解説書 Vol.2
優先度決定には,検出したフローに対して明示的に優先度を指定する方法,DSCPに基づく優先度を指定する方法(DSCPマッピング),およびアグリゲートキュー番号指定の3種類があります。この節で説明する優先度決定の位置づけを次の図に示します。
- <この節の構成>
- (1) フローに基づく優先度決定
- (2) DSCPマッピング
- (3) アグリゲートキュー番号指定【AX7800S】
コンフィグレーションのフロー情報によって,パケットに対する優先度を決定できます。優先度には,どのキューにフローをキューイングするかを示す出力優先度と,廃棄されやすさを示すキューイング優先度の二つがあります。出力優先度は数字が大きいほど優先度が高く,キューイング優先度は数字が大きいほど廃棄されにくいことを示します。
なお,一つの動作指定には,フローに基づく優先度指定またはDSCPマッピングのどちらかを選択して設定します。
- フローを受信または送信する際,「表1-13 出力優先度とキューイング優先度の決定について」に従って,出力優先度およびキューイング優先度が決定します。ただし,本装置が生成するパケットは「表1-13 出力優先度とキューイング優先度の決定について」の項番3に従って優先度が決定します。
- キューイング優先度は,「表1-13 出力優先度とキューイング優先度の決定について」で決定したキューイング優先度を基に「表1-22 決定したキューイング優先度とNIF種別による対応キューイング優先度【AX7800S】」および「表1-24 決定したキューイング優先度とNIF種別による対応キューイング優先度【AX5400S】」に従って,NIF種別ごとの対応キューイング優先度を決定します。
表1-13 出力優先度とキューイング優先度の決定について
項番 フローの受信側の動作 フローの送信側の動作 出力優先度とパケットを積むキュー番号の決定方法 キューイング優先度の決定方法 1 フロー検出し,コンフィグレーションのフロー情報で出力優先度,キューイング優先度の指定あり フロー検出し,コンフィグレーションのフロー情報で出力優先度,キューイング優先度の指定あり
- 送信側でフロー検出したフロー情報に指定した出力優先度に従う。※1
- 1.で決定した出力優先度を基に「表1-19 送信側で決定した出力優先度に対応する出力先インタフェースのキュー番号」に従い,キュー番号が決定する。※2
送信側でフロー検出したフロー情報に指定したキューイング優先度に従う。※2 フロー検出し,コンフィグレーションのフロー情報で出力優先度,キューイング優先度の指定がない
- 「表1-14 出力優先度,キューイング優先の指定無しの場合の出力優先度」の項番2に従い,出力優先度が決定する。※2
- 1.で決定した出力優先度が積まれるキュー番号となる。
送信側でキューイング優先度の明示的な指定がないため,キューイング優先度は4に決定する。※2 フロー検出されない(どのコンフィグレーションのフロー情報にも一致しない)
- 受信側でフロー検出したフロー情報に指定した出力優先度に従う。
- 1.で決定した出力優先度を基に「表1-18 受信側で決定した出力優先度に対応する出力先インタフェースのキュー番号」に従い,キュー番号が決定する。※3
受信側でフロー検出したフロー情報に指定したキューイング優先度に従う。※3 2 フロー検出し,コンフィグレーションのフロー情報で出力優先度,キューイング優先度の指定がない フロー検出し,コンフィグレーションのフロー情報で出力優先度,キューイング優先度の指定あり
- 送信側でフロー検出したフロー情報に指定した出力優先度に従う。
- 1.で決定した出力優先度を基に「表1-19 送信側で決定した出力優先度に対応する出力先インタフェースのキュー番号」に従い,キュー番号が決定する。※2
送信側でフロー検出したフロー情報に指定したキューイング優先度に従う。※2 フロー検出し,コンフィグレーションのフロー情報で出力優先度,キューイング優先度の指定がない
- 「表1-14 出力優先度,キューイング優先の指定無しの場合の出力優先度」の項番2に従い,出力優先度が決定する。※2
- 1.で決定した出力優先度が積まれるキュー番号となる。
送信側でキューイング優先度の明示的な指定がないため,キューイング優先度は4に決定する。※3 フロー検出されない(どのコンフィグレーションのフロー情報にも一致しない)
- 「表1-14 出力優先度,キューイング優先の指定無しの場合の出力優先度」の項番1に従い,出力優先度が決定する。※3
- 1.で決定した出力優先度が積まれるキュー番号となる。
受信側でキューイング優先度の明示的な指定がないため,キューイング優先度は4に決定する。※3 3 フロー検出されない(どのコンフィグレーションのフロー情報にも一致しない) フロー検出し,コンフィグレーションのフロー情報で出力優先度,キューイング優先度の指定あり
- 送信側でフロー検出したフロー情報に指定した出力優先度に従う。※2
- 1.で決定した出力優先度を基に「表1-19 送信側で決定した出力優先度に対応する出力先インタフェースのキュー番号」に従い,キュー番号が決定する。※2
送信側でフロー検出したフロー情報に指定したキューイング優先度に従う。※2 フロー検出し,コンフィグレーションのフロー情報で出力優先度,キューイング優先度の指定がない
- 「表1-14 出力優先度,キューイング優先の指定無しの場合の出力優先度」の項番2に従い,出力優先度が決定する。※2
- 1.で決定した出力優先度が積まれるキュー番号となる。
送信側でキューイング優先度の明示的な指定がないため,キューイング優先度は4に決定する。※2 フロー検出されない(どのコンフィグレーションのフロー情報にも一致しない)
- 「表1-15 デフォルトの出力優先度とキューイング優先度」に従い,出力優先度が決定する。※3
- 1.で決定した出力優先度が積まれるキュー番号となる。
「表1-15 デフォルトの出力優先度とキューイング優先度」に従い,キューイング優先度が決定する。※3
- 注※1
- 出力側にコンフィグレーションのフロー情報を指定し,かつ出力先インタフェースのスケジューリング種別がLLQ+3WFQまたは階層化シェーパ機能を使用している場合は,ポートリストの指定で出力優先度を1〜4に指定してください。
- 注※2
- ディストリビューション送信キューがあるNIFでは,決定した出力優先度およびキューイング優先度は送信側のディストリビューション送信キュー,送信キューで動作します。
- NIF種別による優先度指定の詳細については,「1.9 NIF種別とQoS制御機能との対応」を参照してください。また,送信側のディストリビューション送信キューおよび送信キューについては,「図1-20 レガシーシェーパ(ディストリビューションスケジューリング使用)の概念」を参照してください。
- 注※3
- ディストリビューション送信キューがあるNIFでは,決定した出力優先度およびキューイング優先度は送信側のディストリビューション送信キューだけで動作します。
表1-14 出力優先度,キューイング優先の指定無しの場合の出力優先度
項番 完全優先,ラウンドロビン LLQ+3WFQ 階層化シェーパ
【AX7800S】8キュー 4キュー 2キュー 1 4 2 1 2 2 2 4 2 1 2 2 表1-15 デフォルトの出力優先度とキューイング優先度
パケット種別 出力優先度 キューイング優先度 完全優先,ラウンドロビン LLQ+3WFQ 階層化シェーパ
【AX7800S】8キュー 4キュー 2キュー 本装置が生成するARP・ルーティングプロトコル・SNMPパケット(本装置が生成するエラー通知パケット(ICMP,ICMPv6)を除く)。詳細を「表1-16 本装置が生成するIPv4パケット」,「表1-17 本装置が生成するIPv6パケット」に示します。 8 4 2 4 4 4 本装置が中継するパケット 4 2 1 2 2 4 本装置が生成するエラー通知パケット(ICMP,ICMPv6) 4 2 1 2 2 1 本装置が生成するIPv4パケットを次の表に示します。
パケット名称 プロトコル(番号) ポート番号 タイプ番号 備考 Echo Reply ICMP(1) − 0 エコー応答(ping) Echo − 8 エコー要求(ping) Membership Query IGMP(2) − 17※3 メンバーシップ要求 Version1 Membership Report IGMP(2) − 18※3 バージョン1のメンバーシップ報告 ftp TCP(6) 20,21※1 − − telnet 23※1 − − time 37※1 − − bgp 179※1 − − rlogin 513※1 − − smtp 25 − − TACACS 49 − コンフィグレーションでポート番号が変更可能 echo UDP(17) 7※2 − − time 37※2 − − bootps/bootpc 67,68※2 − DHCP ntp 123※2 − − snmp 161※2 − − sysylog 514※2 − − rip 520※2 − − RADIUS 1812,1813 − コンフィグレーションでポート番号が変更可能 ospf 89 − − − pim 103 − − − vrrp 112 − − − (凡例) −:該当しない
- 注※1
- 送信元ポート番号および宛先ポート番号のどちらかがこのポート番号です。
- 注※2
- 送信元ポート番号がこのポート番号です。
- 注※3
- IGMPバージョンとIGMPタイプを合わせたものがこのタイプ番号です。
本装置が生成するIPv6パケットを次の表に示します。
表1-17 本装置が生成するIPv6パケット
パケット名称 プロトコル(番号) ポート番号 タイプ番号 備考 Echo Reply ICMPv6(58) − 129 エコー応答(ping) Echo − 128 エコー要求(ping) Multicast Listner Query − 130 IPv6マルチキャストグループの参加問い合わせ RA − 134 − NDP − 135,136 − Redirect − 137 − ftp TCP(6) 20,21※1 − − telnet 23※1 − − time 37※1 − − TACACS 49 − コンフィグレーションでポート番号の変更可能 bgp4+ 179※1 − − rlogin 513※1 − − echo UDP(17) 7※2 − − time 37※2 − − ntp 123※2 − − snmp 161※2 − − sysylog 514※2 − − ripng 521※2 − − RADIUS 1812,1813 − コンフィグレーションでポート番号の変更可能 ospfv3 89 − − − pim 103 − − − vrrp 112 − − − (凡例) −:該当しない
- 注※1
- 送信元ポート番号および宛先ポート番号のどちらかがこのポート番号です。
- 注※2
- 宛先ポート番号がこのポート番号です。
表1-18 受信側で決定した出力優先度に対応する出力先インタフェースのキュー番号
スケジューリング種別 完全優先,ラウンドロビン LLQ+3WFQ キュー数 8 4 2 4 出力優先度 1 1 1 1 1 2 2 3 3 2 2 4 4 5 5 3 2 3 6 6 7 7 4 4 8 8 表1-19 送信側で決定した出力優先度に対応する出力先インタフェースのキュー番号
スケジューリング種別 完全優先,ラウンドロビン LLQ+3WFQ 階層化シェーパ
【AX7800S】キュー数 8 4 2 4 4 出力優先度 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 3 3 2 3 3 4 4 4 4 5 5 3 2 6 6 7 7 4 8 8
DSCP値に基づき,フローの出力優先度とキューイング優先度を決定します。DSCPはTOSフィールドまたはトラフィッククラスフィールドの上位6ビットのことです。なお,一つの動作指定には,フローに基づく優先度指定またはDSCPマッピングのどちらかを選択して設定します。
インタフェース名指定の出力側(Outbound)にDSCPマッピングを指定した場合,出力先インタフェースのスケジューリングにLLQ+3WFQを指定しないでください。
DSCP値に対応する出力優先度とキューイング優先度を次の表に示します。
なお,この表に基づいて決定した出力優先度が積まれるキュー番号となります。
例えば,検出したフローのDSCP値が7の場合,出力優先度は1,キューイング優先度は4と自動で決まります。また,検出したフローのDSCP値が10の場合,出力優先度は2,キューイング優先度は4に自動で決まります。
表1-20 DSCP値に対応する出力優先度とキューイング優先度
DSCP値 出力優先度 キューイング優先度 8キュー 4キュー,
LLQ+3WFQ,
階層化シェーパ【AX7800S】2キュー 0〜7 1 1 1 4 8〜9 2 1 10〜11 4 12〜13 3 14〜15 2 16〜17 3 2 1 18〜19 4 20〜21 3 22〜23 2 24〜25 4 1 26〜27 4 28〜29 3 30〜31 2 32〜33 5 3 2 1 34〜35 4 36〜37 3 38〜39 2 40〜47 6 1 48〜55 7 4 1 56〜63 8 1 キューイング優先度については,「表1-20 DSCP値に対応する出力優先度とキューイング優先度」で決定したキューイング優先度を基に「表1-22 決定したキューイング優先度とNIF種別による対応キューイング優先度【AX7800S】」および「表1-24 決定したキューイング優先度とNIF種別による対応キューイング優先度【AX5400S】」に従って,NIF種別ごとの対応キューイング優先度を決定します。
(3) アグリゲートキュー番号指定【AX7800S】
後述する階層化シェーパ機能のアグリゲートキューを指定します。出力側だけの機能です。階層化シェーパ機能をサポートしていないNIFに設定したインタフェースで,アグリゲートキュー番号を指定した場合,無視されます。また,階層化シェーパ機能をサポートしているNIFに設定したインタフェースで,アグリゲートキュー番号を指定した場合,コンフィグレーションの階層化シェーパ情報で該当アグリゲートキュー番号を指定する必要があります。指定しない場合は,該当アグリゲートキュー番号でパケットが廃棄されますのでご注意ください。
項目 仕様 アグリゲートキュー番号 初期値※ デフォルトキュー 値の範囲 1〜1023 注※ 出力回線において階層化シェーパ機能が動作しているときに本パラメータを省略した場合,またはフロー検出のコンフィグレーションに一致しない場合
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