コンフィグレーションガイド Vol.2


27.1.2 CFMの構成要素

〈この項の構成〉

(1) ドメイン

CFMではドメインという単位でネットワークを階層的に管理して,ドメイン内でCFM PDUを送受信することで保守管理を行います。ドメインには0〜7のレベルがあり,レベルの値が大きいほうが高いレベルとなります。

高いレベルでは,低いレベルのCFM PDUを廃棄します。低いレベルでは,高いレベルのCFM PDUを処理しないで転送します。したがって,低いレベルのCFM PDUが高いレベルのドメインにわたることはなく,ドメインで独立した保守管理ができます。

レベルは区分に応じて使用するように,規格で規定されています。区分に割り当てられたレベルを次の表に示します。

表27‒7 区分に割り当てられたレベル

レベル

区分

7

カスタマ(ユーザ)

6

5

4

サービスプロバイダ(事業者全体)

3

2

オペレータ(事業者)

1

0

ドメインは階層的に設定できます。ドメインを階層構造にする場合は低いレベルを内側に,高いレベルを外側に設定します。階層的なドメインの構成例を次の図に示します。

図27‒2 階層的なドメインの構成例

[図データ]

(2) MA

MAはドメイン内を分割して管理する場合に使います。ドメインには最低一つのMAが必要です。

CFMはMA内で動作するため,MAを設定することで管理範囲を細かく制御できます。

MAはMAIDで識別されます。そのため,同じMA内で運用する各装置では,設定時にMAIDを合わせておく必要があります。

MAの管理範囲の例を次の図に示します。

図27‒3 MAの管理範囲の例

[図データ]

(3) MEP

MEPはドメインの境界上の管理ポイントで,MAに対して設定します。MEPにはMEP IDというMA内でユニークなIDを設定して各MEPを識別します。

CFMの機能はMEPで実行されます。CFMはMEP間(ドメインの境界から境界までの間)でCFM PDUを送受信することで,該当ネットワークの接続性を確認します。

MEPには次の二つの種類があります。

Down MEP,Up MEPからの送信例,およびDown MEP,Up MEPでの受信例を次の図に示します。

図27‒6 Down MEPおよびUp MEPからの送信

[図データ]

図27‒7 Down MEPおよびUp MEPでの受信

[図データ]

Down MEPおよびUp MEPは正しい位置に設定してください。例えば,Down MEPはMAの内側に設定する必要があります。MAの外側に対して設定した場合,CFM PDUがMAの外側に送信されるため,CFMの機能が正しく動作しません。誤ってDown MEPを設定した例を次の図に示します。

図27‒8 誤ってDown MEPを設定した例

[図データ]

このように誤ってMA 10の外側にDown MEPを設定すると,MA 10の外側(レベル1より外)にCFM PDUが送信されるため,CFMの機能が正しく動作しません。

(4) MIP

MIPはドメインの内部に設定する管理ポイントで,ドメインに対して設定します(同一ドメイン内の全MAで共通)。階層構造の場合,MIPは高いレベルのドメインが低いレベルのドメインと重なる個所に設定します。また,MIPはLoopbackおよびLinktraceに応答するので,ドメイン内の保守管理したい個所に設定します。

(a) ドメインが重なる個所に設定する場合

ドメインが重なる個所にMIPを設定すると,上位ドメインでは,低いドメインを認識しながらも,低いドメインの構成を意識しない状態で管理できます。

レベル1とレベル2を使用した階層構造の例を次の図に示します。

図27‒9 レベル1とレベル2の階層構造の例

[図データ]

レベル2を設計する際,レベル1のMAでMEPに設定しているポートをレベル2のMIPとして設定します。これによって,レベル2ではレベル1の範囲を認識しながらも,運用上は意識しない状態で管理できます。

障害発生時は,レベル2の問題か,レベル1のどこかの問題かを切り分けられるため,調査範囲を特定できます。

(b) 保守管理したい個所に設定する場合

ドメイン内で細かくMIPを設定すれば,より細かな保守管理ができるようになります。

ドメイン内にMIPが設定されていない構成の例を次の図に示します。この例では,ネットワークに障害が発生した場合,装置A,装置EのMEP間で通信できないことは確認できますが,どこで障害が発生したのか特定できません。

図27‒10 ドメイン内にMIPが設定されていない構成の例

[図データ]

ドメイン内にMIPを設定した構成の例を次の図に示します。この例では,ドメイン内にMIPを設定することで,LoopbackやLinktraceの応答が各装置から返ってくるため,障害発生個所を特定できるようになります。

図27‒11 ドメイン内にMIPを設定した構成の例

[図データ]

(5) サーバMEP

サーバMEPはETH-AISを使用するときに必要な,仮想的なMEPです。サーバMEPがAISフレームを受信すると,高いレベルのMEPにAISフレームを送信します。

ETH-AISについては,「27.1.7 ETH-AIS」を参照してください。