解説書 Vol.1
OSPFでは,OSPFを使用しているルータがAS外の経路情報を認識している場合,この経路をOSPFを使用してそのほかすべてのOSPFを使用しているルータに通知できます。OSPFを使用し,AS外経路をOSPF内に導入するルータをAS境界ルータと呼びます。本装置をAS境界ルータとして使用するためには,エキスポート・フィルタのコンフィグレーション(コンフィグレーションコマンドexportの配布先プロトコルにospfaseを指定)が必要となります。AS外経路情報の導入の概念を次の図に示します。
- <この項の構成>
- (1) AS外経路の広告
- (2) AS外経路の導入例
- (3) AS外経路宛てのパケットの転送先
- (4) NSSA内のAS外経路のパケット転送先
OSPFへAS外経路を導入するとき,導入元のAS境界ルータは,宛先までのメトリック,AS外経路メトリックタイプ,フォワーディングアドレスとタグを付加して広告します。
- メトリック
宛先までのメトリックとして,固定の値を指定します(コンフィグレーションコマンドdefaults(ospfモード)のcostサブコマンド,コンフィグレーションコマンドroute-filterまたはexportのmetricパラメータ)。また,RIPのようにメトリックの情報を含んだ経路情報をOSPFへ取り込む場合には,メトリック引き継ぎ指定(コンフィグレーションコマンドdefaults(ospfモード)のinherit-metricサブコマンド)によって,メトリックを引き継ぐことができます。
- AS外経路メトリックタイプ
OSPFへ導入するAS外経路には,Type 1とType 2の2種類があります。Type 1とType 2の経路では,経路の優先順位,およびメトリックを経路の選択に使用するときの計算方法が異なります。
- フォワーディングアドレス(転送先)
転送先として使用するOSPFで到達可能なアドレスです。OSPFで到達可能でない場合,またはネクストホップのインタフェースがポイント−ポイント型である場合は0.0.0.0を設定します。なお,コンフィグレーションコマンドdefaults(ospfモード)のsuppress-forwarding-addressサブコマンドを指定した場合,本装置が生成するAS外経路のフォワーディングアドレスは,常に0.0.0.0を設定します。
NSSAのエリアボーダルータでは,NSSA内で学習したAS外経路を別エリアに広告する際,フォワーディングアドレスを引き継ぎます。ただし,AS外経路の導入元であるNSSAについて,コンフィグレーションコマンドarea(ospfモード)のsuppress-forwarding-address-type7to5サブコマンドを指定した場合,本装置が広告するAS外経路のフォワーディングアドレスは,常に0.0.0.0を設定します。
- タグ
付加情報としてタグを広告できます。
(2) AS外経路の導入例
バックアップ回線を使用した構成でのAS外経路の導入例を次の図に示します。
図12-34 バックアップ回線を使用した構成でのAS外経路の導入例
OSPFでは,隣接するルータを検出するために,定期的にパケットを交換します。このため,バックアップ回線をOSPFのトポロジの一部として使用した場合,この回線でパケットを継続して交換するため,バックアップ回線も常に運用状態になります。バックアップ回線上での通信が必要ではない場合にバックアップ回線を休止状態とするには,次のように設定します。
本装置Aでは主回線でOSPFを動作させ,バックアップ回線にネットワークAへのスタティック経路を定義します。デフォルトでは,OSPFのAS内経路のプリファレンス値はスタティック経路のプリファレンス値と比べ小さい(優先度が高い)ため,ネットワークAへの経路はOSPFで学習したAS内経路が選択されます。主回線障害時,本装置Aでは該当するAS内経路が削除されスタティック経路を再選択しますが,本装置CではネットワークAへの経路情報が存在しなくなります。本装置AでのネットワークAへのスタティック経路情報をAS外経路として本装置Cに広告するためには本装置Aでエキスポート定義を設定する必要があります。こうすることによって,バックアップ回線上でHelloパケットを交換しないで主回線障害時にもOSPFにネットワークAへの有用な経路情報を導入できます。
(a) AS境界ルータを目標とする場合
AS境界ルータを目標とする場合のシステム構成例を次の図に示します。この例では,ルータ1がルータ3より学習した経路をAS外経路として導入するに当たって,転送先をルータ1とします。ルータ1までの経路には,AS内経路選択で選択した経路を使用します。
図12-35 システム構成例(AS境界ルータを目標とする場合)
(b) フォワーディングアドレスを目標とする場合
フォワーディングアドレスを目標とする場合のシステム構成例を次の図に示します。この例では,ルータ1(AS境界ルータ)がルータ3より学習した経路をAS外経路として導入する当たって転送先をルータ3のネットワーク1へのインタフェースのアドレス(フォワーディングアドレス)とします。ルータ4からネットワーク1に転送する場合,ルータ2経由の経路の方がコストが少ない場合は,導入した外部経路宛てのパケットの転送にルータ2経由の経路を選択します。
図12-36 システム構成例(フォワーディングアドレスを目標とする場合)
(c) AS外経路についての注意事項
AS境界ルータ宛ての経路を次の図に示します。この例では,本装置AはネットワークA宛てのAS外経路をバックボーンエリアとエリア1の両方から学習します。このような場合,最初に学習した(すでに学習した経路の学習元)エリアを経由するパスを選択します。
経路情報をAS外経路として導入する場合,必ずAS外経路に転送先アドレスを記します。経路情報の導入元がブロードキャスト型のOSPFインタフェースである場合,転送先は導入元アドレスになります。そのほかの条件では,転送先はNSSA内の任意のインタフェースアドレスになります。任意のインタフェースを目標とする場合のシステム構成例を次の図に示します。この例では,ルータ1がルータ2より学習した経路をAS外経路として導入するときに,転送先をNSSA内の任意のインタフェースにします。ルータ4はAS外経路に記された転送先への経路を,エリア間経路選択によって選択します。
図12-38 システム構成例(任意のインタフェースを目標とする場合)
(a) NSSAについての注意事項
AS外経路の転送先アドレスは,NSSA内のOSPFが動作しているインタフェースの中から選択します。インタフェースがダウンした場合は変更します。転送先アドレスの変更後,新しいAS外経路を広告するまでの間,経路がいったん削除されることがあります。転送先を固定するため,経路情報の導入元であるブロードキャスト型インタフェースを,OSPFインタフェースとして定義することをお勧めします。
Copyright (c)2005, 2011, ALAXALA Networks Corporation. All rights reserved.