コンフィグレーションガイド Vol.2


27.1.1 概要

イーサネットは企業内LANだけでなく広域網でも使われるようになってきました。これに伴って,イーサネットにSONETやATMと同等の保守管理機能が求められています。

CFMでは,次の主な三つの機能を使用して,レイヤ2ネットワークの保守管理を行います。

  1. Continuity Check

    管理ポイント間で,情報が正しく相手に届くか(到達性・接続性)を常時監視します。

  2. Loopback

    障害を検出したあと,Loopbackでルート上のどこまで到達するのかを特定します(ループバック試験)。

  3. Linktrace

    障害を検出したあと,Linktraceで管理ポイントまでのルートを確認します(レイヤ2ネットワーク内のルート探索)。

CFMの構成例を次の図に示します。

図27‒1 CFMの構成例

[図データ]

〈この項の構成〉

(1) CFMの機能

CFMにはIEEE802.1agとITU-T Y.1731の二つの規格があります。ITU-T Y.1731ではIEEE802.1agと同等の機能に,独自の機能を追加しています。本装置ではどちらの機能もサポートしています。それぞれの機能を次に示します。

表27‒1 IEEE802.1ag CFMの機能

機能名

説明

サポート

Continuity Check(CC)

管理ポイント間の到達性の常時監視

Loopback

ループバック試験

ping相当の機能をレイヤ2で実行します。

Linktrace

ルート探索

traceroute相当の機能をレイヤ2で実行します。

RDI

検出した障害をほかの管理ポイントに通知(CCの一部)

(凡例) ○:サポート

表27‒2 ITU-T Y.1731 CFMの機能

機能名

説明

サポート

ETH-CC(CC)

管理ポイント間の到達性の常時監視

ETH-LB(Loopback)

ループバック試験

ping相当の機能をレイヤ2で実行します。

ETH-LT(Linktrace)

ルート探索

traceroute相当の機能をレイヤ2で実行します。

ETH-RDI(RDI)

検出した障害をほかの管理ポイントに通知

ETH-AIS

下位ドメインの障害を上位ドメインに通知

ETH-LCK

ETH-Testなどの試験のために障害検出を制御

ETH-Test

フレームロスやビット誤りなどの詳細な測定

×

ETH-APS

高速(50msec)な障害切替

×

ETH-MCC

保守用信号チャネル

×

ETH-EXP

実験用

×

ETH-VSP

ベンダー独自機能の実装用

×

ETH-LM

フレームロスの測定

×

ETH-DM

伝送遅延の測定

×

ETH-CSF

クライアントシグナル失敗

×

ETH-SLM

合成損失測定

×

(凡例) ○:サポート △:受信だけサポート ×:未サポート

(2) CFMの構成

CFMを構成する要素を次に示します。

表27‒3 IEEE802.1agのCFMを構成する要素

構成要素

説明

ドメイン

(Maintenance Domain)

CFMを適用するネットワーク上の管理用のグループ

ドメインレベル

ドメインのレベル

MA

Maintenance Association)

ドメインを細分化して管理するグループ

MAID

Maintenance Association IDentifier)

MAの識別子

ドメイン名称,MA番号,MA名称から構成される識別子です。

MEP

Maintenance association End Point)

管理終端ポイント

ドメインの境界上のポートで,MA単位に設定します。また,CFMの各機能を実行するポートです。

MEPにはDown MEPとUp MEPがあります。

Down MEP

CFM PDUを直接送受信するMEP

Up MEP

CFM PDUを直接送受信しないで,L2転送機能によってほかのポートで送受信するMEP

MIP

Maintenance domain Intermediate Point)

管理中間ポイント

ドメインの内部に位置する管理ポイントです。

MP

Maintenance Point)

管理ポイント

MEPとMIPの総称です。

表27‒4 ITU-T Y.1731のCFMを構成する要素

構成要素

説明

MEG

Maintenance Entity Group)

管理ポイントのグループ

MEGレベル

MEGのレベル

MEG ID

MEGの識別子

MEG名称から構成される識別子です。

MEP

Maintenance entity group End Point)

管理終端ポイント

管理境界上のポートで,MEG単位に設定します。また,CFMの各機能を実行するポートです。

MEPにはDown MEPとUp MEPがあります。

Down MEP

CFM PDUを直接送受信するMEP

Up MEP

CFM PDUを直接送受信しないで,L2転送機能によってほかのポートで送受信するMEP。

MIP

Maintenance entity group Intermediate Point)

管理中間ポイント

MEGの内部に位置する管理ポイントです。

サーバMEP

ETH-AISの動作に必要なMEP

MEPを設定すると自動設定されます。

IEEE802.1agとITU-T Y.1731の用語の対応を次の表に示します。

表27‒5 IEEE802.1agとITU-T Y.1731の用語の対応

IEEE802.1agでの用語

ITU-T Y.1731での用語

本マニュアルでの用語

備考

ドメイン

ドメイン

本マニュアルでは同じMEGレベルのMEGの総称をドメインと呼びます。

ドメインレベル

MEGレベル

レベル

MA

MEG

MA

本マニュアルではIEEE802.1ag,ITU-T Y.1731で共通の説明をする場合はMAと呼びます。

区別する場合は「IEEE802.1agのMA」のように呼びます。

MAID

MEG ID

MAID

本マニュアルではIEEE802.1ag,ITU-T Y.1731で共通の説明をする場合はMAIDと呼びます。

区別する場合は「IEEE802.1agのMAID」のように呼びます。

MEP

MEP

MEP

Down MEP

Down MEP

Down MEP

Up MEP

Up MEP

Up MEP

MIP

MIP

MIP

MP

MP

本マニュアルではMEPとMIPの総称をMPと呼びます。

サーバMEP

サーバMEP

サーバMEPはITU-T Y.1731だけの機能です。

(凡例) −:該当なし

(3) サポート状況

CFMは,スイッチポートでは動作しません。

スイッチポートを除いた,本装置でのCFMの構成要素のサポート状況を次の表に示します。

表27‒6 CFMの構成要素のサポート状況

本マニュアルでの用語

サポート状況

ドメイン

レベル

MA

MAID

Down MEP

Up MEP

×

MIP

×

サーバMEP

(凡例) ○:サポート ×:未サポート

(4) 装置MACアドレス

CFMでは,装置MACアドレスを装置識別子として使用します。