解説書 Vol.2
トラフィックに対して帯域を割り当てることによって,輻輳時も該当トラフィックは設定した帯域を確保することができます。また,この制御を使用して広域イーサネットサービスへ接続できます。例えば,回線帯域が100Mbit/sでISPとの契約帯域が50Mbit/sの場合,あらかじめ回線帯域を50Mbit/s以下に抑えてパケットを送信することができます。物理帯域と契約帯域の差による輻輳を回避することができます。帯域制御の概要を次の図に示します。
図1-14 帯域制御の概要
帯域制御(トラフィック指定)には,次の2種類があります。
- LINE回線に対する帯域制御(トラフィック指定)
- Tag-VLAN連携回線に対する帯域制御(トラフィック指定)
- <この項の構成>
- (1) LINE回線に対する帯域制御(トラフィック指定)
- (2) Tag-VLAN連携回線に対する帯域制御(トラフィック指定)
(1) LINE回線に対する帯域制御(トラフィック指定)
帯域制御(トラフィック指定)の構造を次の図に示します。
図1-15 帯域制御(トラフィック指定)の仕組み
フロー検出によって検出したフローを,指定したキューにキューイングします。その後シェーパによってキューごとに帯域を確保しつつ,回線全体をシェーピングします。帯域の確保には大きく二つの制御方法があります。一つは設定した最大帯域を固定的に確保する固定帯域制御です。もう一つは設定した最低帯域は輻輳時でも確保しつつ,回線内に帯域が余っている場合(余剰帯域),最大帯域の範囲内で帯域を確保する可変帯域制御です。
なお,シェーパの動作仕様は,モデルおよびNIF種別に応じて異なります。以降に動作仕様とサポート仕様をモデルごとに説明します。
(a) AX2001R,AX2002R,AX2002RX
AX2001R,AX2002RおよびAX2002RXにおける仕様を説明します。
- キューの状態と帯域開放
帯域制御を行うキューには,キューにパケットが全くないインアクティブ状態とパケットがキューに存在するアクティブ状態という二つの状態があります。
インアクティブ状態のとき,キューは帯域をすべて開放します。このため帯域を必要とするほかのキューが開放された帯域を利用することができます。
一方アクティブ状態のときは,固定帯域制御では最大帯域を,可変帯域制御では最低帯域を確保します。実際に使用する帯域が確保した帯域より小さい場合,未使用分の帯域は開放されません。またアクティブ状態のキューは,パケットがなくなっても一定時間経過するまでアクティブ状態を維持して,かつ帯域も確保し続けます。一定時間以内に新たなパケットがキューにキューイングされなければ,キューは帯域を開放します。
- 帯域制御(トラフィック指定)を実行できる優先度
帯域制御(トラフィック指定)を指定したインタフェースは,優先度指定機能によって出力優先度を決定した場合だけ,帯域制御(トラフィック指定)が実行できます。DSCP書き換え指定または入力パケットDSCP値指定によって出力優先度を決定した場合は,帯域制御(トラフィック指定)は実行できません。帯域制御(トラフィック指定)と優先度指定機能の関係を次の表に示します。
表1-12 帯域制御(トラフィック指定)と優先度指定機能の関係
優先度指定機能 帯域制御(トラフィック指定)機能の実行 出力優先度指定 ○ DSCP書き換え指定 − 入力パケットDSCP値指定 − (凡例) ○:実行できる −:実行できない
- 帯域制御サポート仕様
NIF種別ごとの帯域制御のサポート仕様を次の表に示します。
表1-13 NIF種別ごとのサポート仕様
項目 NIF種別 10BASE-T 100BASE-TX 1000BASE-X 内臓イーサネット※5
NEB100-TBNEB1G-1B 回線当たりのキュー数 4,8,64キュー 回線ごとの最大送信帯域※2※3※4 4キューの場合 320kbit/s〜10Mbit/s 320kbit/s〜100Mbit/s 320kbit/s〜590Mbit/s 8キューの場合 640kbit/s〜10Mbit/s 640kbit/s〜100Mbit/s 640kbit/s〜590Mbit/s 64キューの場合 5120kbit/s〜10Mbit/s 5120kbit/s〜100Mbit/s 5120kbit/s〜590Mbit/s キューごとのトラフィック種別が固定帯域制御の場合※1 キューごとの最大送信帯域※2※4 80kbit/s〜10Mbit/s※3 80kbit/s 〜100Mbit/s※3 80kbit/s 〜590Mbit/s※3 キューごとのトラフィック種別が可変帯域制御の場合※1 キューごとの最低保証帯域※2※4 キューごとの最大送信帯域※2※4 最大帯域割り当て重み 1〜63 注※1 各キューには帯域が未設定時は最低保証帯域80kbit/sが割り当てられます。
注※2 誤差は最大2%程度です。
注※3 範囲外の帯域を割り当てた場合は完全優先で動作します。
注※4 理論限界値を考慮して設定してください。
- <理論限界値算出式>
- フレーム長(byte:FCS 含む)*8(bit)/
- ((フレーム長(byte:FCS 含む)*8(bit)/回線速度(bit/s))
- +フレーム間ギャップ時間(ns))
フレーム間ギャップ時間を次の表に示します。
回線速度(bit/s) フレーム間ギャップ時間(ns) 10000000 16000 100000000 1600 1000000000 160 注※5 AX2001R,AX2002R,AX2002RXで内蔵されたイーサネットのことです。
(2) Tag-VLAN連携回線に対する帯域制御(トラフィック指定)
AX2001R,AX2002RおよびAX2002RXでは,Tag-VLAN連携ごとに帯域制御(トラフィック指定)を行うことができます。一つの回線にTag-VLAN連携を多重化して使用している際に回線が輻輳状態となっても,Tag-VLAN連携ごとに帯域を保証することができます。さらにTag-VLAN連携内のアプリケーション種別ごとに帯域制御が可能です。帯域制御設定を行っているTag-VLAN連携回線をVLLと呼びます。
(a) 16VLL帯域制御
16VLL帯域制御は,NIF当たり,最大で16VLLの設定が可能です。NIFは,内蔵Ether,NEB100-4TB,NEB1G-1Bで使用できます。
16VLL帯域制御では,キューごとに以下の設定ができます。
- 固定帯域制御
- 可変帯域制御(最低帯域保証・最大帯域保証・余剰帯域)
16VLL帯域制御に対する帯域制御の構造を次の図に示します。
図1-16 Tag-VLAN連携回線に対する帯域制御(トラフィック指定)の仕組み
フロー制御部では,フロー検出条件に一致するパケットに対してキューイングするVLLおよび出力優先度キューを決定します。送信制御部では,キューごとに固定帯域制御または可変帯域制御によって出力する帯域を制御し,VLLごとに帯域制御を行います。16VLL帯域制御では,最大16個のTag-VLAN連携回線を同時に制御可能です。なお固定帯域制御および可変帯域制御は,前述のLINE回線に対する帯域制御(トラフィック指定)の機能と同様です。
- キューの状態と帯域開放
帯域制御を行うキューには,キューにパケットが全くないインアクティブ状態とパケットがキューに存在するアクティブ状態という二つの状態があります。
インアクティブ状態のとき,キューは帯域をすべて開放します。このため帯域を必要とするほかのキューが開放された帯域を利用することができます。
一方アクティブ状態のときは,固定帯域制御では最大帯域を,可変帯域制御では最低帯域を確保します。実際に使用する帯域が確保した帯域より小さい場合,未使用分の帯域は開放されません。またアクティブ状態のキューは,パケットがなくなっても一定時間経過するまでアクティブ状態を維持して,かつ帯域も確保し続けます。一定時間以内に新たなパケットがキューにキューイングされなければ,キューは帯域を開放します。
- 16VLL帯域制御を実行できる優先度
16VLL帯域制御を指定したTag-VLAN連携回線は,優先度指定機能によって出力優先度を決定した場合だけ,帯域制御(トラフィック指定)が実行できます。ユーザ優先度書き換え,DSCP書き換え指定または入力パケットDSCP値指定によって出力優先度を決定した場合は,16VLLL帯域制御は実行できません。16VLL帯域制御と優先度指定機能の関係を次の表に示します。
表1-14 16VLL帯域制御と優先度指定機能の関係
優先度指定機能 16VLL帯域制御機能の実行 出力優先度指定 ○ ユーザ優先度書き換え − DSCP書き換え指定 − 入力パケットDSCP値指定 − (凡例) ○:実行できる −:実行できない
定義したTag-VLAN連携の数と帯域制御(トラフィック指定)を設定できる数との関係を次の表に示します。
表1-15 帯域制御を設定する物理回線ごとのTag-VLAN連携数
Tag−VLAN連携数 16VLL帯域制御
設定可否物理回線当たり NIF当たり 1〜2 1〜8 ○ 3〜16※ 3〜16 ○ 17以上 17以上 − (凡例) ○:設定可 −:設定不可
注※ Line番号0だけに設定可能です。
「表1-15 帯域制御を設定する物理回線ごとのTag-VLAN連携数」は,物理回線当たり二つのTag-VLAN連携,かつNIF全体として8個のTag-VLAN連携(=二つのTag-VLAN連携×4回線)を定義する場合,帯域制御(トラフィック指定)をすべてのTag-VLAN連携に設定することができます。
また,物理回線に対して3〜16個のTag-VLAN連携を定義する場合,該当回線がLine番号0に定義されているときだけ,帯域制御(トラフィック指定)をすべてのTag-VLAN連携に設定し,16VLLとして動作させることができます。例えば,Line番号0に三つのTag-VLAN連携を定義して,Line番号1に一つのTagVLAN連携を定義した場合,帯域制御(トラフィック指定)をTag-VLAN連携に設定することはできません。 (Ver.08-04以降では,17個以上のTag-VLAN連携の定義は可能ですが,定義された場合は帯域制御(トラフィック指定)を行わずに,17個以上のTag-VLAN連携回線が定義されているLINE回線が完全優先で動作します。)
- 16VLL帯域制御サポート仕様
表1-16 NIF種別ごとのサポート仕様
項目NIF種別 10BASE-T 100BASE-TX 1000BASE-X 内臓イーサネット※5
NEB100-4TBNEB1G-1B NIF当たりのVLL数 16 VLL VLL当たりのキュー数 4キュー VLLごとの最大送信帯域※2※3※4 320kbit/s〜10Mbit/s 320kbit/s〜100Mbit/s 320kbit/s〜590Mbit/s キューごとのトラフィック種別が固定帯域制御の場合※1 キューごとの最大送信帯域※2※4 80kbit/s〜10Mbit/s※3 80kbit/s 〜100Mbit/s※3 80kbit/s 〜590Mbit/s※3 キューごとのトラフィック種別が可変帯域制御の場合※1 キューごとの最低保証帯域※2※4 キューごとの最大送信帯域※2※4 最大帯域割り当て重み 1〜63 注※1 各キューには帯域が未設定時は最低保証帯域80kbit/sが割り当てられます。
注※2 誤差は最大2%程度です。
注※3 範囲外の帯域を割り当てた場合はLINE回線内の完全優先で動作します。
注※4 理論限界値を考慮して設定してください。
- <理論限界値算出式>
- フレーム長(byte:FCS 含む)*8(bit)/
- ((フレーム長(byte:FCS 含む)*8(bit)/回線速度(bit/s))
- +フレーム間ギャップ時間(ns))
フレーム間ギャップ時間を次の表に示します。
回線速度(bit/s) フレーム間ギャップ時間(ns) 10000000 16000 100000000 1600 1000000000 160 注※5 AX2001R,AX2002R,AX2002RXで内蔵されたイーサネットのことです。
(b) 64VLL帯域制御
64VLL帯域制御は「16VLL帯域制御」を拡張しており,NIF当たり最大で64VLLまで設定可能にしています。
64VLL帯域制御では,キューごとに以下の設定が行えます。
- 可変帯域制御(最低帯域保証)
- 注 VLL単位で4キューの完全優先として動作させることも可能です。
以下に64VLL帯域制御の特徴を記載します。
- NEB100-1TCで使用可能です。
- VLL単位での帯域制御は4キューでのトラフィック指定と4キューでの完全優先として動作可能です。
- 優先度を指定する場合はユーザ優先度書き換えで行います。
- NEB100-1TCではNIF上にキューが存在するため,キューごとの統計情報を確認する場合は,show vllコマンドを使用して下さい。
- TagヘッダありのEthernet V2フォーマット形式フレームのみサポートしています。サポート外のフレームは該当VLLの最低優先度キュー(キュー1)から送信されます。
64VLL帯域制御の構造を次の図に示します。
図1-17 64VLL帯域制御の仕組み
フロー制御部では,フロー検出条件に一致するパケットに対してキューイングするVLLおよび出力優先度キューを決定します。送信制御部では,ユーザ優先度の設定値に応じてVLL内のキューの振り分けを行った後,キューごとに可変帯域制御または4キューの完全優先によって出力する帯域を制御し,VLLごとに帯域制御を行います。64VLL帯域制御では,最大64個のTag-VLAN連携回線を同時に制御可能です。なお可変帯域制御は,前述のLINE回線に対する帯域制御(トラフィック指定)の機能と同様です。4キューの完全優先の仕様を以下に示します。
- VLL内完全優先動作について
64VLLでは,一つのVLLに対して4キューの完全優先で制御することが可能です。VLL内完全優先動作では,複数のキューにパケットが存在する場合,優先度の高いキューから常にパケットを送信します。トラフィックの優先順を完全に遵守する場合に適用できます。優先度は1(低)≦出力優先度≦4(高)となります。
- キューの状態と帯域開放
帯域制御を行うキューには,キューにパケットが全くないインアクティブ状態とパケットがキューに存在するアクティブ状態という二つの状態があります。
インアクティブ状態のとき,キューは帯域をすべて開放します。このため帯域を必要とするほかのキューが開放された帯域を利用することができます。
一方アクティブ状態のときは,可変帯域制御では最低帯域を確保します。実際に使用する帯域が確保した帯域より小さい場合は,未使用分の帯域は余剰帯域として開放し,帯域を必要とするほかのキューが開放された帯域を利用することができます。またアクティブ状態のキューは,パケットがなくなっても一定時間経過するまでアクティブ状態を維持して,かつ帯域も確保し続けます。一定時間以内に新たなパケットがキューにキューイングされなければ,キューは帯域を開放します。
- 64VLL帯域制御を実行できる優先度
64VLL帯域制御を指定したTag-VLAN連携回線は,ユーザ優先度書き換えによってユーザ優先度を書き換えた場合のみ,64VLL帯域制御が実行できます。出力優先度指定,DSCP書き換え指定または入力パケットDSCP値指定によって出力優先度を決定した場合は,64VLL帯域制御は実行できません。64VLL帯域制御と優先度指定機能の関係を次の表に示します。
表1-17 64VLL帯域制御と優先度指定機能の関係
優先度指定機能 64VLL帯域制御機能の実行 出力優先度指定 − ユーザ優先度書き換え ○ DSCP書き換え指定 − 入力パケットDSCP値指定 − (凡例) ○:実行できる −:実行できない
- 64VLL帯域制御サポート仕様
表1-18 64VLL帯域制御のサポート仕様
項目NIF種別 10BASE-T 100BASE-TX NEB100-1TC NIF当たりのグループ数 64グループ ユーザ当たりのキュー数 4キュー ユーザごとの最大送信帯域※2※3 320kbit/s〜10Mbit/s 320kbit/s〜100Mbit/s キューごとのトラフィック種別が固定帯域制御の場合※1 キューごとの最大送信帯域 −※6 キューごとのトラフィック種別が可変帯域制御の場合※1 キューごとの最低保証帯域※2※5 80kbit/s〜10Mbit/s※3 80kbit/s〜100Mbit/s※3 キューごとの最大送信帯域 −※7 最大帯域割り当て重み −※7 (凡例) −:設定不可
注※1 各キューに一つも帯域設定を行っていない場合,そのVLLは完全優先VLLとして動作します。キューの優先度は1(低)≦出力優先度≦4(高)となります。
また,VLL内のいずれかのキューに帯域制御を設定している場合,該当VLL内の帯域制御未設定キューには最低保証帯域80kbit/sが割り当てられます。
注※2 誤差は最大2%程度です。
注※3 範囲外の帯域を割り当てた場合は帯域制御を行わずにLINE回線が完全優先で動作します。
注※4 65個以上のTag-VLAN連携を定義する場合,帯域制御(トラフィック指定)を行わずに65個以上Tag-VLAN連携回線を定義したLINE回線内が完全優先で動作します。
注※5 理論限界値を考慮して設定してください。
- <理論限界値算出式>
- フレーム長(byte:FCS 含む)*8(bit)/
- ((フレーム長(byte:FCS 含む)*8(bit)/回線速度(bit/s))
- +フレーム間ギャップ時間(ns))
フレーム間ギャップ時間を次の表に示します。
回線速度(bit/s) フレーム間ギャップ時間(ns) 10000000 16000 100000000 1600 1000000000 160 注※6 設定された場合は,未設定時と同様の帯域(最低保証帯域80kbit/s)が割り当てられます。
注※7 設定された場合は,設定不可項目(キューごとの最大送信帯域および最大帯域割り当て重み)だけを無視して帯域制御を行います。
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