解説書 Vol.1
OSPFv3はルータ間の接続状態から構成されるトポロジとDijkstraアルゴリズムによる最短経路計算に基づくIPv6用のルーティングプロトコルです。ルータIDとエリアIDはOSPFv2(IPv4用のOSPF)と同様32ビット数です。OSPFv2とOSPFv3はそれぞれ独立して動作します。
- <この項の構成>
- (1) OSPFv3の特長
- (2) OSPFv3とOSPFとの機能差分
(1) OSPFv3の特長
OSPFv3は,通常一つのAS内での経路決定に使用されます。OSPFv3では,AS内のすべての接続状態から構成するトポロジのデータベースが各ルータにあり,このデータベースに基づいて最短経路を計算します。このため,OSPFv3はRIPngと比較して,次に示す特長があります。
- 経路情報トラフィックを削減できる
OSPFv3では,ルータ間の接続状態が変化したときだけ,接続状態の情報をほかのルータに通知します。このため,OSPFv3はRIPngのように定期的にすべての経路情報を通知するルーティングプロトコルと比較して,ルーティングプロトコルが占有するトラフィックが小さくなります。なお,OSPFv3では30分周期で,自ルータの接続状態の情報を他ルータに通知します。
- ルーティングループを抑止する
OSPFv3を使用しているすべてのルータは,同じデータから成るデータベースを保持しています。各ルータは共通のデータに基づいて経路を選択します。したがって,RIPngのようなルーティングループ(中継経路の循環)は発生しません。
- コストに基づいて経路選択できる
OSPFv3では,宛先まで到達できる経路が複数存在する場合,宛先までの経路上のコストの合計が最も小さい経路を選択します。これによって,RIPngと異なり経路へのコストを柔軟に設定できるため,中継段数に関係なく望ましい経路を選択できます。
- 大規模ネットワークの運用に適している
OSPFv3では,コストが65536以上の経路を到達不能とみなします。このため,メトリックが16以上の経路を到達不能とみなすRIPngと比較して,より大規模で経由ルータ数の多い経路が存在するネットワークの運用に適しています。
(2) OSPFv3とOSPFとの機能差分
OSPFv3(IPv6)とOSPF(IPv4)との機能差分を次の表に示します。
表15-8 OSPFv3(IPv6)とOSPF(IPv4)の機能差分
機能 OSPFv3(IPv6) OSPF(IPv4) ポイント−ポイント型インタフェースのアドレス広告 自側アドレスをコスト0で広告※1 相手側アドレスを指定コストで広告 AS外経路のフォワーディングアドレス × ○ NSSA × ○ 認証 × ○ 非ブロードキャスト(NBMA)ネットワーク × ○ イコールコストマルチパス ○※2 ○ 仮想リンク ○※3 ○ マルチバックボーン ○ ○ (凡例) ○:取り扱う ×:取り扱わない
注※1 構成定義コマンドoptionsコマンドのgen-prefix-routeパラメータを指定した場合,プレフィックス長が128でないポイント−ポイント型インタフェースについてはネットワーク経路を指定コストで広告します。このとき自側アドレスは仮想リンクで必要なければ広告しません。
注※2 経路選択方法は,OSPF(IPv4)とOSPFv3(IPv6)で異なります。イコールコスト時,OSPF(IPv4)では最小のネクストホップアドレスを選択しますが,OSPFv3(IPv6)ではルータIDが最小であるネクストホップアドレスを選択します。同一ルータIDのネクストホップアドレスが複数ある場合,Helloパケットで最小のインタフェースIDをHelloで広告しているネクストホップアドレスを選択します。
注※3 仮想リンクの設定には,通過エリアのインタフェースにグローバルまたはサイトローカルIPv6アドレスを設定しておく必要があります。
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