解説書 Vol.1
ATM/AAL層のトラフィック制御について説明します。
- <この項の構成>
- (1) 物理層との関係
- (2) ATMサービスカテゴリ
- (3) サービスカテゴリと優先キューの対応
- (4) トラフィッククラス
- (5) 出力優先制御
- (6) サービスカテゴリGFRおよびGFR2のキューイング制御および帯域制御
- (7) ロードバランス
- (8) 廃棄クラス
- (9) シェーピング
- (10) 輻輳制御
本装置は25M ATM,OC-3c/STM-1 ATMのインタフェースをサポートしていますが,トラフィック制御はインタフェース種別ごとにサポート内容が異なります。トラフィック制御のサポート項目を次の表に示します。
トラフィック制御項目 インタフェース種別 25M ATM OC-3c/STM-1 ATM
1ポート版サービスカテゴリ CBR,VBR,ABR,UBR,GFR,GFR2 出力優先制御 ○
(CBR,VBR,ABR,UBR)○
(CBR,VBR,ABR,UBR)キューイング制御
帯域制御(余剰帯域分配)○
(GFR,GFR2)○
(GFR,GFR2)VC内出力優先制御 ○
(GFR2)○
(GFR2)ロードバランス ○ ○ 廃棄クラス ○ ○ シェーピング ○
(VPおよびVC)○
(VPおよびVC)(凡例) ○:サポートしている ×:サポートしていない
本装置は,ATM Forum Traffic Management Specification V4.0に規定されているトラフィック制御であるCBR,VBR,ABR,UBRのサービスをサポートしています。また,ATM Forum Traffic Management Specification V4.1に規定されているトラフィック制御であるGFRをサポートしています。これらのトラフィック制御の分類をATMサービスカテゴリと呼びます。ATMサービスカテゴリの特長と適用トラフィックを次の表に示します。
サービスカテゴリ 特長 適用トラフィック カテゴリ名称 ITU-Tでの名称 CBR DBR
- ピークセルレートを保証
- 低遅延
定常トラフィック
(音声,画像)VBR SBR
- サステーナブルセルレートからピークセルレートの範囲で統計多重効果
- サステーナブルセルレートを保証
可変トラフィック ABR ABR
- フロー制御による統計多重効果,低セルロス率
- ミニマムセルレートを保証
バーストトラフィック
(ファイル転送)UBR −
- ベスト・エフォート
バーストトラフィック
(メール)GFR −
- ミニマムセルレートを保証
- CLPビットによるパケット単位の優先制御
可変トラフィック GFR2 −
- ミニマムセルレートを保証
- 出力優先度およびキューイング優先度によるパケット単位の優先制御
可変トラフィック (凡例) −:該当しない
(a) サービスカテゴリCBR,VBR,ABR,UBRを使用する場合
本装置は出力優先制御のために,VP単位に4段階の優先度を持つ優先キューおよびVBRのトラフィックを専用に処理するVBRキューを持っています。同一のVPでVBRを使用しない場合は最大4個の優先キューを使用し,VBRを使用する場合は最大3個の優先キューとVBRキューを使用します。
1個の優先キューはCBR,ABR,UBRのどれかのサービスカテゴリを割り当てて使用します。このため回線単位に,使用するサービスカテゴリと優先キューとの対応をあらかじめ構成定義情報で定義しておきます。サービスカテゴリと優先キューの対応は次の表に示す13種類のパターンから選択します。
表6-6 サービスカテゴリと優先キューの対応
パターン 最高位優先度
キュー第2位優先度
キュー第3位優先度
キュー最低位優先度
キューVBR
キューexclusive
モード1 CBR CBR ABR UBR − − 2 CBR CBR UBR UBR − − 3 CBR ABR UBR UBR − − 4 ABR ABR UBR UBR − − 5 UBR UBR UBR UBR − − 6 CBR CBR UBR − VBR なし 7 CBR ABR UBR − VBR なし 8 CBR UBR UBR − VBR なし 9 ABR UBR UBR − VBR なし 10 CBR CBR UBR − VBR あり 11 CBR ABR UBR − VBR あり 12 CBR UBR UBR − VBR あり 13 ABR UBR UBR − VBR あり (凡例) −:該当しない
VBRを使用する場合,同一のVP内に混在して使用するかどうか含めて,このパターンで指定します。同一のVP内に混在する場合はexclusiveモード指定なし,混在しない場合はexclusiveモード指定ありのパターンを選択します。
- 注意
- 本装置は優先度キューのトラフィックを完全優先制御するため,サービスカテゴリパターンABR・ABR・UBR・UBRを設定した場合,最高位優先度キューのABRのピークセルレートが保証されます。したがって,第2位優先度キューのABRのミニマムセルレートは保証されるとは限りませんので注意してください。
(b) サービスカテゴリGFR,GFR2を使用する場合
サービスカテゴリGFR,GFR2を使用する回線については,そのほかのサービスカテゴリを混在して使用できません。したがって,CBR,VBR,ABR,UBRの場合のようなサービスカテゴリの組み合わせパターンではなく,GFR,GFR2に対応するモードを回線単位に構成定義情報で定義します。
CBR,VBR,ABR,UBR,GFR,GFR2のサービスカテゴリおよびトラフィックパラメータのセットを構成定義して,トラフィック制御の内容を決定します。これをトラフィッククラスと呼びます。定義できるトラフィッククラスは回線単位に合計256個で,装置単位でも合計256個までです。
25M ATMまたはOC-3c/STM-1 ATMを使用する場合の,サービスカテゴリごとにサポートするトラフィックパラメータを「表6-7 サービスカテゴリごとにサポートするトラフィックパラメータ」に示します。また,ABRのトラフィックパラメータについては「表6-8 ABRトラフィックパラメータ」に示します。
表6-7 サービスカテゴリごとにサポートするトラフィックパラメータ
サービス
カテゴリトラフィックパラメータ 帯域制御および優先制御 CBR
- ピークセルレート
- プライオリティ
- ピークセルレートを保証する
- 2種類の優先キューを使用するパターンを選択した場合,どのキューを使用するかプライオリティで指定する
VBR
- ピークセルレート
- サステーナブルセルレート
- バーストサイズ
- ピークセルレートとサステーナブルセルレートの2レベルのレートを調節する
- サステーナブルセルレートを保証する
- 優先制御はない
ABR
- ピークセルレート
- ミニマムセルレート
- イニシャルセルレート
- プライオリティ
- ミニマムセルレートを保証する
- フロー制御によるレート調節する
- 2種類の優先キューを使用するパターンを選択した場合,どのキューを使用するかプライオリティで指定する
UBR
- プライオリティ
- VPシェーピングなしの場合は回線の帯域内,VPシェーピングありの場合はVPの帯域内でベスト・エフォートする
- 2または4種類の優先キューを使用するパターンを選択した場合,どのキューを使用するかプライオリティで指定する
GFR
(GFRI)
- ピークセルレート
- ミニマムセルレート
- 非優先パケット廃棄閾値
- 優先パケット廃棄閾値
- プライオリティ
- ミニマムセルレートを保証する
- CLPビット=1のパケットは非優先パケット廃棄閾値を超えると廃棄する
- CLPビット=0のパケットは優先パケット廃棄閾値を超えると廃棄する
- VPのピークセルレートから,各VCのミニマムセルレートの合計を引いた余剰帯域をプライオリティ値3,2,1に対し,4:2:1の割合で割り当てる
GFR2
(GFRII)
- ピークセルレート
- ミニマムセルレート
- ピークセルレートとミニマムセルレートの2レベルのレートを調節する
- ミニマムセルレートを保証する
- プライオリティ
- VPのピークセルレートから,各VCのミニマムセルレートの合計を引いた余剰帯域をプライオリティ値3,2,1に対し,4:2:1の割合で割り当てる
- 最優先度キュー内ピークセルレート
- 最優先度フレームを基本的に最優先度キュー内ピークセルレートで抑止
ただし,サービスカテゴリパターンがgfr2mの場合,過負荷によって最優先キューへの出力が廃棄される状態になると最優先キューへの出力を保護するため,最大該当VCのピークセルレートまでレートを調整する(最優先度キュー内ピークセルレートを超えて出力)
- 最優先度キュー内非優先パケット廃棄閾値
- 最優先度キュー内優先パケット廃棄閾値
- 高優先度キュー内非優先パケット廃棄閾値
- 高優先度キュー内優先パケット廃棄閾値
- 中優先度キュー内非優先パケット廃棄閾値
- 中優先度キュー内優先パケット廃棄閾値
- 低優先度キュー内非優先パケット廃棄閾値
- 低優先度キュー内優先パケット廃棄閾値
キューイング優先度
- パケットごとのキューイング優先度の値が4または3の場合は各優先度キュー内優先パケット廃棄閾値を超えるとパケット単位で廃棄する
- パケットごとのキューイング優先度の値が2または1の場合は各優先度キュー内非優先パケット廃棄閾値を超えるとパケット単位で廃棄する
出力優先度
- パケットごとの出力優先度の値が8または7の場合は最優先度キューにキューイングする
- パケットごとの出力優先度の値が6または5の場合は高優先度キューにキューイングする
- パケットごとの出力優先度の値が4または3の場合は中優先度キューにキューイングする
- パケットごとの出力優先度の値が2または1の場合は低優先度キューにキューイングする
CLPビット
- 最優先度キューにキューイングされたパケットはCLPビット=0でセルを送信する
- 最優先度キュー以外にキューイングされたパケットはCLPビット=1でセルを送信する
パラメータ名称 機能 適用 設定値/設定範囲 ピークセルレート
(PCR:Peak Cell Rate)レート制御による帯域の最大値 構成定義情報 38kbit/s〜149760kbit/s
(1kbit/s単位に指定できる)ミニマムセルレート
(MCR:Minimum Cell Rate)レート制御による最低保証帯域 構成定義情報 38kbit/s〜149760kbit/s
(1kbit/s単位に指定できる)イニシャルセルレート
(ICR:Initial Cell Rate)送信開始時の帯域 構成定義情報
または
システム固定値構成定義:38kbit/s〜149760bit/s
(1kbit/s単位に指定できる) 構成定義はTBE/FRTTより小さい値指定時に有効RIF(Rate Increase Factor) RMセル受信時にセル送信レートの増加を調節 システム固定値 1 Nrm FRMセル送信間に送信できるセルの最大数 システム固定値 32cells Mrm FRMセル送信間に送信するセルの数(最小数) システム固定値 2cells RDF(Rate Decrease Factor) セル送信レートの減少を調節 システム固定値 1/512 ACR(Allowed Cell Rate) レート制御によって変動する実際の帯域 レート制御によって変動 − CRM(Missing RM-cell count) BRMセルが返送されてこない間に送信できるFRMセル数を制限 システム固定値 TBE/Nrm ADTF(ACR Decrease Time Factor) FRMセル送信間隔の時間。この時間を超えてFRMが送信されないと,レートをICRにする システム固定値 500ms Trm アクティブソースのためのFRMセル送信間の時間 システム固定値 100ms FRTT(Fixed Round-Trip Time) ソースからデスティネーションまで送信および返送にかかる遅延時間合計 システム固定値 16.7s TBE(Transient Buffer Exposure) 最初のRMセルが返送されるまでに,ソースが送信するセル数をネットワークが制限する システム固定値 16777215cells CDF(Cuttoff Decrease Factor) CRMとともにACRの減少を調節 システム固定値 1/16 TCR(Tagged Cell Rate) ソースがout-of-rateFRMセルを送信してよいレート システム固定値 10cells/s (凡例) −:該当しない
ABRのトラフィックパラメータであるピークセルレート,ミニマムセルレート,イニシャルセルレートのレート制御を次の図に示します。実際の帯域であるACR(アロウドセルレート)はレート制御によって,ピークセルレートとミニマムセルレートの間で変動します。
- 注意
- サービスカテゴリABR指定のVCのピークセルレートは,そのトラフィックスを指定したVCが属するVPのピークセルレートと同じ値を設定してください。VP内に複数のABR指定のVCがある場合も同様です。また,同一のVP内にCBR指定のVCが混在する場合も,この設定をしておくことでVP帯域を有効活用できます。
サービスカテゴリCBR,VBR,ABR,UBRを使用する場合,セル送信に対する出力優先制御を行います。このため,VP単位に4段階の優先度を持つ優先キューと,VBRのトラフィックを専用に処理するVBRキューを持っています。これらのキューの使い方によって優先制御は多少異なり,次に示す三つの条件の場合に分けられます。キューの使い方は,構成定義情報のサービスカテゴリと優先キューの対応のパターンによって決定するので,構成定義条件も併せて示します。
- VBRのVCを使用しない場合(構成定義情報のサービスカテゴリと優先キューの対応パターンの指定でVBRを含まないパターンを選択した場合)
- 同一のVP内にVBRとほかのサービスカテゴリのVCを混在させる場合(構成定義情報のサービスカテゴリと優先キューの対応パターンの指定でVBRを含み,exclusive指定のないパターンを選択した場合)
- 同一のVP内にVBRとほかのサービスカテゴリのVCを混在させない場合(構成定義情報のサービスカテゴリと優先キューの対応パターンの指定でVBRを含み,exclusive指定のあるパターンを選択した場合)
(a) VBRのVCを使用しない場合
同一回線内にVBRを使用しない場合,VPごとに4個までの優先キューを使用でき,優先キューにはそれぞれCBR,ABR,UBRのどれかのサービスカテゴリを割り当てて使用します。出力優先制御(VBRを使用しない場合)を次の図に示します。出力優先制御はVP単位に独立で,制御方式は完全優先制御(HOL)です。セル送信の順序はVC単位のレート制御とともにスケジューリングされます。
(b) 同一のVP内にVBRとそのほかのサービスカテゴリのVCを混在させる場合
同一回線内にVBRを使用する場合,VPごとにVBRキューおよび3個までの優先キューを使用でき,優先キューにはそれぞれCBR,ABR,UBRのどれかのサービスカテゴリを割り当てて使用します。同一のVP内にVBRとそのほかのサービスカテゴリのVCを混在させる場合,3個の優先キューは完全優先制御(HOL)ですが,優先キューとVBRキューの制御は重み付け巡回検索(WRR)方式です。したがって,VBRについては出力優先制御しません。例えば,同一VP内にCBRとVBRのVCが混在し,VBRのVCのトラフィックがサステーナブルセルレートを超えるとき,CBRのVCのトラフィックが一時的にピークセルレートより低い送信レートになる場合があります。VBR以外のサービスカテゴリでVCの帯域を保証する必要がある場合は,「(c) 同一のVP内にVBRとそのほかのサービスカテゴリのVCを混在させない場合」に示すようにVBRのVCを別のVP内に設定することをお勧めします。
出力優先制御(VBRを同一VP内に混在使用する場合)を次の図に示します。
図6-6 出力優先制御(VBRを同一VP内に混在使用する場合)
(c) 同一のVP内にVBRとそのほかのサービスカテゴリのVCを混在させない場合
同一回線内にVBRを使用する場合,VPごとにVBRキューおよび3個までの優先キューを使用でき,優先キューにはそれぞれCBR,ABR,UBRのどれかのサービスカテゴリを割り当てて使用します。この場合,同一のVP内にVBRとそのほかのサービスカテゴリのVCは混在しないので,3個の優先キューは完全優先制御(HOL)され,VBRのトラフィックによって送信レートが影響を受けることはありません。出力優先制御(VBRを同一VP内に混在使用しない場合)を次の図に示します。
図6-7 出力優先制御(VBRを同一VP内に混在使用しない場合)
(6) サービスカテゴリGFRおよびGFR2のキューイング制御および帯域制御
サービスカテゴリGFRまたはGFR2を使用する場合は,キューイング制御および帯域制御を行います。
サービスカテゴリGFR2を使用するサービスカテゴリパターンはgfr2mとgfr2sがあります。gfr2mとgfr2sは最優先キューへの過負荷出力時の動作仕様が異なります。gfr2mの場合,過負荷によって最優先キューへの出力が破棄される状態になると最優先キューへの出力を保護するため,最大該当VCのピークセルレートまでレートを調整します(最優先キュー内ピークセルレートを超えて出力します)。gfr2sの場合は最優先キュー内ピークセルレートの範囲内で出力します。
(a) GFRおよびGFR2のパケット優先制御のキューイング制御
QoSフロー情報のキューイング優先度に対応するセル廃棄閾値を持ち,QoSフロー情報のキューイング優先度に応じて,キュー使用量がそれぞれ対応する廃棄閾値を超えない範囲でセルをキューイングします。また,閾値を超えた場合はパケット単位に廃棄する機能です。QoSフロー情報のキューイング優先度は,構成定義コマンドのflow qosコマンドのdiscardパラメータで指定します。GFRおよびGFR2のパケット優先制御のキューイング制御を次の図に示します。
図6-8 GFRおよびGFR2のパケット優先制御のキューイング制御
(b) GFRのパケット優先制御
QoSフロー情報のキューイング優先度が4〜3の場合CLP0のセルとして,QoSフロー情報のキューイング優先度が2〜1の場合CLP1のセルとして送信します。GFRのパケット優先制御を次の図に示します。
あらかじめ構成定義情報のQoSフロー情報のキューイング優先度ごとに廃棄優先度の高いフローと廃棄優先度の低いフローを定義しておき,トラフィック情報ではQoSフロー情報のキューイング優先度に対応した廃棄閾値をそれぞれ設定しておきます。
(c) GFR2のパケット優先制御のキューイング制御
VCごとに最優先/高優先/中優先/低優先キューを持ち,キューごとにQoSフロー情報のキューイング優先度に対応する廃棄閾値によって,キューイング制御を行います。各キューへはQoSフロー情報の出力優先度によって振り分けを行います。QoSフロー情報のキューイング優先度および出力優先度は,構成定義コマンドのflow qosコマンドのdiscardおよびpriorityパラメータで指定します。GFR2のQoSフロー情報の出力優先度による優先キュー振り分けを次の図に示します。
図6-10 GFR2のQoSフロー情報の出力優先度による優先キュー振り分け
優先キューの振り分けについては,あらかじめ構成定義QoSフロー情報の出力優先度の定義および出力優先度に対応したフローを定義しておきます。各優先キュー内のキューイング制御については,あらかじめ構成定義QoSフロー情報のキューイング優先度の定義およびキューイング優先度ごとに廃棄優先度の高いフローと廃棄優先度の低いフローを定義しておき,トラフィック情報ではQoSの廃棄優先度に対応した廃棄閾値をそれぞれ設定しておきます。
(d) 帯域制御
各VCのミニマムセルレートを保証し,ピークセルレートを超えない範囲でVP内の余剰帯域を各VCに分配します。余剰帯域の分配比率は構成定義のトラフィック情報のプライオリティ値に従います。3本のVCにプライオリティ3,2,1の値を設定した場合,余剰帯域を分配する比率は4:2:1です。帯域制御の概念を次の図に示します。
(e) GFR2の各キューへの割り当て帯域
GFR2の各キューへの帯域の割り当ては,最優先キューにトラフィックがある場合,最優先キューに定義した帯域(Traffic情報のpriority4_pcrパラメータ)を上限として最優先キューに帯域を割り当てます。最優先キュー以外については,VCに割り当てられた帯域(ACR)から最優先キューに割り当てた帯域を減算した帯域を割り当てます。最優先キューにトラフィックがなければ,VCに割り当てられた帯域を最優先キュー以外のキューに割り当てます。GFR2の各キューへの割り当て帯域の例を次の図に示します。
この図でACR=1Mbit/s(=MCR)で動作し最優先キューへのトラフィックが0.5Mbit/s以上ある場合,VCのACR=1Mbit/sから最優先キューに割り当てられた0.5Mbit/sを引いた0.5Mbit/sがそのほかの優先キューへの割り当て帯域になります。各優先キューへの割り当て帯域は,最優先キュー以外への割り当て帯域によって異なります。基本的には次のようになります。
高優先キュー > 中優先キュー > 低優先キュー
各優先キューへの割り当て帯域を次の表に示します。
優先キューへ
の割り当て帯域各優先キューの割り当て帯域(単位:Kbit/s) 高優先/中優先/低優先
キュー動作時高優先/中優先キュー動作時 高優先/低優先キュー動作時 中優先/低優先キュー動作時 高優先
キュー中優先
キュー低優先
キュー高優先
キュー中優先
キュー高優先
キュー低優先
キュー中優先
キュー低優先
キュー32Kbit/s 20.5 10.5 1.0 25.2 7.8 25.2 7.8 22.0 8.0 64Kbit/s 33.0 27.5 3.5 35.5 28.5 35.0 29.0 32.5 31.5 80Kbit/s 48.0 29.0 3.0 47.5 32.5 53.0 27.0 42.5 37.5 100Kbit/s 80.5 17.0 2.5 80.5 19.5 76.0 24.0 62.0 38.0 128Kbit/s 57.0 43.0 28.0 67.0 61.0 68.0 60.0 66.0 62.0 150Kbit/s 64.0 49.0 37.0 82.0 68.0 84.0 66.0 76.5 73.5 192Kbit/s 81.5 58.5 52.0 106.0 86.0 114.5 77.5 99.5 92.5 200Kbit/s 97.5 70.5 32.0 110.0 90.0 117.0 83.0 104.0 96.0 500Kbit/s 250.0 132.0 118.0 340.0 160.0 368.0 132.0 275.0 225.0 1Mbit/s 650.0 191.0 159.0 781.0 219.0 830.0 170.0 670.0 330.0 2Mbit/s 1552.0 260.0 188.0 1724.0 276.0 1808.0 192.0 1563.0 437.0 5Mbit/s 4495.0 300.0 205.0 4687.0 313.0 4785.0 215.0 4450.0 550.0 10Mbit/s 9460.0 324.0 216.0 9690.0 310.0 9771.0 229.0 9405.0 595.0 15Mbit/s 14460.0 324.0 216.0 14675.0 325.0 9774.0 226.0 14365.0 635.0 20Mbit/s 19452.0 325.0 223.0 19677.0 323.0 19792.0 208.0 19385.0 615.0
- 注意
- サービスカテゴリGFR,GFR2のミニマムセルレートは,実際のトラフィック量が設定した帯域より小さい場合でも,常に割り当てられたVCのために確保されます。帯域の有効活用のため,ミニマムセルレートは必要な最低保証帯域を設定してください。
本装置は,パラレルPVCを設定した2本のVC間でロードバランスを指定できます。ロードバランス機能はvc-groupコマンドのオプションで設定します。この機能はレイヤ2レベルのロードバランスであり,マルチパス接続を前提としたIPレベル(レイヤ3レベル)のロードバランスとは異なりますが,パケットの振り分け方法は同じ制御を行います。本機能では,パケット単位にパケットの宛先IPアドレスおよび送信元IPアドレスのハッシュ値によって振り分けます。詳細は「9.5 ロードバランス」を参照してください。
ロードバランス指定した2本のVCのうち,一方のVCが障害になった場合,すべてのパケットを他方のVCへ送信します。障害の検出はVP AIS/RDI受信によって,該当するVP内のVCをすべて障害と判断します。障害発生後およそ4秒以内にVCを切り替え,また,障害回復後8秒以内に元のロードバランス動作状態に戻します。この機能を使用する場合は,2本のVCをそれぞれ別のVPとなるように設定してください。
本装置では,構成定義情報の指定に応じて,送信するセルのCLPビット(セル損失優先表示)の値を設定します。この指定はVC単位に,次に示す3種類のモードから選択できます。
- 常時CLP=0とする。(廃棄非優先)
- 常時CLP=1とする。(廃棄優先)
- 次に示すパケットごとのキューイング優先度または出力優先度に従い,CLPビットの値を設定する。
キューイング優先度と出力優先度については「(4) トラフィッククラス」を参照してください。
- サービスカテゴリCBR,ABR,UBR,VBR,GFRの場合
あらかじめ構成定義QoSフロー情報のキューイング優先度を定義しておきます。キューイング優先度が3または4の場合はCLPビット=0に,キューイング優先度が1または2の場合はCLPビット=1にして送信します。
- サービスカテゴリGFR2の場合
あらかじめ構成定義QoSフロー情報の出力優先度を定義しておきます。出力優先度が7または8の場合はCLPビット=0に,出力優先度が1〜6の場合はCLPビット=1にして送信します。
VCのサービスカテゴリがGFRまたはGFR2を設定した場合は,構成定義情報の廃棄クラスの値に関係なく,常に「パケットごとのキューイング優先度または出力優先度に従い,CLPビットの値を設定する」モードで動作します。
ITU-T勧告,およびATM Forumでは,CLPビット=0の意味を優先的に廃棄されない,CLP=1の意味を優先的に廃棄,としています。しかし,実際のセル廃棄優先制御は,優先制御の有無も含めて接続するネットワークの仕様によって異なるので,確認してから設定してください。
ユーザが設定した速度を超えないようにセルを送信する機能をシェーピングといいます。25M ATMまたはOC-3c/STM-1 ATMを使用する場合,VC単位およびVP単位にシェーピングが指定でき,VC単位,VP単位の2段同時にシェーピングすることもできます。2段シェーピングの概念を次の図に示します。
ATMのシェーピング精度は設定した帯域に対して0.3%の誤差があります。契約帯域を超えないよう,本装置では自動的に0.3%程度小さく設定します。
- VC単位シェーピング
VC単位のシェーピングは,各VCについて指定するトラフィッククラスの指定内容に従います。ピークセルレートなどのトラフィックパラメータに従って,セル速度を調節します。
- VP単位シェーピング
本装置は,VP単位のシェーピング機能によって,同一VP下の各VCのセル速度合計が,構成定義情報に定義されたVPのピークセルレートを超えないように送信します。VP単位のシェーピング機能を使用する場合には,構成定義情報に定義するVP数によって,同一VP下に定義できるVCI数が異なるので注意してください。
- シェーピングしないモード
本装置は,構成定義情報の設定によってシェーピングしないモードで動作させることができます。このモードで使用する場合,VPシェーピングを動作させる場合と比べて次に示す違いがあります。
- 帯域の最大値は,回線の物理的な帯域になります。
- VP数ごとのVC数の制限がなく,収容条件のVC数およびVPI値とVCI値の設定値の範囲で任意のVPI/VCIを設定できます。VC数の制限については「表6-2 VP数ごとの定義できる最大VC数」を参照してください。
- 使用できるサービスカテゴリはUBRだけです。したがって,サービスカテゴリパターンの設定値はdon't careになります。
- 優先制御はありません。UBRのトラフィックパラメータであるプライオリティの設定値はdon't careになります。
サービスカテゴリABRでは,本装置とATMネットワークの間でフロー制御して,ネットワークの空き帯域の有効利用および輻輳制御を行います。ATMネットワークで輻輳が発生したときは,本装置はネットワークからの輻輳発生通知によって送信するセル速度を下げ,輻輳が解消したときはネットワークからの回復通知によって送信するセル速度を上げます。また,受信時,ネットワークでの輻輳発生を検出したときは輻輳の発生を通知します。
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