解説書 Vol.1

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14.5.2 経路選択アルゴリズム

OSPFv3では,経路選択のアルゴリズムとして,SPF(Shortest Path First)アルゴリズムを使用します。各ルータには,OSPFv3が動作しているすべてのルータと,ルータ−ルータ間およびルータ−ネットワーク間のすべての接続から成るデータベースがあります。このデータベースから,ルータおよびネットワークを頂点とし,ルータ−ルータ間およびルータ−ネットワーク間の接続を辺とするトポロジを構成します。このトポロジにSPFアルゴリズムを適用して最短経路木を生成し,これを基に各頂点への経路を決定します。

<この項の構成>
(1) SPFアルゴリズムの適用例
(2) イコールコストマルチパス

(1) SPFアルゴリズムの適用例

ネットワーク構成の例を次の図に示します。

図14-14 ネットワーク構成例

[図データ]

この図のネットワーク上でOSPFv3を使用した場合のトポロジとコストの設定例を次の図に示します。

図14-15 トポロジとコストの設定例

[図データ]

コスト値は,パケット送信方向により異なってもかまいません。「図14-15 トポロジとコストの設定例」のルータ2−ルータ4間のポイント−ポイント型接続では,ルータ2からルータ4へはコスト9,ルータ4からルータ2へはコスト8となっています。ルータ−ネットワーク間の接続では,ルータからネットワークへの接続だけ,コストを設定できます。ネットワークからルータへのコストは常に0です。

図14-15 トポロジとコストの設定例」のトポロジを基に,ルータ1を根として生成した最短経路木を「図14-16 ルータ1を根とする最短木」に示します。ある宛先へのコストは,経路が経由す各インタフェースの送信コストの合計となります。例えば,ルータ1からネットワーク2宛ての経路のコストは,6(ルータ1−ネットワーク1)+0(ネットワーク1−ルータ3)+2(ルータ3−ネットワーク2)=8となります。

図14-16 ルータ1を根とする最短木

[図データ]

(a) ルータID,ネットワークアドレスについての注意事項

OSPFv3ではネットワークのトポロジを構築するに当たり,ルータの識別にルータIDを使用します。したがって,ネットワークの設計時に異なるルータに同じ値のルータIDを定義した場合,正確な経路選択ができなくなります。このためネットワーク設計時には,各ルータに重複しないルータIDを割り当ててください。

(2) イコールコストマルチパス

ルータ2を根として生成した最短経路木を「図14-17 ルータ2を根とする最短木」に示します。ネットワーク2またはルータ5を宛先とした場合,ネットワーク1経由の経路とルータ4経由の経路については,コストが同じになります。

図14-17 ルータ2を根とする最短木

[図データ]

OSPFv3では,ある2点間に最短コストの経路が複数存在する場合,この複数の経路をイコールコストマルチパスと呼びます。

OSPFv3では,自ルータからある宛先についてイコールコストマルチパスが存在し,次の転送先ルータが複数ある場合,その宛先へのパケットの転送を複数のネクストホップへ分散することによって,トラフィックを分散してもよいことになっています。

本装置では,コンフィグレーションコマンドospf6のmultipathサブコマンドを定義することによって,複数のネクストホップを生成できます。この複数のネクストホップ(マルチパス)数は,コンフィグレーションコマンドoptionsのmax-pathsパラメータに従います。multipathサブコマンドを定義しなかった場合,ルータIDが最小であるネクストホップアドレスを選択します。同一ルータIDのネクストホップアドレスが複数ある場合,Helloパケットで最小のインタフェースIDを広告しているネクストホップアドレスを選択します。

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