解説書 Vol.1
フレームリレーで使用するプロトコルと,本装置で選択できるオプションについて説明します。
- <この項の構成>
- (1) フレームフォーマット
- (2) PVC状態確認手順
- (3) CLLM(統合リンクレイヤマネージメント)
ITU-T勧告Q.922,ANSI規格T1.618で規定されるフレーム形式です。フレームの前後はフラグによって区切られ,フレーム内にはDLCIを含むQ.922アドレスフィールドと,情報フィールドがあります。アドレスフィールドは規定されているアドレス形式のうち,2オクテットフォーマットだけをサポートし,オプションの3および4オクテットフォーマットはサポートしていません。ユーザが使用できるDLCIの値の範囲は16〜991です。
ITU-T勧告Q.933 Annex Aで規定される手順または,ANSI規格のT1.617a Annex Dで規定される手順を使用します。ITU-T勧告Q.933は,ITUによって取り決められた国際標準勧告です。また,日本のTTCによる標準規格「JT-Q933」はITU-T勧告Q.933に準拠しています。T1.617aはANSIによって取り決められた規格です。このほか,業界団体のフレームリレーフォーラムによるFRF.1.1がありますが,本装置ではサポートしていません。PVC状態確認手順の機能を次の表に示します。必須機能とオプション機能に関しては,Q.933 Annex A,T1.617a Annex D共に差異はありません。
項目 必須/オプション 本装置でのサポート 備考 リンク完全性確認 必須 サポートします。 − エラー監視 必須 サポートします。 − リンク回復監視 実装による N393回の監視周期の間に,N392回連続して正常シーケンスを検出したときリンク回復します。 − 双方向手順 オプション サポートします。
端末側手順,双方向手順のほか,網側手順だけを動作させることもできます。網側手順の品質監視パラメータは,端末側手順のN393,N392と同じ値を使用します。 PVC状態通知
(フルステータス)必須 サポートします。 − 非同期単一PVC状態通知 オプション サポートします。
双方向手順または網側手順のときは,単一PVC非同期状態表示通知の送出を設定できます。− (凡例) −:該当しない
PVC状態確認手順の設定にはframe_relayコマンドを使用します。
(a) リンク完全性確認−エラー監視−リンク回復監視
PVC状態確認手順では,管理用DLCI(0番)を使用して,T391秒ごとに端末と網の間でフレームを交換します。
このフレームにはSTATUS ENQ,STATUS,FULL STATUSの3種類があり,それぞれのフレームにはシーケンス番号フィールドがあります。このシーケンス番号を使用してフレームが正常に送達していることをチェックします。送達にエラーがあることを検出した場合は,リンク品質低下と判断してリンクをDOWN状態にします。また,正常な送達を検出するとリンクを回復状態にします。
N393とN392は,品質低下および回復の判定に使用するパラメータです。N393回の試行の間にN392回以上のエラーが発生すると品質低下とし,N392回以上の連続した正常動作を検出すると回復します。N392はN393以下の値を使用します。
(b) PVC状態通知
管理用DLCI上でやり取りされるFULL STATUSフレームはPVC状態情報を含んでおり,運用中のPVC(DLCI)および各PVCの状態(Active/InActive)を通知できます。
端末は,現在使用していないPVC(DLCI)が網から通知されると,このPVCを装置内に登録し,新しい通信路として使用を開始します。本装置では,網から通知されたPVC(DLCI)を自動的に登録し,使用できます。自動登録できるPVC(DLCI)数は,構成定義情報で定義されたDLCIと合わせて加入回線当たり最大384個です。
(c) 双方向手順
PVC状態情報を通知するFULL STATUSは,網から端末へ向けて送信するフレームですが,双方向手順では端末から網へ向けても送信できます。例えば,網から本装置へ向けて385個以上のPVC(DLCI)が通知されたとき,本装置は通知されたPVC(DLCI)の中から384個だけを選択して自動登録します。このとき双方向手順を行っていると,FULL STATUSによって,どのPVC(DLCI)を選択したかを網へ通知できます。選択されなかったPVC(DLCI)は網によって通信不可と判断され,接続先の端末へ通信不可(InActive)状態が通知されます。
(d) 単一PVC非同期状態表示通知
単一PVC非同期状態表示通知は,フレーム内に一つのPVCの情報だけを持ち,シーケンス番号はなく,任意のタイミングで送出されます。PVC状態通知のためのFULL STATUSの送出は,状態変化を検出してからT391×N391秒(プロトコル規定のデフォルト値では60秒)前後の時間がかかります。単一PVC非同期状態表示通知は,状態変化検出時に即座に通知を行うため,ネットワークの経路制御などに素早く反映させることができます。また,処理負荷の大きいFULL STATUSフレームの情報を分散させ,処理を滑らかにする効果があります。
CLLMは管理用のDLCI(1007番)を使用して,網から端末へPVCの輻輳状態などを通知するフレームで,ITU-T勧告Q.922で規定されています。FECNやBECNによる方法より輻輳レベル(軽輻輳・重輻輳)の通知を明確に行えます。しかし,輻輳レベルの表示コードのプロトコル規定が明確でなく,使用時に注意が必要です。本装置では,日本電信電話株式会社のスーパーリレーFRに照応した表示コードを採用しています。また,CLLMの受信を一定時間間隔で監視し,受信しなくなることによって輻輳回復を検出します。CLLMの理由表示コードの意味づけと本装置での対応動作を次の表に示します。
理由表示コード 意味 本装置での対応動作 備考 2 網がCIRでのデータ転送を保証できる輻輳の発生(軽輻輳) 網へのデータ送出スループットをCIR以下に制限します。 ※1※2 3 網がCIRでのデータ転送を保証できない輻輳の発生(重輻輳) 網へのデータ送出スループットをCIRより小さく制限します。 ※1※2
スループット制限値はCIR値の90%です。7 パケットを転送できない障害の発生(網障害) PVC状態確認手順でのPVC状態InActive通知と同等の扱いにします。網への送出データは廃棄し,構成指定によって経路バックアップを行います。 ※1 10 パケットを転送できない輻輳の発生(全廃棄) 網へのデータ送出スループットをCIRより小さく制限します。 ※1※2
スループット制限値はCIR値の90%です。上記以外 − CLLMメッセージを無視します。 − (凡例) −:該当しない
注※1 CLLMを有効にするには,frame_relayコマンドでcllm_sustainオプションを指定します。
注※2 表の動作を実施する場合は,dlciコマンドでcongestion_managementオプションを指定します。
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