コンフィグレーションガイド Vol.2


19.1.6 シェーパモード

シェーパモードは,通常ユーザ間の帯域制御方式をNIFごとに決定します。シェーパモードを設定すると,該当するNIFで階層化シェーパが有効になります。

シェーパモードには,RGQ,LLPQ1,およびLLPQ4の三つのモードがあります。シェーパモードを設定したあと,該当するNIFを再起動すると動作に反映されます。

〈この項の構成〉

(1) RGQ

RGQは通常ユーザごとの最低帯域を保証しつつ,余剰帯域がある場合は最大帯域まで使用できるようにするモードです。各通常ユーザには設定した最低帯域を分配して,さらに帯域に余剰がある場合は,重みに従った割合で各通常ユーザに帯域を最大帯域まで分配します。RGQの概念を次の図に示します。

図19‒3 RGQの概念

[図データ]

(a) 通常ユーザの重みが均等な場合

ポート帯域制御によって回線帯域を9Gbit/sにシェーピングする場合で,重みが均等なときの帯域計算例を次の表に示します。

表19‒8 RGQの帯域の計算例1(回線帯域を9Gbit/sに設定,重み均等)

シェーパユーザ

入力帯域

(Gbit/s)

最低帯域

(Gbit/s)

最大帯域

(Gbit/s)

余剰帯域※1

(Gbit/s)

余余剰帯域※2

(Gbit/s)

送信帯域※3

(Gbit/s)

通常ユーザ1

5

2

8

1

0.25

3.25

通常ユーザ2

3.5

2

8

1

0.25

3.25

通常ユーザ3

2.5

2

8

0.5

0

2.5

注※1

回線内の余剰帯域=回線帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計=9−(2+2+2)=3(Gbit/s)

通常ユーザ1,2,および3への余剰帯域の分配=3×(1÷(1+1+1))=1(Gbit/s)

通常ユーザ3への入力帯域が2.5Gbit/sのため,余剰帯域で使用する帯域は0.5Gbit/sだけとなります。

注※2

回線内の余剰帯域の余剰帯域(以降,余余剰帯域)=回線帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計−各通常ユーザの余剰帯域の合計=9−(2+2+2)−(1+1+0.5)=0.5(Gbit/s)

通常ユーザ1および2への余余剰帯域の分配=0.5×(1÷(1+1))=0.25(Gbit/s)

注※3

各通常ユーザの送信帯域(最大帯域以下)=各通常ユーザの最低帯域+各通常ユーザに分配された余剰帯域+各通常ユーザに分配された余余剰帯域

通常ユーザ1の送信帯域=2+1+0.25=3.25(Gbit/s)

通常ユーザ2の送信帯域=2+1+0.25=3.25(Gbit/s)

通常ユーザ3の送信帯域=2+0.5=2.5(Gbit/s)

(b) 通常ユーザの重みが異なる場合

ポート帯域制御によって回線帯域を9Gbit/sにシェーピングする場合で,ユーザ間の重みが異なり,最大帯域で制限されるときの帯域計算例を次の表に示します。

表19‒9 RGQの帯域の計算例2(回線帯域を9Gbit/sに設定,重みが異なる)

シェーパユーザ

入力帯域

(Gbit/s)

最低帯域

(Gbit/s)

最大帯域

(Gbit/s)

余剰帯域※1

(Gbit/s)

余余剰帯域※2

(Gbit/s)

送信帯域※3

(Gbit/s)

通常ユーザ1

(重み2)

5

1

8

3

0.67

4.67

通常ユーザ2

(重み1)

3.5

1

8

1.5

0.33

2.83

通常ユーザ3

(重み1)

2.0

1

1.5

0.5

0

1.5

注※1

回線内の余剰帯域=回線帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計=9−(1+1+1)=6(Gbit/s)

通常ユーザ1への余剰帯域の分配=6×(2÷(2+1+1))=3(Gbit/s)

通常ユーザ2への余剰帯域の分配=6×(1÷(2+1+1))=1.5(Gbit/s)

通常ユーザ3への余剰帯域の分配=6×(1÷(2+1+1))=1.5(Gbit/s)

通常ユーザ3への入力帯域が2Gbit/sのため余剰帯域で使用する帯域は1Gbit/sだけとなりますが,最大帯域が1.5Gbit/sに制限されているため余剰帯域で使用する帯域は0.5Gbit/sだけとなります。

注※2

回線内の余剰帯域の余剰帯域(以降,余余剰帯域)=回線帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計−各通常ユーザの余剰帯域の合計=9−(1+1+1)−(3+1.5+0.5)=1(Gbit/s)

通常ユーザ1への余余剰帯域の分配=1×(2÷(2+1))≒0.67(Gbit/s)

通常ユーザ2への余余剰帯域の分配=1×(1÷(2+1))≒0.33(Gbit/s)

注※3

各通常ユーザの送信帯域(最大帯域以下)=各通常ユーザの最低帯域+各通常ユーザに分配された余剰帯域+各通常ユーザに分配された余余剰帯域

通常ユーザ1の送信帯域=1+3+0.67=4.67(Gbit/s)

通常ユーザ2の送信帯域=1+1.5+0.33=2.83(Gbit/s)

通常ユーザ3の送信帯域=1+0.5=1.5(Gbit/s)

(2) LLPQ1およびLLPQ4

LLPQ1およびLLPQ4の2モードは,LLPQ方式で帯域を制御します。LLPQ方式は,RGQと同様に,通常ユーザごとの最低帯域を保証しつつ,余剰帯域がある場合は重みに従って各通常ユーザの最大帯域まで使用できるようにする方式です。RGQとの違いは次のとおりです。

LLPQを使用することで,ある通常ユーザの優先したいデータが,別の通常ユーザの通常データによって遅延することを防げます。

なお,LLPQ1およびLLPQ4のシェーパモード名の数値は,LLPQの数を示しています。LLPQ1はユーザ当たりのキュー数が4キューの場合だけ使用できます。LLPQ1の概念を次の図に示します。この図に示すとおり,Q#4がLLPQとなります。

図19‒4 LLPQ1の概念

[図データ]

LLPQ4はユーザ当たりのキュー数が8キューの場合だけ使用できます。LLPQ4の概念を次の図に示します。この図に示すとおり,Q#5〜8がLLPQとなります。

図19‒5 LLPQ4の概念

[図データ]

LLPQ方式では,各通常ユーザのLLPQへ割り当てる帯域を分配したあと,LLPQ以外へ割り当てる帯域を決定します。各通常ユーザのLLPQへ割り当てる帯域は,LLPQ最大帯域を上限としたLLPQに対する全入力帯域になります。ただし,LLPQへ割り当てる帯域がポート帯域を超える場合は,合計帯域がポート帯域以内になるように,各通常ユーザのLLPQへ割り当てる帯域を均等に減らします。

LLPQ以外のユーザ送信キューへは,次に示す2段階で帯域を割り当てます。

  1. 「各通常ユーザの最低帯域−LLPQへ割り当てる帯域」を割り当てます。

    LLPQへ割り当てる帯域が最低帯域より大きい場合は,この段階で帯域を割り当てません。

  2. 1段階目の帯域割り当て後に余った回線帯域を,各通常ユーザ間で均等に割り当てます。

(3) LLRLQユーザ帯域がシェーパモード帯域へ与える影響

LLRLQユーザと組み合わせた場合の帯域計算例を次の表に示します。ここでは,通常ユーザのシェーパモードをRGQとします。

表19‒10 LLRLQユーザとRGQの帯域の計算例(回線帯域5Gbit/s)

シェーパユーザ

入力帯域

(Gbit/s)

最低帯域

(Gbit/s)

最大帯域

(Gbit/s)

未使用帯域※1

(Gbit/s)

余剰帯域※2

(Gbit/s)

送信帯域

(Gbit/s)

LLRLQユーザ

1

2

1※3

(RGQ)通常ユーザ1

6.5

1

5

2

1

2

(RGQ)通常ユーザ2

4

1

5

1

2

(凡例)−:対象外

注※1

通常ユーザに割り当てられる未使用帯域=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)=5−1=4(Gbit/s)

注※2

通常ユーザの余剰帯域=通常ユーザに割り当てられる未使用帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計値=4−(1+1)=2(Gbit/s)

通常ユーザ1および2の余剰帯域=2×(1÷(1+1))=1(Gbit/s)

注※3

LLRLQユーザの送信帯域は次のどちらかの値です。

・入力帯域≦最大帯域の場合,入力帯域

・入力帯域>最大帯域の場合,最大帯域

(4) デフォルトユーザ帯域がシェーパモード帯域へ与える影響

デフォルトユーザは,LLRLQユーザおよび通常ユーザの余剰帯域がある場合にフレームを出力する最低優先度のシェーパユーザで,最大帯域までフレームを送信します。

RGQでは,完全最低優先で,LLRLQユーザおよび通常ユーザの余剰帯域がある場合だけフレームを出力します。LLPQ4およびLLPQ1では,LLRLQユーザおよび通常ユーザのLLPQで余剰帯域がある場合に,通常ユーザのLLPQ以外とデフォルトユーザが999対1の比率でフレームを出力します。通常ユーザのシェーパモードがRGQとLLPQ4の二つの場合を例に説明します。

(a) 通常ユーザのシェーパモードがRGQの場合

LLRLQユーザおよびデフォルトユーザと組み合わせた場合の帯域計算例を次の表に示します。ここでは,通常ユーザのシェーパモードをRGQとします。

表19‒11 LLRLQユーザ,RGQ,およびデフォルトユーザの帯域の計算例(回線帯域6Gbit/s,重み均等)

シェーパユーザ

入力帯域

(Gbit/s)

最低帯域

(Gbit/s)

最大帯域

(Gbit/s)

未使用帯域

(Gbit/s)

余剰帯域※1

(Gbit/s)

送信帯域

(Gbit/s)

LLRLQユーザ

1

2

1

(RGQ)通常ユーザ1

2

1

5

5※2

1

2

(RGQ)通常ユーザ2

2

1

5

1

2

デフォルトユーザ

3

5

1※3

1※3

(凡例)−:対象外

注※1

通常ユーザの余剰帯域=通常ユーザに割り当てられる未使用帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計値=5−(1+1)=3(Gbit/s)

通常ユーザ1および2の余剰帯域=3×(1÷(1+1))=1.5(Gbit/s)

通常ユーザへは最低帯域+余剰帯域を割り当てられますが,入力帯域を超えているため,送信帯域=入力帯域となります。

注※2

通常ユーザに割り当てられる未使用帯域=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)=6−1=5(Gbit/s)

注※3

デフォルトユーザに割り当てられる未使用帯域=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)−(通常ユーザの送信帯域合計)=6−1−(2+2)=1(Gbit/s)

この結果,デフォルトユーザは1(Gbit/s)の余剰帯域が使用できますが,最大帯域が0.5(Gbit/s)のため,送信帯域は0.5(Gbit/s)に制限されます。

(b) 通常ユーザのシェーパモードがLLPQ4の場合

LLRLQユーザおよびデフォルトユーザと組み合わせた場合の帯域計算例を次の表に示します。ここでは,通常ユーザのシェーパモードをLLPQ4とします。

表19‒12 LLRLQユーザ,LLPQ4,およびデフォルトユーザの帯域の計算例(回線帯域6Gbit/s,重み均等)

シェーパユーザ

入力帯域

(Gbit/s)

LLPQ

最大帯域

(Gbit/s)

最低帯域

(Gbit/s)

最大帯域

(Gbit/s)

未使用帯域

(Gbit/s)

余剰帯域

(Gbit/s)

送信帯域

(Gbit/s)

LLRLQユーザ

1

2

1

(LLPQ4)通常ユーザ1

0.5

(LLPQ)

1.5

(LLPQ以外)

0.5

1

5

4.5※1

1.5※2

(LLPQ以外)

0.5

(LLPQ)

1.5

(LLPQ以外)

(LLPQ4)通常ユーザ2

3

(LLPQ以外)

0.5

1

5

2.24775※2

2.24775

(LLPQ以外)

デフォルトユーザ

6

5

2※2

0.75225※3

(凡例)−:対象外

注※1

通常ユーザとデフォルトユーザに割り当てられる未使用帯域(A)=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)=6−1=5(Gbit/s)

通常ユーザのLLPQ以外とデフォルトユーザに割り当てられる未使用帯域=上記計算式の(A)−(LLPQユーザの送信帯域)=5−0.5=4.5(Gbit/s)

注※2

通常ユーザのLLPQ以外の余剰帯域=通常ユーザとデフォルトユーザに割り当てられる未使用帯域×999÷1000−各通常ユーザの最低帯域の合計値=4.5×999÷1000−(1+1)=4.4955(Gbit/s)

通常ユーザ1および2の余剰帯域=4.4955×(1÷(1+1))=2.24775(Gbit/s)

通常ユーザ1へはLLPQ帯域+余剰帯域を割り当てられますが,入力帯域を超えているため,送信帯域=入力帯域となります。

注※3

デフォルトユーザに割り当てられる余剰帯域=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)−(通常ユーザの送信帯域合計)=6−1−(2+2.24775)=0.75225(Gbit/s)