法に従って原因の切り分けを行ってください。
IPv6 PIM-SMのネットワーク例を次の図に示します。
図3-17 IPv6 PIM-SMネットワーク例
- 注
- BSR:ランデブーポイントの情報を配信するルータ(詳細は,マニュアル「コンフィグレーションガイド」を参照してください)
- ランデブーポイントルータ:中継先が確定していないパケットをマルチキャスト受信者方向に中継するルータ(詳細は,マニュアル「コンフィグレーションガイド」を参照してください)
- first-hop-router:マルチキャスト送信者と直接接続するルータ
- last-hop-router:マルチキャスト受信者と直接接続するルータ
- <この項の構成>
- (1) 共通確認内容
- (2) BSR確認内容
- (3) ランデブーポイントルータ確認内容
- (4) last-hop-router確認内容
- (5) first-hop-router確認内容
(1) 共通確認内容
次の表に,IPv6 PIM-SMネットワーク構成のすべての本装置に対する共通確認内容を示します。
表3-45 共通確認内容
項番 確認内容・コマンド 対応 1 コンフィグレーションにマルチキャスト機能を使用する指定(ipv6 multicast routing)があることを確認してください。
show running-configマルチキャスト機能を使用する指定がない場合は,コンフィグレーションを修正してください。 2 コンフィグレーションにloopbackインタフェースのアドレス設定があることを確認してください。
show running-configloopbackインタフェースのアドレス設定がない場合はコンフィグレーションを修正してください。 3 一つ以上のインタフェースでPIMが動作していることを確認してください。
show ipv6 pim interface動作していない場合はコンフィグレーションを確認し,どれか一つ以上のインタフェースでPIMが動作するように設定してください。 4 PIMが動作するインタフェースに,MLD snoopingが設定されているか確認してください。
show mld-snoopingMLD snoopingが設定されている場合は,以下の内容を確認してください。
- 隣接ルータと接続しているポートに対してMLD snoopingのマルチキャストルータポートの設定がされているか確認してください。
- 「3.6.5 MLD snoopingによるマルチキャスト中継ができない」を参照してください。
5 PIMおよびMLDが動作するインタフェースで,フィルタなどによるプロトコルパケットおよびマルチキャストパケット中継を抑止する設定がないことを,コンフィグレーションで確認してください。
show running-configプロトコルパケットおよびマルチキャストパケット中継を抑止する設定がある場合は,コンフィグレーションを修正してください。フィルタ設定情報の確認手順については,「3.25.1 フィルタ/QoS設定情報の確認」を参照してください。 6 PIMの隣接情報を確認してください。
show ipv6 pim neighbor隣接ルータが表示されない場合は以下の内容を確認してください。
- 隣接ルータと接続しているインタフェースでPIMが動作していることをshow ipv6 pimコマンドでinterfaceパラメータを指定して確認してください。
- 隣接ルータの設定を確認してください。
7 マルチキャストデータ送信者へのユニキャスト経路が存在するか確認してください。
show ipv6 routeユニキャスト経路が存在しない場合は「3.11 IPv6ユニキャストルーティングの通信障害」を参照してください。 8 マルチキャストデータ送信者への次ホップアドレスと接続しているインタフェースで,PIMが動作していることを確認してください。
show ipv6 pim interface動作していない場合はコンフィグレーションを確認し,マルチキャストデータ送信者への次ホップアドレスと接続しているインタフェースでPIMが動作するように設定してください。 9 PIM-SSMのグループアドレスに中継対象グループアドレスが含まれていないことをコンフィグレーションで確認してください。
show running-configPIM-SSMのグループアドレスに中継対象グループアドレスが含まれている場合は,コンフィグレーションを修正してください。 10 BSRが決定されていることを確認してください。ただし,中継対象グループアドレスに対するランデブーポイントが静的ランデブーポイントの場合は,確認不要です。
show ipv6 pim bsrBSRが決定されていない場合はBSRへのユニキャスト経路が存在するか確認してください。ユニキャスト経路が存在しない場合は,「3.11 IPv6ユニキャストルーティングの通信障害」を参照してください。
ユニキャスト経路が存在する場合は,BSRの設定を確認してください。BSRが本装置の場合は,「(2) BSR確認内容」を参照してください。11 ランデブーポイントが決定されていることを確認してください。
show ipv6 pim rp-mappingランデブーポイントが決定されていない場合は,ランデブーポイントへのユニキャスト経路が存在するか確認してください。ユニキャスト経路が存在しない場合は,「3.11 IPv6ユニキャストルーティングの通信障害」を参照してください。
ユニキャスト経路が存在する場合は,ランデブーポイントの設定を確認してください。ランデブーポイントが本装置の場合は,「(3) ランデブーポイントルータ確認内容」を参照してください。12 ランデブーポイントのグループアドレスに中継対象グループアドレスが含まれていることを確認してください。
show ipv6 pim rp-mapping中継対象グループアドレスが含まれていない場合は,ランデブーポイントルータの設定を確認してください。 13 マルチキャスト中継エントリが存在することを確認してください。
show ipv6 mcacheマルチキャスト中継エントリが存在しない場合は,上流ポートにマルチキャストデータが届いていることを確認してください。マルチキャストデータが届いていない場合は,マルチキャスト送信者あるいは上流ルータの設定を確認してください。 14 マルチキャスト経路情報が存在することを確認してください。
show ipv6 mrouteマルチキャスト経路情報が存在しない場合は,下流ルータの設定を確認してください。 15 マルチキャスト経路情報かマルチキャスト中継エントリが上限を超えていないか確認してください。
- マルチキャスト経路情報:
- show ipv6 mroute
- マルチキャスト中継エントリ:
- show ipv6 mcache
- netstat multicast
Warningが出力されている場合は,想定していないマルチキャスト経路情報またはマルチキャスト中継エントリが作成されていないか確認してください。マルチキャスト中継エントリでネガティブキャッシュが多い場合は,不要なパケットを送信している端末が存在しないか確認してください。
(2) BSR確認内容
次の表に,IPv6 PIM-SMネットワーク構成で本装置がBSRの場合の確認内容を示します。
表3-46 BSR確認内容
項番 確認内容・コマンド 対応 1 本装置がBSR候補であることを確認してください。
show ipv6 pim bsr本装置がBSR候補でない場合はコンフィグレーションを確認し,BSR候補として動作するように設定してください。また,loopbackインタフェースにアドレスが設定されていないとBSR候補として動作しないため,loopbackインタフェースにアドレスが設定されていることも確認してください。 2 本装置がBSRであることを確認してください。
show ipv6 pim bsr本装置がBSRでない場合は,ほかのBSR候補の優先度を確認してください。優先度は値の大きい方が高くなります。優先度が同じ場合は,BSRアドレスが一番大きいBSR候補がBSRとなります。
(3) ランデブーポイントルータ確認内容
次の表に,IPv6 PIM-SMネットワーク構成で本装置がランデブーポイントルータの場合の確認内容を示します。
表3-47 ランデブーポイントルータ確認内容
項番 確認内容・コマンド 対応 1 本装置が中継対象グループアドレスに対するランデブーポイント候補であることを確認してください。
show ipv6 pim rp-mapping本装置が中継対象グループアドレスに対するランデブーポイント候補でない場合は,コンフィグレーションを確認し,中継対象グループアドレスに対するランデブーポイント候補として動作するように設定してください。また,loopbackインタフェースにアドレスが設定されていないとランデブーポイント候補として動作しないため,loopbackインタフェースにアドレスが設定されていることも確認してください。 2 本装置が中継対象グループアドレスに対するランデブーポイントであることを確認してください。
show ipv6 pim rp-hash <Group Address>本装置がランデブーポイントでない場合は,ほかのランデブーポイント候補の優先度を確認してください。優先度は値の小さい方が高くなります。ほかのランデブーポイント候補の優先度が高い場合はランデブーポイントとして動作せず,優先度が同一の場合はプロトコルの仕様でグループアドレス単位に分散され,該当グループに対してランデブーポイントとして動作しないことがあります。本装置を優先的にランデブーポイントとして動作させる場合は,ほかのランデブーポイント候補より高い優先度を設定してください。
(4) last-hop-router確認内容
次の表に,IPv6 PIM-SMネットワーク構成で本装置がlast-hop-routerの場合の確認内容を示します。
表3-48 last-hop-router確認内容
項番 確認内容・コマンド 対応 1 マルチキャスト受信者と接続しているインタフェースで,MLDが動作していることを確認してください。
show ipv6 mld interface動作していない場合はコンフィグレーションを確認し,MLDが動作するように設定してください。 2 マルチキャスト受信者がMLDで中継対象グループに参加していることを確認してください。
show ipv6 mld group中継対象グループに参加していない場合は,マルチキャスト受信者の設定を確認してください。 3 中継対象グループが参加し,PIMが動作しているインタフェースがある場合は,本装置がDRであることを確認してください。
show ipv6 pim interface本装置がDRでない場合は,中継対象インタフェースのDRを調査してください。 4 静的グループ参加機能が動作するインタフェースに,MLD snoopingが設定されているか確認してください。
show mld-snoopingMLD snoopingが設定されている場合は,以下の内容を確認してください。
- 中継先ポートに対してMLD snoopingのマルチキャストルータポートの設定がされているか確認してください。
- 「3.6.5 MLD snoopingによるマルチキャスト中継ができない」を参照してください。
5 各インタフェースで異常を検出していないか確認してください。
show ipv6 mld interfaceNoticeを確認し,警告情報が出力されていないことを確認してください。
警告情報が出力されている場合は以下を確認してください。
- L:想定した最大数を超えて参加要求が発生しています。接続ユーザ数を確認してください。
- Q:隣接するルータとMLDのバージョンが不一致となっています。MLDのバージョンを合わせてください。
- R:現在の設定では受信できないReportを送信しているユーザが存在します。本装置のMLDのバージョンを変更するか,参加ユーザの設定を確認してください。
- S:MLDv2で1メッセージ内に格納できるソース数が上限を超えたため参加情報を一部廃棄しています。参加ユーザの設定を確認してください。
(5) first-hop-router確認内容
次の表に,IPv6 PIM-SMネットワーク構成で本装置がfirst-hop-routerの場合の確認内容を示します。
表3-49 first-hop-router確認内容
項番 確認内容・コマンド 対応 1 本装置がマルチキャスト送信者と直接接続していることを確認してください。 直接接続していない場合はネットワーク構成を確認してください。 2 マルチキャスト送信者と接続しているインタフェースで,PIMまたはMLDが動作していることを確認してください。
show ipv6 pim interface
show ipv6 mld interface動作していない場合はコンフィグレーションを確認し,PIMまたはMLDが動作するように設定してください。 3 マルチキャスト経路情報が存在するか確認してください。
show ipv6 mrouteマルチキャスト経路情報が存在しない場合は,マルチキャストデータ送信元アドレスが,マルチキャスト送信者と直接接続しているインタフェースのネットワークアドレスであることを確認してください。
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