解説書 Vol.1
本装置がサポートするPPPのイベント検出項目と関連するコンフィグレーションのタイマ値およびリトライ回数を次の表に示します。
表5-12 PPPのイベント検出項目と関連するタイマ値およびリトライ回数
機能および
適用プロトコルPPPのイベント項目 動作時間
(デフォルト値)関連するコンフィグレーションのタイマ値,リトライ回数 リンク設定
LCP
NCP※1相手局無応答時間 22秒 retry_timer
max_configureネゴシエーション未収束検出時間 数秒以下※2 max_failure リンク切断
LCP
NCP※1相手局無応答時の切断時間 6秒 retry _timer
max _terminateリンクメンテナンス
LCP通信中の品質監視間隔 21秒 echo_trial_times 通信中の障害検出時間 6秒 echo_success_times
echo_interval注※1 本装置がサポートするNCPはIPCP,IPV6CP,OSINLCPです。
注※2 厳密には「図5-13 ネゴシエーション未収束シーケンス例」に示す動作シーケンスを完了するまでの時間であり,相手の応答時間に依存しますが,通常は,即時に応答を返すため,数秒以内でシーケンスが完了します。
本装置では,コンフィグレーションによってタイマ値,リトライ回数を変更できます。本装置がサポートするPPPコンフィグレーションのタイマ値およびリトライ回数の一覧を次の表に示します。
表5-13 PPPコンフィグレーションのタイマ値およびリトライ回数の一覧
PPP
コンフィグレーション設定値
(デフォルト値)役割 retry _timer 1〜10
(2)秒PPPのリンク設定,リンク切断フレームの送信間隔。リンク設定時にPPP制御パケットの取りこぼしがある場合などにリンク設定時間を短くして再試行待ち時間を縮められます。 max _configure 1〜255
(10)回リンク設定要求フレームの送信リトライ回数 max _terminate 1〜3
(2)回リンク切断要求フレームの送信リトライ回数 max_failure 1〜255
(5)回PPP接続条件が収束しないとみなすリトライ回数 echo_trial_times 1〜10
(7)回リンク品質監視パケットによる品質判定の試行回数。あらかじめ回線品質が悪いことがわかっているシステムや,代替ルートがないWAN回線を適用するケースなどで,回線品質「悪」検出の感度を鈍くできます。 echo_success_times 1〜10
(6)回品質OK/NGを判断する品質判定試行回数の基準値(echo success times以上品質OKであれば回線品質は良いと判定する)。あらかじめ回線品質が悪いことがわかっているシステムや,代替ルートがないWAN回線を適用するケースなどで,回線品質「悪」検出の感度を鈍くできます。 echo_interval 0〜255
(3)秒回線品質監視パケットの送信間隔。相手局の性能の問題などで,試行間隔を開けなければならない場合などに試行間隔を伸ばせます。
- <この項の構成>
- (1) リンク設定時のタイマ
- (2) リンク切断時のタイマ
- (3) リンク品質監視のタイマ
(1) リンク設定時のタイマ
PPPのリンク設定時のタイマについて説明します。
(a) 正常なリンク設定
PPPリンク設定正常シーケンス例を次の図に示します。PPPは,LCPというレイヤとNCPというレイヤに分かれており,各レイヤについて自局/相手局間でConfigure-RQとConfigure-Ackの送受信が完了してPPPがオープン状態に入ります。
(b) リンク設定時相手無応答検出
PPPリンク設定時,自局からのConfigure-RQ送信に対して,Configure-Ackなどの相手局からの応答がない場合に,一定間隔でConfigure-RQの送信をリトライし,リトライアウト発生契機に「接続相手局無応答」の障害を検出します。接続相手局無応答障害検出シーケンス例を次の図に示します。このシーケンスはLCP,NCPで共通です。
- 関連タイマ値,リトライ回数
- retry_timer:Configure-RQ送信リトライ間隔,デフォルト値2秒
- max_configure:Configure-RQ送信リトライ回数,デフォルト値10回
- 相手局無応答検出時間
- (retry_timer)×(max_configure+1)
- したがって,デフォルト値使用時は22秒。
(c) ネゴシエーション未収束検出
接続相手との接続条件が収束しないため接続できない場合に,ネゴシエーション・ループの発生を抑える目的から,PPPは「接続相手と接続条件が合わない」と判断する基準値を持っています。この値は次に示す二つのケースで使用されます。
- 自局が送信したConfigure-RQに対し,接続相手局が拒否パケット(Configure-Nak/Configure-Rej)を送信してくる場合。
- 接続相手局が送信してくるConfigure-RQに対し,自局が拒否パケット(Configure-Nak/Rej)を送信する場合。ただし,本装置はある構成オプションに対してConfigure-Nakをmax_failure分送信してもネゴシエーション未収束を検出せず,Configure-Nakで送信していた構成オプションを付加したConfigure-Rejを送信します。
これらのケースについて,ネゴシエーション未収束シーケンス例を次の図に示します。このシーケンスはLCP,NCPで共通です。
また,1,2のシーケンスが同時に発生した場合(Configure-Nak/Configure-Rejを送信し,受信しているようなシーケンス)でも送受信側それぞれ独立にカウントします。
- 関連タイマ値,リトライ回数
- max_failure:Configure-Nak/Configure-Rej送信リトライ回数です。受信の場合もこの回数で,「ネゴシエーション未収束検出」とします。デフォルト値5回です。
- ネゴシエーション未収束検出時間
- 通常,相手局は認められないConfigure-RQを受信したらすぐにConfigure-Nak/Rejを,また,Configure-Nak/Rejを受信したらすぐにConfigure-RQを送信するため,ネゴシエーション未収束を検出する時間は数秒以下です。
(2) リンク切断時のタイマ
PPPのリンク切断時のタイマについて説明します。
(a) 正常なリンク切断(closeコマンドなどによる切断)
PPPリンク切断正常シーケンス例を次の図に示します。
図5-14 PPPリンク切断正常シーケンス例〔PPP関係タイマ値,リトライ回数〕
PPPは,LCPだけTerminate-RQを送信し,Terminate-RQに対するTerminate-Ackの受信が完了してから,レイヤ1に対するクローズ要求を発行します。正常なリンク切断時(closeコマンドなどによる切断)は,NCPのTerminate-RQを送信しないでNCPを切断します。NCPは,該当するネットワークレイヤプロトコルコンフィグレーションが無効になった場合,Terminate-RQを送信します。
(b) リンク切断時,接続相手無応答検出
PPPリンク切断時,自局からのTerminate-RQ送信に対してTerminate-Ackの応答がない場合に,一定間隔でTerminate-RQの送信をリトライし,リトライアウト発生を契機として下位レイヤのクローズ要求を発行します。リンク切断時接続相手局無応答シーケンス例を次の図に示します。
- 関連タイマ値,リトライ回数
- retry_timer:Terminate-RQ送信リトライ間隔です。デフォルトは2秒です。
- max_terminate:Terminate-RQ送信リトライ回数です。デフォルト値は2回です。
- 相手無応答検出時間
- (retry_timer)×(max_terminate+1)
- デフォルト値を使用すると6秒になります。
(3) リンク品質監視のタイマ
本装置は,Echoの送達確認によるリンク品質監視手順をサポートしています。Echoによる品質監視について構成情報と障害検出時間の関係をまとめます。
リンク品質監視は一定間隔でリンク上を流れる固定トラフィックになるので,契約帯域はこれも含めて検討が必要です。リンク品質監視は,Echo-RQ/Echo-Replyによって行い,このパケット長は142オクテットです。パケット長はPPPヘッダ〜FCSの値になります。送信間隔はコンフィグレーションのecho_intervalで指定します。なお,本装置はecho_interval値を0に指定すれば,Echoパケットの送信を抑止できます。
系切替が発生すると一時的に相手装置からのEcho-RQパケットの応答ができない場合があります。それによって,相手装置がリンク品質の低下を検出し,リンク切断を行うことがあります。系切替によるリンク切断を起こさないようにするために,下記の1.または2.を実施してください。
- リンク品質監視の感度を鈍くする。
PPPリンクの品質監視の感度を鈍くします。本装置と接続する場合,相手装置のpppコンフィグレーションコマンドの品質監視試行回数(echo-traial_times)に対する品質監視成功回数(echo_succes_times)が相対的に小さくなるように設定してください。
- リンク品質監視を停止する。
PPPリンク品質監視の実行を停止します。本装置と接続する場合,相手装置のpppコンフィグレーションコマンド品質監視実行間隔(echo_interval)を0に設定してください。
(a) 正常な通信中の品質監視
Echoの送達確認による品質確認を行う場合の正常シーケンス例を次の図に示します。Echo-RQ送信は"echo_interval"で設定したタイマ値ごとに送信します。
- 関連タイマ値,リトライ回数
- echo_trial_times:Echo-RQの試行回数です。デフォルトは7回です。
- echo_success_times:回線品質が良いと判断するEcho-Reply受信回数です。デフォルト6回です。
- echo_interval:Echo-RQの送信間隔です。デフォルトは3秒です。
- 通信中の品質監視間隔
- (echo_interval)×(echo_trial times)
- このため,デフォルト値を使用したとき,最大21秒になります。
(b) 障害検出時間
Echoの送達確認による通信中の品質監視を行うことで,回線障害または相手装置無応答等の障害を検出できます。障害が発生してからそれを検出するまでにかかる時間と関連タイマ値およびリトライ回数の関係を示します。
- 関連タイマ値,リトライ回数
- echo_trial_times:Echo-RQの試行回数です。デフォルトは7回です。
- echo_success_times:回線品質が良いと判断するEcho-Reply受信回数です。デフォルト6回です。
- Echo Interval:Echo-RQの送信間隔です。デフォルトは3秒です。
- 障害発生後の検出時間
- ((echo_trial_times)−(echo_success_times)+1) × (echo_interval)
- したがって,デフォルト値を使用した場合,6秒になります。
関連タイマ,リトライ回数がデフォルト設定時の場合の障害検出シーケンス例を次の図に示します。
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