コンフィグレーションガイド Vol.2
- <この項の構成>
- (1) 概要
- (2) 注意事項
(1) 概要
VRRPは,仮想ルータがマスタへ切り替わった際,マスタ装置からGratuitous ARPフレームを送信し,下流のLANスイッチのMACアドレスエントリの更新を促します。
本機能では,仮想ルータがマスタへ切り替わったとき,Gratuitous ARPフレームを送信する前に,Flush Requestフレームを送信します。Flush Requestフレームは,下流のLANスイッチに対してMACアドレステーブルエントリのクリアを促すフレームで,VRRP管理VLANと呼ばれる専用のVLANに対してフラッディングされます。VRRP管理VLANにはすべての下流のLANスイッチを所属させることを推奨します。
本機能を設定しない場合,複数の仮想ルータが同時に状態遷移した際,すべてのGratuitous ARPフレームの送信が完了するまでMACアドレスエントリは切り替わりません。そのため,仮想ルータ数の増加に伴い,MACアドレスエントリの切り替えに時間が掛かります。しかし,本機能を設定した場合,複数の仮想ルータが一度にマスタへ切り替わったとき,すべてのGratuitous ARPフレームを受信する前にFlush RequestフレームによってMACアドレステーブルが更新されるため,すばやく通信を再開できるようになります。
Flush Request機能の動作を次の図に示します。
図23-14 Flush Request機能の動作
- 仮想ルータ1が障害検出によって,マスタ/バックアップの切り替わり発生
- 仮想ルータ2が障害検出によって,マスタ/バックアップの切り替わり発生
- 切り替わったマスタ側の装置から,VRRP管理VLANへFlush Requestフレームをフラッディング
- 下流のLANスイッチは,MACアドレステーブルをクリア
- マスタ装置から,Gratuitous ARPフレームを送信
(2) 注意事項
- グループ切替機能を利用する場合,本機能を設定することを推奨します。グループに属する仮想ルータが多い場合,本機能によってすべての仮想ルータが同時に通信を再開できます。
- ほかの仮想ルータの状態遷移に関係なく下流のLANスイッチのMACアドレステーブルを維持したい場合,その装置はVRRP管理VLANに属さないようにしてください。
- 物理的な構成が異なる複数のVLANに対してFlush Request機能を適用する場合,それらのVLANすべてを含むようにVRRP管理VLANを設定すると,VRRP管理VLANでレイヤ2ループが発生する構成になるおそれがあります。
VRRP管理VLANでレイヤ2ループが発生する構成例を次に示します。
図23-15 VRRP管理VLANでレイヤ2ループが発生する構成例
上記の構成では,VLAN-A,VLAN-Bそれぞれにはレイヤ2ループはありませんが,VLAN-A,VLAN-Bの両方にFlush Request機能を適用するVRRP管理VLAN(すべての装置が属するVLAN)を設定すると,VRRP管理VLANでレイヤ2ループが発生します。
このような場合,次のどちらかの方法でレイヤ2ループを防止してください。
- スパニングツリーやRing ProtocolなどのL2プロトコルを動作させる。
- VRRP管理VLANに廃棄フィルタを設定して,パケットを中継しない構成にする。この場合,VRRP管理VLANはFlush Request機能以外の用途と併用できません。
- 下流のLANスイッチは,本機能に対応した装置である必要があります。
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