解説書 Vol.2

[目次][用語][索引][前へ][次へ]


6.8.3 自動切り戻し抑止

本装置では,自動切り戻しを抑止する設定ができます。切り戻し抑止には,次の2通りの方法があります。

<この項の構成>
(1) PREEMPTモードによる抑止
(2) PREEMPTモード OFFによるマスタ状態遷移の時間監視(preempt-mode-off-timer)
(3) 抑止タイマ(Master Transition Delay)による抑止

(1) PREEMPTモードによる抑止

自動切り戻しさせたくない場合には,PREEMPTモードをOFFに設定してください。PREEMPTモードをOFFに設定すれば,バックアップ状態のルータが自ルータよりも優先度の低いルータがマスタ状態になっていることを検出しても,マスタ状態へ変化させることはありません。

ただし,マスタ状態のルータの障害などによって,一定時間(ADVERTISEMENT送信間隔×3+1秒)ADVERTISEMENTパケットを受信しなかった場合は,バックアップ状態からマスタ状態に遷移します。

(2) PREEMPTモード OFFによるマスタ状態遷移の時間監視(preempt-mode-off-timer)

自動切り戻し抑止中状態(PREEMPTモード OFF)のバックアップ中にマスタ状態のルータからADVERTISEMENTパケットを受信しなかった場合に,切り戻しを遅延させたいときに使用してください。マスタ装置のダウンを検出し,本タイマ値の経過後,マスタ状態に遷移します。

切り戻し時間は次のようになります。

(ADVERTISEMENT送信間隔×3+1) (秒)+本タイマ値(秒)

コンフィグレーションの設定によって,1〜65535秒の範囲で設定できます。

本タイマ監視中に再度,自ルータより優先度の低いADVERTISEMENTパケットを受信した場合は,タイマ監視を中断し,バックアップ状態を維持します。また,自ルータより優先度の高いADVERTISEMENTパケットを受信した場合も,タイマ監視を中断し,バックアップ状態を維持します。

また,二重化構成で,運用系と待機系でタイマ時間の同期は行いません。このため,本体タイマ監視中に系切替が発生した場合,新運用系で最初からタイマ監視を行います。

自動切り戻し抑止中状態に本タイマを設定した場合,システム立ち上げ時に対向装置が存在しないと,タイマ監視によるバックアップ状態を維持します。また,本来マスタとなるべき装置とバックアップになるべき装置に,自動切り戻し抑止中状態で本タイマを設定し,同時にシステムを立ち上げるとダブルバックアップになります。この場合,swap vrrpコマンドでマスタ状態に遷移させてください。

本タイマを指定したときの切り戻し時間を次に示します。

図6-13 本タイマを指定したときの切り戻し時間

[図データ]

表6-2 自動切り戻し抑止状態で本タイマを使用した場合と,使用しない場合の状態遷移」に自動切り戻し抑止状態で本タイマを使用した場合と,使用しない場合の状態遷移を示します。

表6-2 自動切り戻し抑止状態で本タイマを使用した場合と,使用しない場合の状態遷移

イベント 自装置 Backup状態
preempt-mode-off
preempt-mode-off-timerあり preempt-mode-off-timerなし
自優先度より高い
ADVERTISEMENT受信
Backup状態のまま Backup状態のまま
自優先度より低い
ADVERTISEMENT受信
Backup状態のまま Backup状態のまま
ADVERTISEMENT
未受信
Backup状態のまま Master状態に遷移
preempt-mode-off-timer
タイムアウト
Master状態に遷移

(凡例)−:該当なし


なお,本タイマは,自動切り戻し抑止中のマスタ装置に障害が発生し,回復した場合に,本装置間にあるスイッチなどの状態によって,対向装置からADVERTISEMENTパケットを一時的に受信できないとき,マスタ−バックアップの切り替えが発生しないようにするためのタイマです。

(3) 抑止タイマ(Master Transition Delay)による抑止

本機能は,マスタ装置が故障などによってバックアップ状態になった場合に,自動切り戻し(preempt mode on)でマスタ状態に遷移する時間を,任意の時間遅延させる機能です。この機能によって,自動切り戻し(preempt-mode-on)でマスタ−バックアップの切り替えが頻繁に発生することを防ぐことができます。

図6-14 抑止タイマによるマスタ状態遷移

[図データ]

自動切り戻しの開始を任意の時間遅延させたい場合には,抑止タイマを設定してください。コンフィグレーションの設定によって1〜65535秒の範囲で設定可能です。

本タイマ値は,自動切り戻し要因を検出してから自動切り戻し処理の開始時間を遅らせるものであり,状態が完全に切り変わるまでには,設定した時間プラス数秒の時間を要します。

どちらの方法についても,自装置がIPアドレスの所有者(優先度255)の場合は,切り戻しの抑止は有効になりません。また,マスタ装置が故障などによって運用不可状態になったことを検出し,かつ残った装置の中で自装置の優先度が最も高いことを検出した場合には,マスタ状態に遷移します。

[目次][前へ][次へ]


[他社商品名称に関する表示]

Copyright (c)2005, 2011, ALAXALA Networks Corporation. All rights reserved.