解説書 Vol.1
- <この節の構成>
- (1) 他機能との同時動作に関する注意事項
- (2) IPマルチパス
- (3) イーサネット回線
- (4) MTU
- (5) unnumberedインタフェース使用時注意事項
- (6) LDPプロトコルタイマ値
- (7) CP輻輳または回線最大帯域のトラフィック注入によるLDPセッション断
- (8) static LSPに関する注意事項
- (9) LSPの設定があってもIPパケットが転送されるケース
- (10) OSPFグローバル情報を変更したときの注意事項
- (11) POS回線使用時の注意事項
- (12) 運用コマンド実行時の注意事項
- (13) ラベル割り当てに関する注意事項
- (14) ラベル枯渇時の注意事項
- (15) 系切替時の注意事項
- (16) mpls noまたはコンフィグレーション削除に関する注意事項
- (17) LDPプロトコルLabel Mapping Messageに関する注意事項
(1) 他機能との同時動作に関する注意事項
(a) IPマルチキャスト機能
MPLS機能を使用するルータでは,IPマルチキャスト機能は利用できません。
(b) sFlow/Netflow
MPLS機能を使用するルータでは,sFlow機能およびNetflow機能は利用できません。
(c) DHCP
MPLSアクセス回線では,DHCPサーバ機能は利用できません。
(d) VRRP
VRRP機能と,IP-VPN機能およびL2-VPN(EoMPLS)機能を同一装置内で同時に使用できません。
MPLS網がIPマルチパス設定されている場合,設定された複数のパスのうち一つを固定的に選択して中継処理に使用します。
(3) イーサネット回線
- MPLSバックボーン回線として使用するポートはEthernetV2プロトコルだけ利用できます。
- MPLSバックボーン回線として使用するポートでは,Tag-VLAN機能は使用できません。
- イーサネットによる接続形態は,ポイント-ポイント型でルータ同士を接続する形態だけになります。イーサネット構成例を「図17-11 イーサネット構成例」,「図17-12 LANスイッチ経由でのイーサネット構成例」のようにイーサネット1ポートに対して一つのLDPセッションだけを設定できます。また,「図17-13 設定できない構成例」のように,1ポートに対して複数のLDPセッションを構築するような設定はできません。
図17-11 イーサネット構成例
図17-12 LANスイッチ経由でのイーサネット構成例
図17-13 設定できない構成例
(4) MTU
MPLSを使用する場合,Shimヘッダの付加によってフレーム長が長くなります。接続先ルータまたは中間の機器でMTU(最大中継パケット長)の設定を変更する必要がある場合がありますのでご注意ください。MPLSパケットフォーマットについては,「図17-3 MPLSのパケットフォーマット」を参照してください。
(a) MTU設定不正時の確認方法
MTU設定不正の場合,MPLS網を通過しないフレームがあるおそれがあります(すべてが通過しないわけではありません)。その場合は,次のコマンドによってフレーム廃棄数を確認してください。
- コマンド(物理回線のNIF No,Line Noを指定します)
show interfaces nif <NIF No.> line <Line No.>
- 参照する項目
Long Frames
(b) Path MTU機能に関する注意事項
オプションライセンス【OP-MPLS】が設定されている場合,IPv4 Path MTU機能は無効になります。
(c) RMイーサネットインタフェースに関する注意事項
RMイーサネットインタフェースに直接または間接的に接続されているネットワーク上の端末からMPLS経路上の宛先へのIP通信(FTPなど)ができないことがあります。このような場合,端末のMTU値を,出力インタフェースのMTU長よりも8バイト小さい値で設定してください。
(5) unnumberedインタフェース使用時注意事項
- unnumberedインタフェースではLDPは動作しません。
- unnumberedインタフェースで使用しているIPアドレスを持つ論理ポートでLDPを動作させることはできません。
LDPプロトコルのタイマには,LDPセッション維持用のLDPセッションキープアライブタイマ(LDP Session Keep Alive Timer)と,ハローの隣接関係維持用のLDPリンクハローホールドタイマ(LDP Link Hello Hold Timer)があります。
LDPセッションキープアライブタイマ値は,デフォルト120秒です。このタイマ値はコンフィグレーションで変更できます。ただし,120未満の値を設定すると,LDPセッション断が発生しやすくなります。
LDPリンクハローホールドタイマ値は,デフォルト15秒です。このタイマ値はコンフィグレーションで変更できます。
(7) CP輻輳または回線最大帯域のトラフィック注入によるLDPセッション断
CP輻輳が発生した場合,またはバックボーン回線へ最大帯域のトラフィック注入が発生した場合,LDPセッション維持ができなくなりLDPセッション断が発生する場合があります。
(8) static LSPに関する注意事項
(a) Ingressで出力ラベルをImplicit NULLに指定した場合の注意事項
本装置をIngressで動作させて,出力ラベルをImplicit NULLラベルにした場合は以下の動作となります。
- 非VPN通信は,指定したnexthopには従わず,IPルーティングテーブルに従って中継されます。宛先がIPルーティングテーブルに存在しない場合,中継されません。
- IP-VPN通信およびL2-VPN通信は,指定したnexthopを選択して中継されます。
(b) static LSPおよびstatic vcのコンフィグレーションに関する注意事項
static_lspコンフィグレーションの,destinationまたはin_labelを複数のLSPに対して入れ替える操作を行う際は,削除後,追加操作を行う前に,applyコマンドまたはsaveコマンドでランニングコンフィグレーションへ反映させてください。また,l2transportコンフィグレーションの,in_labelおよびaccess_lineを複数のl2transportに対して入れ替え操作を行う際も同様です。誤操作を防止するため,destination, in_labelおよびaccess_lineを削除した際にはapplyコマンドまたはsaveコマンドを実施することを推奨します。
- (例)
- 変更前コンフィグレーション
mpls yes static_lsp ingress_lsp 1 type routing_based destination 192.168.0.0/24 primary out_label 16 nexthop 10.0.0.2 ingress_lsp 2 type routing_based destination 192.168.1.0/24 primary out_label 17 nexthop 10.0.0.2- 入力例
[mpls static_lsp] (config)# ingress_lsp 1 type routing_based [mpls static_lsp ingress_lsp 1 type routing_based] !!(config)# delete destination [mpls static_lsp ingress_lsp 1 type routing_based] !!(config)# exit [mpls static_lsp] !!(config)# ingress_lsp 2 type routing_based [mpls static_lsp ingress_lsp 2 type routing_based] !!(config)# delete destination [mpls static_lsp ingress_lsp 2 type routing_based] !!(config)# apply [mpls static_lsp ingress_lsp 2 type routing_based] !(config)# destination 192.168.0.0/24 [mpls static_lsp ingress_lsp 2 type routing_based] !!(config)# exit [mpls static_lsp] !!(config)# ingress_lsp 1 type routing_based [mpls static_lsp ingress_lsp 1 type routing_based] !!(config)# destination 192.168.1.0/24 [mpls static_lsp ingress_lsp 1 type routing_based] !!(config)# save(c) 監視インタフェースに関する注意事項
IP-VPNのアクセス回線をStatic LSPの監視インタフェースに指定したとき,Global Repair機能は動作しません。
(9) LSPの設定があってもIPパケットが転送されるケース
LSPが設定されているのにIPパケットがLSPで転送または破棄されないでIP転送されるケースがあります。
- IPパケットの宛先アドレスがLSPのFECと一致しても,最長一致するIP経路が存在する場合,そのIPパケットはそのIP経路情報に従いIP転送されます。
MPLS情報を定義している状態でオンライン中にOSPFグローバル情報を変更した場合は,LDPセッションがダウンしてLSPが切断される場合があります。
本装置のMPLSコンフィグレーションは装置単位の設定となります。本装置のMPLSコンフィグレーションを有効にした場合,全POS回線でMPLSCPを動作させます。したがって,MPLS機能を使用したくないPOS回線でもMPLSCPが動作します。本装置のMPLSコンフィグレーションが有効かつ,接続相手のMPLSコンフィグレーションが無効またはMPLS機能をサポートしていない場合,以下のメッセージが出力されますが,該当POS回線上でMPLS機能を使用しないときは無視してください。
"Peer system refused the MPLSCP protocol. Check the peer's MPLSCP configuration."
すでにMPLS情報を定義して運用している状態で運用コマンドのrestart unicastまたはdump protocols mplsコマンドを連続実行した場合,LDPセッションがダウンしてLSPが切断されることがあります。LDPセッションのダウンを避けるためには,次に示す方法で運用コマンドを実行してください。
- restart unicastコマンドの入力後,show rm cpuコマンドでCPU使用率が100%未満になっていることを確認してから,次のrestart unicastコマンドを実行してください。
- dump protocols mplsコマンドの入力後,MCへの書き込みが完了したことを確認してから次のdump protocols mplsコマンドを実行してください。書き込みにかかる時間は,経路情報などの装置の状態が変化していない場合には約10秒程度で,状態変化が起きている場合にはこれより長くなります。
- copy mcコマンド,synchronizeコマンド,およびcpコマンド実行中に次のコマンドを実行した場合,または次のコマンド実行中にcopy mcコマンド,synchronizeコマンド,およびcpコマンドを実行した場合,LDPセッションがダウンしてLSPが切断されることがあります。copy mcコマンド,synchronizeコマンド,およびcpコマンドが終了したことを確認のうえ入力してください。
- show mpls ldp
- clear mpls ldp
- show mpls forwarding-table
- show mpls ldp-binding
- dump protocols mpls
- show mpls l2transport
(13) ラベル割り当てに関する注意事項
次を送信先とする経路はラベル割り当ての対象となりません。
- Nullインタフェース
- rmEthernetインタフェース
- トンネルインタフェース
- ローカルアドレス
(14) ラベル枯渇時の注意事項
ラベル枯渇が発生すると新たなラベルを割り当てられないため,LSPを作成できなくなり,運用コマンドでも一部のエントリが表示されないなどの問題が発生します。ラベル枯渇が発生したことを確認するには,show loggingコマンドで次のメッセージが出力されていることを確認してください。
"mpls:LSP setup failed, because lack of label occurred."ラベル枯渇が発生した場合の対応方法は,「メッセージ・ログレファレンス 2.5.1 MPLS」の上記メッセージ欄を参照してください。
(15) 系切替時の注意事項
swap bcuコマンドの入力後,3分以内にMPLSコンフィグレーションを追加,変更または削除すると,スタティックLSPを使用した通信はいったん途切れることがあります。
(16) mpls noまたはコンフィグレーション削除に関する注意事項
二重化構成でpolicy_basedのstatic_lspを使用している状態で,mplsコンフィグレーションをdelete mplsコマンドによって削除,またはyesからnoに変更した後,30秒以内に系切替が発生すると,policy_based static_lsp通信が継続してしまうケースがあります。30秒以内の系切替発生は,show logging standbyコマンドで確認できます。本現象が発生した場合は,次の手順を実行してください。
- 入力例
(config)# (config)# mpls yes [mpls] !!(config)# apply [mpls] !(config)# mpls no [mpls] !!(config)# apply [mpls] !(config)# save [mpls] (config)#
(17) LDPプロトコルLabel Mapping Messageに関する注意事項
LDP Label Mapping Message中に複数のFEC Elementが集約されていた場合,本装置では最後のElementに格納されていたFECだけを有効なものとして扱います。
本装置と接続する対向装置からFECが集約されたメッセージを広告された場合,この理由によって一部のFECに対するLSPが確立しません。
本装置と接続する対向装置には,FECを集約して広告しないように設定してください。
なお,本装置同士を接続する場合には,この問題は発生しません。
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