コンフィグレーションガイド Vol.3
ネットワーク・パーティションを実現する機能の一つとしてVRFがあります。VRFとは,装置内に論理的に分離された複数のルーティングテーブルを保持し,各ルーティングテーブルに従いパケットを転送する機能です。この異なるルーティング空間のことをVRFインスタンスと呼びます。そのため,VRFインスタンスが異なれば同じIPアドレスを重複して使用できます。また,ルーティングプロトコルはVRFインスタンスごとに独立して動作します。
VLANは,VRFインスタンスまたはグローバルネットワークのどちらかに所属します。グローバルネットワークとは,VRF設定されていない状態のネットワークを指します。グローバルネットワークは,VRF設定されていないインスタンスであり,ほかのVRFインスタンスとは分離されています。
各機能のVRFのサポート状況を次の表に示します。
表34-3 VRFサポート状況
項目 サポート
状況備考 VLAN機能 ポートVLAN ○ なし プロトコルVLAN ○ MAC VLAN ○ Tag変換 ○ VLANトンネリング ○ レイヤ2プロトコル スパニングツリー − VRFと装置単位で排他 Ring Protocol ○ VRFとの同時動作については,次を参照してください。
IGMP snooping/MLD snooping ○ なし ポリシーベーススイッチング ○ なし フィルタ フィルタ ○ なし uRPF ○ QoS ○ なし レイヤ2認証 IEEE 802.1X − VRFと装置単位で排他 Web認証 − VRFと装置単位で排他 MAC認証 − VRFと装置単位で排他 認証VLAN − VRFと装置単位で排他 DHCP snooping ○ なし 高信頼化機能 GSRP ○ なし VRRP ○ 障害検出機能 IEEE802.3ah/UDLD ○ なし ストームコントロール ○ L2ループ検知 ○ CFM ○ リモートネットワーク管理 SNMP ○ VRF上でのSNMPのコンフィグレーションについては,次を参照してください。
MIB △ 一部のMIBはグローバルネットワークだけが対象です。詳細は次を参照してください。
SNMP通知 △ 一部のSNMP通知はグローバルネットワークだけが対象です。詳細は次を参照してください。
syslog出力 ○ VRFへのsyslog出力のコンフィグレーションについては,次を参照してください。
E-Mail出力 − グローバルネットワークだけが対象 sFlow統計 △ VRFも統計対象に含みます。ただし,VRF設定したインタフェースで収集する情報では,ルータ型拡張データ形式およびゲートウェイ型拡張データ形式は無効となります。
コレクタはグローバルネットワークに設置してください。隣接装置情報管理 LLDP △ Organizationally-defined TLV extensionsはグローバルネットワークだけが対応します。詳細は次を参照してください。
OADP △ VRFのVLANでは,OADP中にAddress情報は含まれません。詳細は次を参照してください。
ポートミラーリング ○ なし レイヤ3中継 IPv4ユニキャスト中継 ○ 本章のほかに次を参照してください。
IPv4ユニキャストVRF間中継 ○ 詳細は次を参照してください。
IPv4マルチキャスト中継 ○ 詳細は次を参照してください。
IPv4マルチキャストVRF間中継 ○ IPv6ユニキャスト中継 ○ 本章のほかに次を参照してください。
IPv6ユニキャストVRF間中継 ○ 詳細は次を参照してください。
IPv6マルチキャスト中継 ○ IPv6マルチキャストをVRFで動作させた場合,グローバルネットワークを含む全VRFでIPv6 PIM-SSMの系切替時の通信無停止対応機能が動作しません。
VRFでのIPv6マルチキャスト中継については,次を参照してください。
IPv6マルチキャストVRF間中継 ○ NULLインタフェース ○ グローバルネットワークとVRFで一つのNULLインタフェースを共用します。 ポリシーベースルーティング ○ VRF間ルーティングもできます。
VRF間ポリシーベースルーティングのコンフィグレーションについては,次を参照してください。
RA ○ なし DHCP/BOOTPリレーエージェント ○ VRF上でのリレーエージェントのコンフィグレーションについては,次を参照してください。
DHCPサーバ機能 − グローバルネットワークだけが対象 IPv6 DHCPリレー − グローバルネットワークだけが対象 IPv6 DHCPサーバ機能 − グローバルネットワークだけが対象 IPv4スタティックルーティング ○ VRF間ルーティングもできます。
コンフィグレーションについては,次を参照してください。
IPv6スタティックルーティング ○ VRF間ルーティングもできます。
コンフィグレーションについては,次を参照してください。
IPv4ユニキャストルーティングプロトコル RIP ○ コンフィグレーションについては,次を参照してください。
OSPF ○ BGP4 ○ 詳細は次を参照してください。
経路フィルタリング ○ なし IPv6ユニキャストルーティングプロトコル RIPng ○ コンフィグレーションについては,次を参照してください。
OSPFv3 ○ BGP4+ ○ 詳細は次を参照してください。
経路フィルタリング ○ なし IPv4マルチキャストルーティングプロトコル IGMP ○ 詳細は次を参照してください。
PIM-SM ○ PIM-SSM ○ PIM-DM − グローバルネットワークだけが対象 IPv6マルチキャストルーティングプロトコル MLD ○ 詳細は次を参照してください。
PIM-SM ○ PIM-SSM ○ 運用・保守 ping ○ なし traceroute ○ telnet ○ ftp ○ tftp ○ telnetによるログイン ○ 詳細は次を参照してください。
ftpによるログイン ○ SSH ○ 詳細は次を参照してください。
DNSリゾルバ − グローバルネットワークだけが対象 NTP ○ コンフィグレーションについては,次を参照してください。
(凡例)○:サポート △:一部サポート −:未サポート
本装置では,VRFインスタンスでIPv6を使用するかどうか,およびRing ProtocolやGSRPをVRFと同時動作させるかどうかを,動作モードとして設定します。本装置でサポートするVRFの動作モード,動作対象となる通信プロトコル,値の範囲および説明を次の表に示します。
表34-4 VRFの動作モード,値の範囲および説明
VRF動作モード VRF動作対象プロトコル VRFの値の範囲 説明 設定なし なし 設定不可
- VRFは動作しません
axrp-enable IPv4 2〜64
- IPv4だけがVRFインスタンスで動作します
- Ring Protocolが動作します
l2protocol-disable IPv4 2〜250
- IPv4だけがVRFインスタンスで動作します
- レイヤ2プロトコルが動作しません
axrp-enable-ipv4-ipv6 IPv4
IPv62〜64
- IPv4とIPv6のどちらもVRFインスタンスで動作します
- Ring Protocolが動作します
gsrp-enable-ipv4-ipv6 IPv4
IPv62〜125
- IPv4とIPv6のどちらもVRFインスタンスで動作します
- GSRPが動作します
l2protocol-disable-ipv4-ipv6 IPv4
IPv62〜250
- IPv4とIPv6のどちらもVRFインスタンスで動作します
- レイヤ2プロトコルが動作しません
なお,VRFを使用するためには,オプションライセンスOP-NPARが必要です。MSU-1A,MSU-1A1,およびCSU-1Aでは未サポートです。
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