解説書 Vol.1

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5.1.3 WANの回線ハードウェアでの送信遅延

<この項の構成>
(1) WANソフトウェア処理方式
(2) WAN回線の送信遅延
(3) 回線ハードウェアに与える送信データ長
(4) 回線ハードウェアでの送信遅延時間見積もり例

(1) WANソフトウェア処理方式

6Mbit/s以下のWAN回線(Serial,BRI,J1,BRIISDN,PRIISDN)はソフトウェアで送信処理を行います。同一RP配下に収容しているこれらのWAN回線に対してソフトウェアが順番に優先度キューから送信フレームを選択し,回線ハードウェアに対して送信要求処理を行います。ソフトウェア逐次処理の概念を次の図に示します。

図5-2 ソフトウェア逐次処理の概念

[図データ]

ソフトウェアは同一RP配下に収容しているWAN回線に対して逐次処理を行うため,ある回線への送信要求実行後,ほかの回線の送信要求処理を実行し,再度該当する回線への送信処理を実行するまでの間,回線ハードウェアがデータ送信を実行し続けられるだけの送信フレームを回線ハードウェアに与えておくことで,回線ハードウェアの空き(遊び)の発生を抑止しています。

(2) WAN回線の送信遅延

6Mbit/s以下のWAN回線では,構成定義情報で設定したQoS情報に基づいて優先度キューから送信フレームを選択し,回線ハードウェアに送信要求を発行します。このとき,(1)で述べたソフトウェアの逐次処理に対応してある程度の送信データを回線ハードウェアに与えておくため,ソフトウェアが優先度キューから最優先のパケットを選択して回線ハードウェアに送信要求をしても,回線ハードウェアで送信遅延(送信待ち)が発生します。

(3) 回線ハードウェアに与える送信データ長

RPの処理性能から,1回線の処理に必要な時間は75μ秒になります。このため,同一RP配下に収容している6Mbit/s以下のWAN回線の数を自動的に算出し,1回の送信処理で回線ハードウェアに与える送信データ長を決定します。ここではこれをハードウェアキュー長と呼ぶことにします。ハードウェアキュー長の算出式を次に示します。

 
ハードウェアキュー長(バイト)=
(回線速度(bit/s)÷8)
×(((RP配下の6Mbit/s以下WAN回線)×75μ秒)÷1000000)
 

なお,RP配下のWAN回線数の算出方法を次の表に示します。

表5-8 RP配下のWAN回線数の算出方法

回線種別 RP配下の回線数 備考
Serial RP配下のDisable定義していないLine数を回線数とします。
BRI(専用線),
PRI(専用線)
RP配下のDisable定義していないLine配下のDisable定義していないTimeslot数を回線数とします。
BRIISDN RP配下のDisable定義していないLine数1本を2回線と数えます。 頻繁に切断/接続が発生するため,Line配下の全チャネルが使われる場合の回線数で固定します。
PRIISDN(他回線のDチャネルを使用) RP配下のDisable定義していないLine数1本を24回線と数えます。
PRIISDN(自回線のDチャネルを使用) RP配下のDisable定義していないLine数1本を23回線と数えます。

(凡例) −:該当しない


ソフトウェアは送信要求発行時に回線ハードウェアに送信要求済みのデータ長を参照し,回線ハードウェアキュー長未満であれば送信要求を発行します。したがって,回線ハードウェアに送信要求済みのデータ長が回線ハードウェアキュー長を超える場合があります。回線ハードウェアキュー長チェック方法を次の図に示します。

図5-3 回線ハードウェアキュー長チェック方法

[図データ]

(4) 回線ハードウェアでの送信遅延時間見積もり例

回線ハードウェアでの送信遅延時間の見積もり例を次に示します。

(例)
  • 構成:
    RP配下に24タイムスロットのPRI回線を2本と,1.5Mbit/sのSerial回線を1本収容
  • Serial回線上のデータパターン:
    低優先度の1500バイトデータと高優先度の64バイト音声が混在する
  • この場合の,Serial回線での音声データの回線ハードウェアでの遅延
この例の場合,RP配下に収容する回線数は,「 表5-8 RP配下のWAN回線数の算出方法」より49回線になります。また,Serial回線の回線速度は1536kbit/sです。この値をハードウェアキュー長の算出式に当てはめると,次のようになります。
 
ハードウェアキュー長=(1536000(bit/s)÷8)×(49×75(μ秒)÷1000000)≒706バイト(小数点切り上げ)
 
706バイトのハードウェアキューに低優先度の1500バイトデータが送信中の状態で高優先度の音声が優先キューに積まれ,1500バイトデータの送信完了契機に音声を送信するケースが回線ハードウェアでの送信遅延が最大になるケースで,
遅延時間=1500(バイト)÷(1536000(bit/s)÷8)(バイト/秒)=0.0078125(秒)
で,約7.8ミリ秒の遅延が発生する可能性があります。遅延が最大になるケースを次の図に示します。

図5-4 遅延が最大になるケース

[図データ]

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