解説書 Vol.2

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2.1.1 Diff-servの機能

Diff-serv(Differentiated Services)機能は,IPネットワーク上のQoS制御技術の一つです。従来のQoS技術はパケットのTCP/IPヘッダからフローを検出して優先度を決定していましたが,この技術ではインターネットのバックボーンのように多数のユーザのフローが集中する大規模なIPネットワークには適用できませんでした。しかし,Diff-serv機能を使用すれば,ネットワークの境界ルータで設定した条件に一致するIPフローを検出し,このフローのIPヘッダ内DS Fieldの上位6ビットであるDSCP(Differentiated Services Code Point)に,ドメイン内で行う制御の内容をビットパターンとして集約し転送します。後続のルータは,DSCPだけを参照して優先制御などを行うため,高速にパケット転送を行うことができます。このようなシンプルなアーキテクチャを使用し,ISPでの契約サービスの差別化や,各種アプリケーションのサービスの差別化など,ポリシーベースのサービスを行えます。

<この項の構成>
(1) Diff-servのネットワークモデル
(2) バウンダリノードおよびインテリアノードの機能
(3) DSフィールドとDSCP
(4) Diff-servの導入手順

(1) Diff-servのネットワークモデル

Diff-serv機能を使用するネットワークをDSドメインと呼びます。このDSドメインは境界に位置するバウンダリノードとコアに位置するインテリアノードから構成されます。フロー数が少なく回線速度が比較的低速のバウンダリノードはDiff-serv機能の全機能を備えています。一方,高速で多数のフロー数を抱えるインテリアノードは簡易な機能を備えます。

バウンダリノードはネットワークの境界ルータに当たり,フローを識別してDSCPへ集約してDSCPに基づいて転送動作を行います。ここでバウンダリノードがパケットに対して行うマーキングをネットワークマーキングと呼びます。また,ユーザがあらかじめパケットにDSCPを付けて転送する場合は,バウンダリノードが契約帯域の監視および送信制御だけを行います。この,ユーザがあらかじめパケットに対して行うマーキングをユーザマーキングと呼びます。

インテリアノードはネットワークのバックボーンのルータに当たり,DSCPに基づいた転送動作だけを行います。この優先転送動作を,PHB(Per Hop Behavior)と呼びます。

Diff-serv機能の概要を次の図に示します。

図2-1 Diff-serv機能の概要

[図データ]

(2) バウンダリノードおよびインテリアノードの機能

バウンダリノードおよびインテリアノードでの,Diff-servの機能について説明します。

バウンダリノードおよびインテリアノードの機能を次の図に示します。

図2-2 バウンダリノードおよびインテリアノードの機能

[図データ]

(3) DSフィールドとDSCP

Diff-servでは,既存のIPヘッダ内のTOSフィールドをDSフィールドとして再定義しています。既存のTOSフィールドのフォーマットと,Diff-servで使用するDSフィールドのフォーマットを次の図に示します。

図2-3 TOSフィールドとDSフィールド

[図データ]

Diff-servのDSCPは,6ビットのフィールドを持っていますが,最下位ビットは,RFCでExperimental/Local Useと規定しています。また,DSCP値の上位3ビットをClass selectorとして使用することで,既存のTOSフィールドとの互換性を取っています。

(4) Diff-servの導入手順

Diff-servの導入時に必要な情報について概要を示します。DSドメイン内には,バウンダリノードとインテリアノードの2種類のルータがあります。DSドメイン内で一貫したサービスを行うためには,次に示す項目を決定する必要があります。

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