解説書 Vol.1

[目次][用語][索引][前へ][次へ]


10.5.2 経路選択アルゴリズム

OSPFでは,経路選択のアルゴリズムとして,SPF(Shortest Path Find:最短経路発見)アルゴリズムを使用します。

各ルータには,OSPFが動作しているすべてのルータと,ルータ−ルータ間およびルータ−ネットワーク間のすべての接続から成るデータベースがあります。このデータベースから,ルータおよびネットワークを頂点とし,ルータ−ルータ間およびルータ−ネットワーク間の接続を辺とするトポロジを構成します。このトポロジにSPFアルゴリズムを適用して,最短経路木を生成し,これを基に各頂点およびアドレスへの経路を決定します。

<この項の構成>
(1) SPFアルゴリズムの適用例

(1) SPFアルゴリズムの適用例

ネットワーク構成の例を次の図に示します。

図10-26 ネットワーク構成例

[図データ]

この図のネットワーク上でOSPFを使用した場合のトポロジと,頂点間のコストの設定例を次の図に示します。コスト値は,パケット送信方向によって異なってもかまいません。

図10-27 トポロジとコストの設定例

[図データ]

この図のルータ2−ルータ4間のポイント−ポイント型接続では,ルータ2からルータ4へはコスト9,ルータ4からルータ2へはコスト8となっています。ルータ−ネットワーク間の接続では,ルータからネットワークへの接続だけにコストを設定できます。ネットワークからルータへのコストは常に0です。

図10-27 トポロジとコストの設定例」のトポロジを基に,ルータ1を根として生成した最短経路木を次の図に示します。ある宛先へのコストは,経路が経由する各インタフェースの送信コストの合計となります。例えば,ルータ1からネットワーク2宛ての経路のコストは,6(ルータ1−ネットワーク1)+0(ネットワーク1−ルータ3)+2(ルータ3−ネットワーク2)=8となります。

図10-28 ルータ1を根とする最短木

[図データ]

OSPFでは,コストを基に最適な経路を選択します。ある構成で適切ではない経路を選択してしまう場合には,望ましくないネットワークのインタフェースのコストを上げるか,より望ましいネットワークのインタフェースのコストを下げることによって,適切な経路を指示できます。このときコストが小さ過ぎると,コストは1未満にできないため,このインタフェースを除く全ルータのインタフェースにかかるコストを上げなければならないことがあります。大規模なネットワークでは,将来最適化するときに任意のインタフェースのコストを減らせるように,インタフェースのコストをあまり小さく設定しないことをお勧めします。

(a) ルータID,ネットワークアドレスについての注意事項

OSPFでは,ネットワークのトポロジを構築するに当たり,ルータの識別にルータIDを,ネットワークの識別にネットワークアドレスを使用します。したがって,ネットワークの設計時に次に示すように不正がある場合には,正確なトポロジを構築できません。

これらの不正がある場合,不正確なトポロジに基づいてネットワーク設計することになり,正確な経路選択ができなくなります。ルータIDの決定方法として,次の方法をお勧めします。

ルータIDの決定方法
各ルータのルータIDの決定に当たり,該当するルータにあるOSPFが動作しているインタフェースに割り当ててあるIPアドレスの中からどれか一つを選択して,これをルータIDとして使用してください。ルータIDは,基本的には任意の32ビットの数値ですが,この方法を使用することでOSPFネットワーク設計時のミスなどによるルータIDの重複を防ぐことができます。

(b) 経路選択についての注意事項

OSPFでは,自ルータにあるインタフェースのアドレスは,そのインタフェースからつながっている辺の対向側の頂点(ポイント−ポイント型インタフェースでは対向するルータ,ブロードキャスト型インタフェースではインタフェースがつながっている頂点であるネットワーク)に所属しています。このために,条件に応じて,次のような状態になることがあります。

  1. 自ルータにあるインタフェースのアドレス宛ての経路は,必ず対向側の頂点を経由します。このため,例えば「図10-26 ネットワーク構成例」のルータ1からルータ2のインタフェースのアドレスであるAddr2宛ての経路は,ルータ1−ネットワーク1−ルータ3−ネットワーク2−ルータ4−Addr2になります。この場合,コストは6 (ルータ1−ネットワーク1)+ 0(ネットワーク1−ルータ3)+2(ルータ3−ネットワーク2)+0(ネットワーク2−ルータ4)+ 8(ルータ4−Addr 2)=16になります。
  2. 自ルータのポイント-ポイント型インタフェースが動作状態になっていない場合,このインタフェースの対向側ルータのインタフェースのアドレスが所属するものが存在しないため,このアドレス宛ての経路情報を生成しないことがあります。
  3. 自ルータのポイント−ポイント型インタフェースが,動作状態にあるものの回線障害などの理由によって対向するルータへ送信できない場合,対向側のルータのインタフェースのアドレス宛ての経路は,自ルータを経由します。このため,対向するルータのインタフェースのアドレス宛てに通信はできない場合があります。

自ルータのブロードキャスト型インタフェースが動作状態にないか,動作状態にあるもののHubの故障などによって同じネットワークへ接続しているほかのルータと通信できない場合,このインタフェースのアドレスに対する経路に,同じネットワークに接続しているが通信できないほかのルータ経由の経路が選択されることによって,通信できないことがあります。

[目次][前へ][次へ]


[他社商品名称に関する表示]

Copyright (c)2005 ALAXALA Networks Corporation. All rights reserved.