7.3.4 マスタスイッチの役割と選出
マスタスイッチは,スタック全体を制御するスイッチであり,スイッチ状態,マスタ選出優先度およびメンバスイッチの筐体MACアドレスの三つの要素に従って選出されます。
ここでは,マスタスイッチの役割とマスタスイッチの選出について説明します。
(1) マスタスイッチの役割
マスタスイッチはスタックを構成するすべてのメンバスイッチとその機能を制御します。スタックを構成するすべてのメンバスイッチは,マスタスイッチのコンフィグレーションとマスタスイッチからの制御に従って動作します。
マスタスイッチはメンバスイッチの代表であり,リモート運用端末からスタックへログインすると,必ずマスタスイッチへログインします。
ログインしたマスタスイッチでは,次に示す操作ができます。
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コンフィグレーションの編集
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すべてのメンバスイッチのオペレーション
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すべてのメンバスイッチの運用メッセージ・運用ログの確認
(2) マスタスイッチの選出
マスタスイッチは次に示す基準で選出されます。
(a) すでにマスタスイッチがある場合
既存のマスタスイッチをそのままマスタスイッチに選びます。
すでに動作しているスタックに新しいメンバスイッチをスタックポートで接続して起動しても,既存のマスタスイッチがマスタ状態を継続します。これによって,スタックの転送機能を維持したまま新しいメンバスイッチを追加できます。
例外として,マスタスイッチのマスタ選出優先度が1であり,それ以外にマスタ選出優先度が2以上のメンバスイッチがある場合,マスタ選出優先度が2以上のメンバスイッチをマスタスイッチに選びます。
(b) マスタスイッチが1台もない場合
バックアップスイッチをマスタスイッチに選びます。
(c) マスタスイッチおよびバックアップスイッチが1台もない場合
マスタ選出優先度が最も大きいメンバスイッチをマスタスイッチに選びます。マスタ選出優先度も同じ場合は,筐体MACアドレスが最も小さいメンバスイッチをマスタスイッチに選びます。
(d) マスタスイッチが2台ある場合
マスタ選出優先度が最も大きいメンバスイッチをマスタスイッチに選びます。マスタ選出優先度も同じ場合は,筐体MACアドレスが最も小さいメンバスイッチをマスタスイッチに選びます。
(3) マスタスイッチ選出の例
マスタスイッチを選出する例を次に示します。
- (例1)メンバスイッチ1台のスタックにメンバスイッチを追加した
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スタックで動作しているメンバスイッチが1台だけでマスタスイッチとして動作しているとき,別のメンバスイッチを起動した場合,元のマスタスイッチのマスタ状態は継続します。選出基準の(a)に該当します。
ただし,元のマスタスイッチのマスタ選出優先度が1であり,かつ追加したメンバスイッチのマスタ選出優先度が2以上の場合,追加したメンバスイッチがマスタスイッチに選ばれます。元のマスタスイッチは再起動し,スタックのマスタスイッチではないメンバスイッチとなります。
- (例2)2台のメンバスイッチを同時に起動した
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スタックポートで接続済みの2台のメンバスイッチを同時に起動した場合,マスタ選出優先度,筐体MACアドレスの順に比較され,マスタスイッチが選ばれます。選出基準の(c)に該当します。
- (例3)マスタスイッチとマスタスイッチを接続した
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1台のメンバスイッチでスタックを構成している二つのスタックを接続した場合,マスタ選出優先度,筐体MACアドレスの順に比較され,マスタスイッチが選ばれます。選出基準の(d)に該当します。
マスタスイッチに選ばれなかったメンバスイッチは再起動し,マスタスイッチに選ばれたメンバスイッチのスタックに加わります。
(4) 2台構成のスタックでマスタスイッチの選出を固定する方法
2台構成のスタックのすべてのメンバスイッチを起動するときに,選んだメンバスイッチをマスタスイッチにするには,次に示す二つの方法があります。
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マスタスイッチにする予定のメンバスイッチのマスタ選出優先度に2以上を設定し,マスタスイッチにしない予定のメンバスイッチのマスタ選出優先度に1を設定してください。
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マスタスイッチにする予定のメンバスイッチを先に起動してください。マスタスイッチとして起動し終わったあとに,マスタスイッチにしない予定のメンバスイッチを起動してください。
(5) マスタ選出優先度
マスタ選出優先度とは,スタックを構成するメンバスイッチからマスタスイッチを選出するための優先度です。マスタ選出優先度として,1から31までの値をコンフィグレーションコマンドswitch priorityで設定できます。
マスタ選出優先度が大きいメンバスイッチは,スタックを構成するすべてのメンバスイッチを同時に起動したときに,優先してマスタスイッチに選ばれます。しかし,すでにマスタスイッチが動作しているスタックにマスタ選出優先度が大きいメンバスイッチを追加して起動しても,既存のマスタスイッチのマスタ選出優先度が1以外であれば,既存のマスタスイッチがマスタ状態を継続します。
マスタ選出優先度1は特別な優先度です。メンバスイッチが2台動作していて,1台のメンバスイッチのマスタ選出優先度が1,もう1台のメンバスイッチのマスタ選出優先度が2以上であれば,必ずマスタ選出優先度が2以上のメンバスイッチをマスタスイッチに選びます。
例えば,1台のマスタ選出優先度1のマスタスイッチで構成されたスタックに,マスタ選出優先度が2以上のメンバスイッチを追加して起動すると,追加したメンバスイッチがマスタスイッチに選ばれます。
なお,マスタスイッチを切り替えるときに,元のマスタスイッチ(マスタ選出優先度1)と追加したメンバスイッチが共に再起動するため,通信が一時的に停止します。
マスタ選出優先度を1に設定したメンバスイッチは,次の場合を除いてマスタスイッチに選出されません。
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スタックを構成するメンバスイッチが1台しかない場合
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スタックを構成するすべてのメンバスイッチのマスタ選出優先度が1の場合
既存のスタックにメンバスイッチを追加するときは,追加するメンバスイッチのマスタ選出優先度を1に設定してください。これは,メンバスイッチを追加すると同時に既存のマスタスイッチが障害などで再起動した場合,追加したメンバスイッチがマスタスイッチになって,旧マスタスイッチのコンフィグレーションが追加したメンバスイッチのコンフィグレーションに置き換わることを防ぐためです。なお,スタックが構築されたあと,バックアップスイッチのマスタ選出優先度は,マスタスイッチで設定したマスタ選出優先度に変更されます。