解説書 Vol.1
フレームリレーは,送達確認やフローコントロールを省略した簡素なプロトコルで高速通信を実現するパケット交換型の通信方式です。64kbit/s〜6Mbit/sの低中速回線へ適応でき,ソフトウェアで通信処理を行います。適用できる物理インタフェースはV.24,V.35,X.21,Iインタフェース(基本群,1次群,2次群),T1/E1非多重,E1多重です。
物理回線内に複数の通信パス(PVC)を多重でき,複数の接続相手と同時通信できます。また,トラフィックは統計多重されるため,回線帯域を有効的に利用できます。さらに,PVCと論理的なネットワークインタフェースを柔軟に対応づけられるので,多様なネットワークを構築できます。本装置はITU-T規格とANSI規格に対応しており,構成指定によって,どちらのネットワークにも接続できます。フレームリレーの機能を次の表に示します。
機能 概要 PVC状態確認
プロトコルITU-T Q.933 Annex A ITU-T規格は主に国内で使用される規格。 ANSI T1.617a Annex D ANSI規格は主に欧米で使用される規格。 ITU-T双方向状態問い合わせオプション 網がDTE側からPVC状態を受け取る機能。 ITU-T非同期STATUSメッセージオプション 単一PVCの状態変化を非同期に通知する手順。本装置ではDLCIクローズ状態を相手へ通知するときに使用します。 DLCI拡張フォーマット 2オクテットフォーマット DLCI数 384/RP 輻輳制御 BECN 逆方向明示的輻輳通知。
輻輳した網により設定され,受信DTEに輻輳回復手順が必要であることを通知します。CLLMメッセージ 軽輻輳 網が軽輻輳状態に陥ったときDTEに通知します。 重輻輳 網が重輻輳状態に陥ったときDTEに通知します。 固定障害通知 網において装置故障または回線障害が発生したとき,DTEに通知します。 DEビット付加 QoSの指定によって,キューイング優先度に応じてDEビットを付加できます。 PVC帯域制御 ピークレート制限 PVCごとの最大スループットを制限する機能。優先度制御とは別機能です。 最低レート保証 PVCごとに最低スループットを保証します。 優先制御 PVC内出力優先制御 出力優先制御とは,出力優先度の高いキューに積まれたパケットをすべて送信するまで,より低いキューに積まれたパケットは送信しない送信方法。 PVC内最低帯域保証 該当するPVCが最低レート保証を行っている場合に適用できます。
最低帯域保証とは,キューごとに指定された送信帯域を保証する送信方法。PVC内均等保証 均等保証とは,各キューから順番に1パケットずつ均等に送信する送信方法。 上位プロトコル IP 上位プロトコルとしてIPを使用できます。 IPX 上位プロトコルとしてIPXを使用できます。 ブリッジ 上位プロトコルとしてブリッジ接続を使用できます。 カプセルプロトコル RFC1490/2427準拠 RFC1490/2427の規格に従ってカプセル化を行います。 IPアドレス解決 ARP ARP要求の送信およびARP応答の受信をサポートします。 InARP Inverse ARP要求の送信およびInverse ARP応答の受信をサポートします。 スタティックARP DLCIと対応するネクストホップを構成指定する機能。この機能を使用するときは,DLCIの構成定義が必須です。 IPネットワークモデル LAN型(1物理回線:1インタフェース) 1物理回線に,ネットワークアドレスを一つ割り当てる接続形態。 パーシャルLAN型
(1物理回線:複数インタフェース)複数のPVCをまとめた1グループに,ネットワークアドレスを一つ割り当てる接続形態。 ポイント−ポイント型 PVCまたはパラレルPVCごとに個別のネットワークアドレスを割り当てる接続形態。 パーシャルLAN型,ポイント−ポイント型混在
(1物理回線内)パーシャルLAN型とポイント−ポイント型を混在させる接続形態。 パラレルPVC 複数PVC(最大4PVC)を使用して同一ネクストホップへ接続する機能。
- <この項の構成>
- (1) フレームリレーを使用したネットワーク構成
- (2) パーシャルメッシュ構成のネットワーク構成例
- (3) フルメッシュ構成のネットワーク構成例
フレームリレーを使用したネットワークにはパーシャルメッシュ構成とフルメッシュ構成があります。パーシャルメッシュ構成とフルメッシュ構成の比較を次の表に示します。
フレームリレー 特長 パーシャル
メッシュ構成本社−拠点間通信などに適用されるネットワーク構成。PVCの数を削減できます。公衆フレームリレーサービスなどを利用した場合に,料金を節約できます。 フルメッシュ構成 対等な拠点間で相互に通信する場合などに適用されるネットワーク構成です。
PVCの数は増えるが,直結パスがあるため通信遅延を低減できます。
パーシャルメッシュ構成の適用ケースとして,次に示す点を挙げることができます。
- PVCがない個所にも通信する必要があり,複数PVCを経由して通信を行う場合(次の図で,拠点間での通信を本社経由の折り返しで行う場合)
- PVCがある個所だけで通信し,PVCがない個所では通信しない場合(次の図で,本社と拠点間は通信するが拠点間では通信しない場合)
パーシャルメッシュ構成のネットワーク構成例を次の図に示します。
図5-28 パーシャルメッシュ構成のネットワーク構成例
フルメッシュ構成の適用ケースとして,次に示す点を挙げることができます。
- PVCがない個所にも通信する必要があり,複数PVCを経由して通信を行う場合
フルメッシュ構成のネットワーク構成例を次の図に示します。
図5-29 フルメッシュ構成のネットワーク構成例
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