解説書 Vol.1
マルチキャストはサーバ(送信者)から各グループ(受信者)にデータを配信する1(送信者):N(受信者)の片方向通信に適します。IPv4マルチキャストの適応ネットワーク構成,注意事項を次に示します。
- <この項の構成>
- (1) PIM-SMおよびPIM-SSM共通
- (2) PIM-SM
- (3) PIM-SSM
- (4) PIM-DM
- (5) DVMRP
(1) PIM-SMおよびPIM-SSM共通
(a) 注意が必要な構成
次に示す構成でPIM-SMまたはPIM-SSMを使用する場合,注意が必要です。
- 次の図に示す構成のようにホストと直接接続するルータが同一ネットワーク上に複数存在するインタフェースには,必ずPIM-SMを動作させてください。
同一ネットワーク上に複数のルータが存在するインタフェースにPIM-SMを動作させずにIGMPだけを動作させた場合は,マルチキャストデータが二重中継される場合があります。
- 次の図に示す構成のように本装置Cが本装置Aと本装置BにVRRPを設定した仮想インタフェースをゲートウェイとするスタティックルートを設定した環境では,PIMプロトコルが上流ルータを検出できず,マルチキャスト通信ができません。
この構成でマルチキャスト通信する場合は,本装置CにランデブーポイントアドレスとBSRアドレスとマルチキャストデータ送信元アドレスへのゲートウェイアドレスを本装置Aまたは本装置Bの実アドレスとするスタティックルートを設定する必要があります。
(2) PIM-SM
(a) 推奨構成
PIM-SMによるネットワークの構成に当たっては,ツリー型ネットワーク構成および冗長経路が存在するネットワーク構成を推奨します。ただし,ランデブーポイントの配置には十分注意してください。ランデブーポイント経由のマルチキャスト通信でのカプセル化処理および最短パス確立後のカプセル化抑止パケットの処理は,各ルータに負荷がかかるため,ランデブーポイントは送信者の直近に置くことをお勧めします。
PIM-SM推奨ネットワーク構成を次の図に示します。
図15-40 PIM-SM推奨ネットワーク構成
(b) 注意が必要な構成
次に示す構成は注意が必要です。
- 次の図に示すように送信者と直接接続するルータが同一ネットワーク上に2台以上存在する構成で,どれかをランデブーポイントとする場合は,ランデブーポイントがDRになるようにしてください。
ランデブーポイント以外をDRにした場合,DRからランデブーポイントに対しPIM-Registerメッセージを送信するため,本装置A,Bに負荷がかかります。また,PIM-Registerメッセージ中のマルチキャストパケットを中継するときに,ランデブーポイントでパケットロスが発生するおそれがあります。なお,ランデブーポイントをDRにした場合は,PIM-Registerメッセージによるカプセル化は行いません。
(c) 不適応な構成
次に示す構成でPIM-SMは使用しないでください。
- 送信者とランデブーポイントの間に受信者が存在する構成
次に示す構成でサーバからグループ1のマルチキャスト通信を行う場合,ランデブーポイント経由の中継が効率よく行えません。
- DRであるPIM-SMルータがマルチキャストグループ(受信者)の存在する回線に対してだけ接続している構成
次に示す構成でグループ1宛てのマルチキャスト通信をした場合,送信者とグループ1間で最短パスが確立しないことがあります。このため,ランデブーポイントを経由するマルチキャスト通信が続くことになります。
この場合,DRである本装置Dはグループ1が存在する回線とは別の回線でランデブーポイントや送信者に至る経路を確保するようにネットワーク構築してください。
(3) PIM-SSM
(a) 注意が必要な構成
次に示す構成は注意が必要です。
- マルチキャストグループ(受信者)と同一回線上に複数のPIM-SSMルータが動作する構成
次に示す構成でIGMPv2のPIM-SSMを動作させる場合は,同一回線上の全ルータのコンフィグレーションコマンドssm(pim sparseモード)およびssm-join(multicastモード)を設定してください。
(b) 端末側に複数のアドレスを設定したときの注意事項
SSM通信時,データ送信を行う端末に複数のアドレスを付与して運用する場合,送信されるデータの送信元アドレスが本装置に設定したssm-joinの送信元アドレス情報と一致するようにしてください。特に,DHCPなどのアドレス自動設定機能を使用した場合は,端末側が自動設定されたアドレスを使用して通信を行うことがあります。
(4) PIM-DM
(a) 推奨構成
PIM-DM推奨ネットワーク構成を次の図に示します。
図15-41 PIM-DM推奨ネットワーク構成
(b) 注意が必要な構成
次に示す構成は注意が必要です。
- ホストがマルチキャストグループから離脱したあと,マルチキャストグループが存在しないネットワークにも周期的(約3分)にマルチキャストデータパケットが送信されます。
- 冗長構成が存在する場合,冗長経路にマルチキャストデータパケットが周期的(約3分)に流れます。
(c) 不適応な構成
次に示す構成でPIM-DMは使用しないでください。
- PIM-DMは複数の冗長経路が存在するネットワーク構成では周期的にすべての経路でマルチキャスト通信を行います。ネットワーク全体に負荷が発生するので,PIM-DMではなくPIM-SMを使用してください。
(5) DVMRP
PIM-DM推奨ネットワーク構成と同じです。
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