解説書 Vol.1
マルチキャストパケットの中継処理はマルチキャスト中継エントリに従ってハードウェアおよびソフトウェアで行います。一度中継したマルチキャストパケットの中継情報はハードウェアのマルチキャスト中継エントリに登録されます。マルチキャスト中継エントリに登録されたパケットはハードウェアで中継を行い,登録されていないパケットはソフトウェアのマルチキャスト経路情報から生成したマルチキャスト中継エントリに従って中継を行います。
- <この節の構成>
- (1) ハードウェアによるマルチキャストパケット中継処理
- (2) ソフトウェアによるマルチキャストパケット中継処理
- (3) マルチキャスト経路情報またはマルチキャスト中継エントリの検索
- (4) ネガティブキャッシュ
ハードウェアで行うマルチキャストパケット中継処理には次の機能があります。
- マルチキャスト中継エントリの検索
マルチキャストグループ宛てのパケットを受信した場合,ハードウェアのマルチキャスト中継エントリから該当エントリを検索します。
- マルチキャストパケットの受信インタフェースの正常性チェック
マルチキャスト中継エントリの検索でエントリが存在した場合,そのパケットが正しいインタフェースから受信されているかどうかをチェックします。
- マルチキャストパケットのフィルタリング
フィルタリングテーブルに登録された情報を参照して中継判断を行います。
- TTLに基づいた中継判断とTTL値のデクリメント
パケット中のTTL情報から中継するかを判断し,中継する場合は該当パケットのTTL値をデクリメントします。
- ハードウェアのマルチキャスト中継エントリにエントリが存在しない場合
ある送信元からあるマルチキャストグループ宛てのパケットを最初に受信した場合,マルチキャスト経路情報から生成したマルチキャスト中継エントリに従って,ソフトウェアでパケットを中継します。同時に,ハードウェアに対して,マルチキャスト中継エントリを登録します。
- IPカプセル化処理を行う場合
PIM-SMで一時的にランデブーポイント宛てにIPカプセル化を行い中継し,ランデブーポイントでは各中継先にカプセル化の解除を行い中継します。
(3) マルチキャスト経路情報またはマルチキャスト中継エントリの検索
受信したマルチキャストパケットのDA(宛先グループアドレス)とSA(送信元アドレス)に該当するエントリをマルチキャスト経路情報またはマルチキャスト中継エントリから検索します。マルチキャスト経路情報またはマルチキャスト中継エントリの検索方法を次の図に示します。
図15-7 マルチキャスト経路情報またはマルチキャスト中継エントリの検索方法
ネガティブキャッシュは,中継できないマルチキャストパケットをハードウェアによって廃棄する機能です。ネガティブキャッシュは中継先インタフェースの存在しない中継エントリです。ネガティブキャッシュは,中継できないマルチキャストパケットを受信すると,ハードウェアに登録します。その後,登録したマルチキャストパケットと同じアドレスのマルチキャストパケットを受信すると,そのパケットをハードウェアによって廃棄します。これによって,大量の中継できないマルチキャストパケットを受信しても,それを原因とする負荷上昇を抑えられます。
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