解説書 Vol.1
インポート・フィルタは指定プロトコルで受信したルーティング・パケットの経路情報をルーティングテーブルに取り込むかどうかをフィルタリング条件に従って制御します。インポート・フィルタを指定していない場合は,すべての経路情報を取り込みます。
- <この項の構成>
- (1) プリファレンス値
- (2) フィルタリング条件
- (3) ASパス正規表現
- (4) MED属性値
(1) プリファレンス値
取り込む経路情報にはフィルタリング条件ごとにその経路情報のプリファレンス値を指定できます。プリファレンス値を指定していない場合は,そのプロトコルのデフォルトのプリファレンス値になります。
同一宛先アドレスの経路情報が複数存在する場合,プリファレンス値によって優先度の高い経路情報が有効となります。プリファレンス値の詳細は,「10.3.3 スタティックルーティングとダイナミックルーティング(RIP/OSPF)の同時動作 (1) プリファレンス値」を参照ください。
(2) フィルタリング条件
取り込む経路情報はフィルタリング条件で指定できます。指定できるインポート・フィルタのフィルタリング条件を次に示します。
- 送信元ピアアドレス
- 送信元AS番号
- 送信元ポリシーグループ番号
- 経路情報のAS_PATH属性
- 経路情報のORIGIN属性
- 経路情報のCommunity属性
- 経路情報の宛先ネットワーク
また,取り込まれた経路情報はフィルタリング条件ごとにその経路情報のBGP属性を変更できます。変更できるBGP属性を次に示します。
- LOCAL_PREF属性
- AS_PATH属性(追加AS数を指定する)
- ORIGIN属性
- MED属性
- Community属性(削除または追加Communityを指定する)
フィルタリング条件であるAS_PATH属性はASパス正規表現(ASPath-Regular-Expression)によって複数のAS_PATHに一致するような表現で指定できます。ASパス正規表現は次の形式で指定します。
<Aspath> := {<Aspath_Term>...|^$} <Aspath_Term> := <Aspath_Symbol>[{ {m,n} | {m} | {m,} | * | + | ? }] <Aspath_Symbol> := { <As> | .}
- ^$ :空のASパスを意味します。
- {m,n}:Aspath_Symbolをm回からn回,繰り返すことを意味します。
(m,nの設定範囲:0〜255)
- {m} :Aspath_Symbolをm回,繰り返すことを意味します。
(mの設定範囲:0〜255)
- {m,} :Aspath_Symbolをm回以上,繰り返すことを意味します。
(mの設定範囲:0〜255)
- * :Aspath_Symbolを0回以上,繰り返すことを意味します。
- + :Aspath_Symbolを1回以上,繰り返すことを意味します。
- ? :Aspath_Symbolを0回または1回,繰り返すことを意味します。
- <As>:指定したAS番号を意味します。
- . :任意のAS番号を意味します。
ASパス正規表現の例を次の図に示します。
(4) MED属性値
インポート・フィルタと次に示すパラメータの組み合わせによって,学習したBGP4経路情報のMED属性値を変更できます。
- attribute-listコマンドのmedパラメータ
- route-filterコマンドのmedパラメータ
medパラメータの指定値は,数値指定とオフセット指定があります。
インポート・フィルタと組み合わせたmedパラメータでオフセット指定(±指定)した場合に,学習経路情報に設定されるMED属性値を次の表に示します。
表11-16 オフセット指定した場合に取り込む経路情報のMED属性値
学習元プロトコル MED属性値 BGP4
- 経路情報にMED属性値が含まれている場合,経路情報のMED属性値にオフセット値を±した値を使用します。
- 経路情報にMED属性値が含まれていない場合,0を基準にオフセット値を±した値を使用します。
注 オフセット値を±した結果がマイナスになった場合は0に,4294967295を超えた場合は4294967295に値が補正されます。
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