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7.5.3 PPPoE通信ができない

PPPoEの通信トラブルが発生する要因として考えられるのは,主に次の4種類があります。

  1. ネットワークの構成変更
  2. PPPoEに関係する構成定義情報の変更
  3. mru(MTU)の設定値
  4. mss情報の設定値

上記1,2については,構成定義情報およびネットワーク構成の変更前と変更後の差分を調べていただき,通信ができなくなるような原因がないか確認してください。

ここでは,クライアントの設定(ネットワークカードの設定,ケーブルの接続など)は確認されているものとし,上記3,4の設定値により「通信できない(ある特定のHPにアクセスできなくなる)」というケースについて「mru,mssの設定値が原因となる」障害部位および原因の切り分け手順を説明いたします。

障害部位および原因の切り分け方法は,次のフローにしたがってください。

[図データ]

<この項の構成>
(1) ログメッセージおよびインタフェース状態の確認
(2) 障害範囲の特定(本装置から実施する場合)
(3) 障害範囲の特定(お客様の端末装置から実施する場合)
(4) PPPoEセッション状態の確認
(5) 経路情報の確認
(6) mru(MTU)の設定値
(7) mss情報の設定値

(1) ログメッセージおよびインタフェース状態の確認

通信ができなくなる原因として,ハードウェア(RP/NIF/Line)の障害(または壊れ)や,隣接装置の障害が考えられます。本装置が表示するログメッセージやshow ip interfaceコマンドによるインタフェースのup/down状態を確認してください。手順については「7.5.1 通信ができない,または切断されている」を参照してください。

注 RP輻輳発生時のPPPoEセッション切断
RP輻輳が発生している状態において,PPPoEセッション接続監視用のパケットが廃棄されセッションが切断される場合があります(ただし,構成定義コマンドPPPoEの自動再接続時間(auto_connection)で再接続を行うように設定している場合は,自動で再接続を行います)。この場合,下記のログメッセージが収集されていますのでご注意ください。

<ログメッセージ>
E4 PPPoE NIF:x LINE:x 00020008 0850 :000000000000 <セッション名>: Disconnection of PPP session detected via Link Status Monitoring. Check the line cable connection with modem/ONU and the peer router's status.

(2) 障害範囲の特定(本装置から実施する場合)

本装置に障害がない場合は,通信を行っていた相手との間のどこかに障害が発生している可能性があります。通信相手とのどこの部分で障害が発生しているか障害範囲を特定する手順を次に示します。

  1. 本装置にログインします。
  2. pingコマンドを使って通信できない両方の相手との疎通を確認してください。pingコマンドの操作例および実行結果の見方は,「5.2.2 当該宛先アドレスとの通信可否を確認する」を参照してください)。
  3. pingコマンドで通信相手との疎通が確認できなかったときは,さらにpingコマンドを使って本装置に近い装置から順に通信相手に向けて疎通を確認してください。
  4. pingコマンド実行の結果,障害範囲が隣接装置の場合は「(4) PPPoEセッション状態の確認」に,リモート先の装置の場合は「(5) 経路情報の確認」に進んでください。

(3) 障害範囲の特定(お客様の端末装置から実施する場合)

本装置にログインすることができない環境にある場合に,お客様の端末装置から通信相手とのどこの部分で障害が発生しているか障害範囲を特定する手順を次に示します。

  1. お客様の端末装置にping機能があることを確認してください。
  2. ping機能をお使いになり,お客様の端末装置と通信相手との疎通ができるか確認してください。
  3. ping機能で通信相手との疎通が確認できなかったときは,さらにpingコマンドを使ってお客様の端末装置に近い装置から順に通信相手に向けて疎通を確認してください。
  4. ping機能による障害範囲が特定できましたら,障害と考えられる装置が本装置である場合は本装置にログインしていただき,障害解析フローにしたがって障害原因の調査を行ってください。

(4) PPPoEセッション状態の確認

本装置のハードウェアは正常に動作している場合でも,本装置と接続している隣接の装置のハードウェアに障害が発生していることも考えられます。

本装置と隣接の装置間のPPPoEセッション状態を確認する手順を次に示します。

  1. 本装置にログインします。
  2. show interfacesコマンドを使ってPPPoEセッション状態を確認してください。該当セッション状態が“connected”状態以外のときは,「7.4 ネットワークインタフェースの通信障害」に進んでください。該当セッション状態が“connected”状態のときは,「(5) 経路情報の確認」に進んでください。

    [図データ]

(5) 経路情報の確認

隣接装置とのアドレスが解決しているにもかかわらず通信ができない,通信相手との途中の経路で疎通が不可となる,または通信相手までの経路がおかしいなどの場合は,本装置が取得した経路情報を確認する必要があります。確認手順を次に示します。

  1. 本装置にログインします。
  2. show ip routeコマンドを使って本装置が取得した経路情報を確認してください。
  3. 本装置が取得した経路情報の中に,通信障害となっているインタフェースの経路情報がない場合やネクストホップアドレスが不正の場合は「7.6 IPv4ユニキャストルーティングの通信障害」に進んでください。
  4. 本装置が取得した経路情報の中に,通信障害となっているインタフェースの経路情報がある場合は,通信不可のインタフェースに設定している次の機能に問題があると考えられます。該当する項目の調査を行ってください。

(6) mru(MTU)の設定値

PPPoEの構成定義(mru値)を変更していないにもかかわらず,特定のHPにアクセスできない場合があります。その解決方法としてmru(MTU)のサイズ変更をする必要があります。下記にフレッツ・ADSL,Bフレッツサービスの通信障害時の例,およびmru(MTU)のサイズ変更手順を示します。

例)フレッツ・ADSL/Bフレッツを含むPPPoEでは,MTUが1454バイトに,また,一般のイーサネットで使用するMTUは1500となっています。
このパケットサイズが整合せずエラーとなり,そのサーバとの間ではコネクションが確立するのに,データは流れないという状況が発生してしまいますので,本装置のmru(MTU)値を調整してお試しください。

mru(MTU)変更の手順
構成定義show pppoeコマンドでPPPoE情報のmruの設定値を確認してください。

[実行結果]
[図データ]

(7) mss情報の設定値

PPPoEの構成定義(MSS値)を変更していないにもかかわらず,特定のHPにアクセスできない場合があります。その理由は,データのサイズが一度に受信できるサイズの上限を上回るために起きる現象です。その解決方法としてMSSのサイズ変更をする必要があります。下記にMSSサイズ変更についてと変更手順を示します。

MSSのサイズ変更について
イーサネットのMTUは通常1500バイトであり,通信(TCP/IP)ヘッダサイズ(40バイト)+データサイズ(MSS)になることでMSSは1460バイトが要求されます。
[ MSS(1460) = MTU(1500) - 40(TCP/IPヘッダサイズ) ]
ところが,WAN側のPPPoE回線ではPPPoEヘッダ(8バイト)が追加されるため,このヘッダデータ分が溢れてしまいフラグメントが発生します。その結果,性能低下や通信経路中に存在するブラックホール・ルータによりパケットが廃棄され,特定のホームページが見られないと言った現象が発生します。これらの問題を解決するために,本装置では上り下りパケットについてMSSのサイズ変更を行わなければなりません。

MSS情報の変更手順
構成定義コマンドshow pppoeにてPPPoE情報のmssの設定値を確認してください。

[実行結果]
[図データ]

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