解説書 Vol.1
IPv6マルチキャストはサーバ(送信者)から各グループ(受信者)にデータを配信する1(送信者):N(受信者)の片方向通信に適します。IPv6マルチキャストの推奨ネットワーク構成,注意事項を次に示します。
- <この項の構成>
- (1) IPv6 PIM-SMおよびIPv6 PIM-SSM共通
- (2) IPv6 PIM-SM
- (3) IPv6 PIM-SSM
(1) IPv6 PIM-SMおよびIPv6 PIM-SSM共通
(a) 適用構成
IPv6 PIM-SMまたはIPv6 PIM-SSM(以下,PIMと略す)では送信者から受信者に至る経路上のすべてのルータでPIMの設定が必要となります。このため,途中でPIMを設定していないルータがあると,マルチキャストパケットの中継が行えません。隣接ルータがPIMを設定していない場合には,上流ポートの指定を行うとパケットの中継ができるようになります。
「図19-24 IPv6上流ポートを指定する場合の適応例」は上流ポートを指定する場合の適用例です。ルータAと本装置は異なるマルチキャストドメインに属しているため,これらの間にはPIMが設定されていません。一方,ドメインXにいる送信元からドメインYにいる受信者にマルチキャストデータを送信したいという要求があります。ルータAと本装置の間でPIMが動作していないので,送信者Sから送られたマルチキャストデータは本装置にて廃棄されます。ここで本装置のポートαに送信者Sへの上流ポートを指定すると,ドメインY内へのマルチキャストパケットの転送が行われるようになります。
図19-24 IPv6上流ポートを指定する場合の適応例
上流ポートの指定は上図のような構成に適用されますので,これ以外の構成ではマルチキャストパケットの中継ができなくなる可能性があります。
(b) 注意が必要な構成
次に示す構成でIPv6 PIM-SMまたはIPv6 PIM-SSMを使用する場合,注意が必要です。
- 次の図に示す構成のようにホストと直接接続するルータが同一ネットワーク上に複数存在するインタフェースには,必ずPIM-SMを動作させてください。
同一ネットワーク上に複数のルータが存在するインタフェースにPIM-SMを動作させずにMLDだけを動作させた場合は,マルチキャストデータが二重中継される場合があります。
- 次の図に示す構成のように本装置Cが本装置Aと本装置BにVRRPを設定した仮想インタフェースをゲートウェイとするスタティックルートを設定した環境では,PIMプロトコルが上流ルータを検出できず,マルチキャスト通信ができません(PIM-SSMも同じです)。
この構成でマルチキャスト通信する場合は,本装置CにランデブーポイントアドレスとBSRアドレスとマルチキャストデータ送信元アドレスへのゲートウェイアドレスを本装置Aまたは本装置Bの実アドレスとするスタティックルートを設定する必要があります。
(2) IPv6 PIM-SM
(a) 推奨構成
IPv6 PIM-SMによるネットワーク構成に当たっては,ツリー型ネットワーク構成および冗長経路が存在するネットワーク構成を推奨します。ただし,ランデブーポイントの配置には十分注意してください。ランデブーポイント経由のIPv6マルチキャスト通信でのカプセル化処理および最短パス確立後のカプセル化抑止パケットの処理は,各ルータに負荷がかかるため,ランデブーポイントは送信者の直近に置くことをお勧めします。
IPv6 PIM-SM推奨ネットワーク構成を次の図に示します。
図19-25 IPv6 PIM-SM推奨ネットワーク構成
(b) 不適応な構成
次に示す構成でIPv6 PIM-SMは使用しないでください。
- 送信者とランデブーポイントの間に受信者が存在する構成
次に示す構成でサーバからグループ1のIPv6マルチキャスト通信を行う場合,ランデブーポイント経由の中継が効率よく行えません。
- DRであるIPv6 PIM-SMルータがIPv6マルチキャストグループ(受信者)の存在する回線に対してだけ接続している構成
次に示す構成でグループ1宛てのIPv6マルチキャスト通信をした場合,送信者とグループ1間で最短パスが確立しないことがあります。このため,ランデブーポイントを経由するIPv6マルチキャスト通信が続くことになります。
この場合,DRである本装置Dはグループ1が存在する回線とは別の回線でランデブーポイントや送信者に至る経路を確保するようにネットワーク構築してください。
(3) IPv6 PIM-SSM
(a) 注意が必要な構成
次に示す構成でIPv6 PIM-SSMを使用する場合注意が必要です。
- IPv6マルチキャストグループ(受信者)と同一回線上に複数のIPv6 PIM-SSMルータが動作する構成
次に示す構成でMLDv1でPIM-SSMを動作させる場合は,同一回線上のすべてのルータをコンフィグレーションコマンドssm(pim6 sparseモード)およびssm-join(mldモード)で設定してください。
(b) 端末側に複数のアドレスを設定したときの注意事項
SSM通信時,データ送信を行う端末に複数のIPv6アドレスを付与して運用する場合,送信されるデータの送信元アドレスが本装置に設定したssm-joinの送信元アドレス情報と一致するようにしてください。特に,RAなどのアドレス自動設定機能を使用した場合は,端末側が自動設定されたアドレスを使用して通信を行う場合があります。
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