トラブルシューティングガイド
DHCPv6リレーエージェントの通信トラブルが発生する要因として,次の5種類が考えられます。
- DHCPv6リレーエージェントのコンフィグレーション設定
- DHCPv6サーバ(以降,サーバ)のコンフィグレーション設定
- DHCPv6クライアント(以降,クライアント)のコンフィグレーション設定
- RAのコンフィグレーション設定
- IPv6ネットワークの通信障害
ここでは,次に示すネットワーク構成を例として,障害部位および原因の切り分け手順を説明します。
図5-5 DHCPv6リレーエージェントのネットワーク構成例
確認ポイント
(図中の記号)パケット内の値 宛先IPv6アドレス 送信元IPv6アドレス 宛先UDPポート番号 送信元UDPポート番号 a. ff02::1:2 クライアントリンクローカルアドレス 547 任意 b. 2001:db8:2::1 2001:db8:2::2 547 546 c. 2001:db8:3::1 2001:db8:3::2 547 546 d. 2001:db8:3::2 2001:db8:3::1 547 任意 e. 2001:db8:2::2 2001:db8:2::1 547 547 f. クライアントリンクローカルアドレス 2001:db8:1::1 546 547
- <この項の構成>
- (1) DHCPv6リレーエージェントの状態および統計情報の確認
- (2) DHCPv6リレーエージェント設定の確認
- (3) RA設定の確認
- (4) DHCPv6リレーエージェントとIPv6マルチキャストを同時に運用している場合の確認
(1) DHCPv6リレーエージェントの状態および統計情報の確認
DHCPv6リレーエージェントの状態および統計情報を確認して,次の表に示す障害解析方法に従って原因を切り分けてください。
表5-2 DHCPv6リレーエージェントの障害解析方法
項番 確認内容・コマンド 対応 1 クライアント側インタフェースで,クライアントから受信したパケット数(DHCPv6 Request Packets CountのReceive Packets)がカウントされているか確認してください。
- show ipv6 dhcp relay statistics
カウントされている場合は,項番2へ。 カウントされていない場合は,次の内容を確認してください。
- 「(2) DHCPv6リレーエージェント設定の確認」を参照して,DHCPv6パケットの転送先が設定されていることを確認してください。
- クライアントを直接接続している場合は,RAの設定を確認してください。手順については,「(3) RA設定の確認」を参照してください。
- 本装置のクライアント側ネットワークセグメント(図中の確認ポイントa.)について確認してください。手順については,「5.2.1 通信できない,または切断されている」を参照してください。
- 該当クライアントの要因切り分け手順に従って,コンフィグレーションを確認してください。
2 ホップ数が最大数以上のため廃棄されたパケット数(DHCPv6 Error Packets CountのHops Over)がカウントされているか確認してください。
- show ipv6 dhcp relay statistics
カウントされている場合は,「(2) DHCPv6リレーエージェント設定の確認」を参照して,DHCPv6パケットの最大ホップ数を確認してください。 カウントされていない場合は,項番3へ。 3 クライアント側インタフェースの転送先で,サーバ(転送先)宛てへの送信に成功したパケット数(DHCPv6 Request Packets CountのSend Packets)がカウントされているか確認してください。
- show ipv6 dhcp relay statistics
カウントされている場合は,項番4へ。 カウントされていない場合は,次の内容を確認してください。
- 「(2) DHCPv6リレーエージェント設定の確認」を参照して,DHCPv6パケットの転送先が正しいことを確認してください。
- 図中の確認ポイントb.およびc.について確認してください。手順については,「5.2.1 通信できない,または切断されている」を参照してください。
4 サーバから受信したパケット数(DHCPv6 Reply Packets CountのReceive Packets)がカウントされているか確認してください。
- show ipv6 dhcp relay statistics
カウントされている場合は,項番5へ。 カウントされていない場合は,次の内容を確認してください。
- 「(2) DHCPv6リレーエージェント設定の確認」を参照して,DHCPv6パケットの転送先が正しいことを確認してください。
- 図中の確認ポイントd.およびe.について確認してください。手順については,「5.2.1 通信できない,または切断されている」を参照してください。
- 該当サーバの要因切り分け手順に従ってコンフィグレーションを確認して,ネットワークセグメントが一致しているかなどを確認してください。
5 クライアント宛てへの送信に成功したパケット数(DHCPv6 Reply Packets CountのSend Packets)がカウントされているか確認してください。
- show ipv6 dhcp relay statistics
カウントされている場合は,次の内容を確認してください。
- クライアントを直接接続している場合は,RAの設定を確認してください。手順については,「(3) RA設定の確認」を参照してください。
- 該当サーバの要因切り分け手順に従ってコンフィグレーションを確認して,割り当てるIPv6アドレスが十分にあるかなどを確認してください。
- 該当クライアントの要因切り分け手順に従って,コンフィグレーションを確認してください。
カウントされていない場合は,項番6へ。 6 バインディング(IA_PD)エントリ数が最大数を超えたため破棄されたパケット数(DHCPv6 Error Packets CountのLease Prefix Over)がカウントされているか確認してください。
- show ipv6 dhcp relay statistics
カウントされている場合は,アドレス割り当て数(IA_PD)が本装置の最大数を超えないように,ネットワーク構成を見直してください。 カウントされていない場合は,次の内容を確認してください。
- 本装置のクライアント側ネットワークセグメント(図中の確認ポイントf.)について確認してください。手順については,「5.2.1 通信できない,または切断されている」を参照してください。
- 該当クライアントの要因切り分け手順に従って,コンフィグレーションを確認してください。
(2) DHCPv6リレーエージェント設定の確認
DHCPv6リレーエージェントのコンフィグレーション設定ミスによって,クライアントにIPv6アドレスが割り当てられないという原因が考えられます。DHCPv6リレーエージェントのコンフィグレーションを確認する手順を次に示します。
- クライアント側のIPv6インタフェースに,DHCPv6パケットの転送先が設定(コンフィグレーションコマンドipv6 dhcp relay destination)されていることを確認してください。
- DHCPv6パケットの転送先として設定(コンフィグレーションコマンドipv6 dhcp relay destination)されている,サーバもしくはDHCPv6リレーエージェントのIPv6アドレス,またはIPv6インタフェースが,ネットワーク構成と一致していることを確認してください。
- DHCPv6パケットの最大ホップ数が,本装置とクライアント間のDHCPv6リレーエージェントの数よりも大きな値に設定(コンフィグレーションコマンドipv6 dhcp relay maximum-hop-count)されていることを確認してください。
(3) RA設定の確認
クライアントを直接接続している場合,RAのコンフィグレーション設定ミスによってクライアントにIPv6アドレスが割り当てられないという原因が考えられます。RAのコンフィグレーションを確認する手順を次に示します。
- クライアント側のIPv6インタフェースに,アドレス自動管理設定フラグを有効にする設定(コンフィグレーションコマンドipv6 nd managed-config-flag)がされていることを確認してください。アドレス自動管理設定フラグとは,RAによるアドレス自動設定とは別に,DHCPv6などのRA以外の手段によってIPv6アドレスを端末に自動で設定させるフラグです。
なお,DHCPv6によってIPv6アドレス以外の情報だけを取得する場合は,上記のコンフィグレーションが設定されていないことを確認してください。
- クライアント側のIPv6インタフェースに,アドレス以外情報設定フラグを有効にする設定(コンフィグレーションコマンドipv6 nd other-config-flag)がされていることを確認してください。アドレス以外情報設定フラグとは,DHCPv6などのRA以外の手段によってIPv6アドレス以外の情報を端末に自動で取得させるフラグです。
なお,DHCPv6によってIPv6アドレスだけを割り当てる場合は,上記のコンフィグレーションが設定されていないことを確認してください。
(4) DHCPv6リレーエージェントとIPv6マルチキャストを同時に運用している場合の確認
本装置でDHCPv6リレーエージェントとIPv6マルチキャストを同時に使用する場合,DHCPv6リレーエージェントの転送先として各サーバを個別に設定していることを確認してください。もし,DHCPv6パケットの転送先として全サーバ宛てを指定しているときは,次の点を確認してください。
- 本装置の対向ルータ側で,本装置と接続するIPv6インタフェースのリンクローカルアドレスをIPv6インタフェース内の最大値に設定して,IPv6マルチキャストでの中継代表ルータ(DR)になるようにしているか
なお,詳細な設定方法は対向ルータのマニュアルを参照してください。
- 対向ルータがランデブーポイントとなるように,本装置および対向ルータのIPv6マルチキャストが設定されているか
All Rights Reserved, Copyright(C), 2014, 2018, ALAXALA Networks, Corp.