解説書 Vol.1
スタティックルーティングは構成定義情報で設定した経路情報(スタティック経路)に従ってパケットを中継する機能です。
本装置のスタティック経路は,デフォルトルートを含む一つの宛先(サブ)ネットワークまたはホストごとに,複数の中継経路(ゲートウェイ)を設定できます。本装置は設定された複数の中継経路から適切な一つまたは複数(optionsコマンドのmax-pathsパラメータ指定時:最大16パス)の経路を選択して,経路情報を生成することによってパケット中継を実現しています。
スタティックルーティングのネットワーク構成例を次の図に示します。本店からは各営業店へのスタティック経路を定義し,営業店からは本店へのスタティック経路を定義します。この設定例では営業店間の通信はできません。
- <この項の構成>
- (1) スタティック経路の経路選択
- (2) スタティック経路のゲートウェイ種別
- (3) スタティック経路の動的監視
構成定義情報で宛先ネットワークごとに指定された複数の中継経路(ゲートウェイ)から適切な一つ,または複数(optionsコマンドのmax-pathsパラメータ指定時)のゲートウェイを選び出し経路情報を生成します。ゲートウェイの選択は,該当するゲートウェイへ通信できる状態にあるゲートウェイの中から構成定義情報の定義順で選択します。
選択されたスタティック経路が使用できなくなった(インタフェースに障害が発生した)場合,スタティック経路は設定された複数の中継経路から適切な一つ,または複数(optionsコマンドのmax-pathsパラメータ指定時)の経路を再選択します。
中継経路(ゲートウェイ)には,直接接続された隣接ゲートウェイと,直接接続されない遠隔ゲートウェイが設定できます。隣接ゲートウェイは,該当するゲートウェイに対し,直接接続されたインタフェースの状態によって経路の生成・削除を制御します。遠隔ゲートウェイは,該当するゲートウェイへの経路の有無によって経路の生成・削除を制御します。隣接ゲートウェイはgatewayパラメータで,遠隔ゲートウェイはremote-gatewayパラメータで指定してください。
スタティック経路は,ゲートウェイと直接接続されたインタフェースの状態,またはゲートウェイへの経路の有無によって経路の生成・削除を制御します。したがって,経路が生成されている場合でも,該当するゲートウェイへの到達保証はありません。本装置では,生成されたスタティック経路のゲートウェイに対し,ICMPv4/ICMPv6のエコー要求およびエコー応答メッセージを使用した周期的なポーリングによって,到達性を動的に監視する機能(staticコマンドのpollパラメータ)を持っています。この機能を使用することによって,「(2) スタティック経路のゲートウェイ種別」の経路生成・削除条件に加え,該当するゲートウェイへの到達性が確保できている場合だけ,スタティック経路を生成するよう制御できます。
また,該当するゲートウェイへ到達不可能から到達可能となった場合でも,その時点で経路を生成するのではなく,一定期間該当するゲートウェイへの到達性を監視して安定性が認められた場合に経路を再生成できます。
(a) スタティック経路の動的監視による経路切り替え
スタティック経路の動的監視の例を次の図に示します。
この図では,本装置AでネットワークBへのスタティック経路が本装置B経由(優先),本装置C(非優先)で定義されているものとします。動的監視を行っていない状態で,本装置Aと本装置B間の本装置B側のインタフェースに障害が発生した場合,本装置A側のインタフェースは正常なため,本装置B経由のスタティック経路は削除されません。これによって,本装置C経由のスタティック経路への切り替えが行われず,本装置A−ネットワークB間の通信が停止します。
動的監視を行っている場合,本装置A側のインタフェースが正常である場合でも,動的監視機能によって本装置Bへの到達不可を検知し,本装置B経由のスタティック経路を削除します。これによって,本装置C経由のスタティック経路への切り替えが行われ,本装置A−ネットワークB間の通信を確保できます。
(b) スタティック経路の動的監視による経路の生成,削除および再生成タイミング
スタティック経路の動的監視による経路の生成,削除および再生成タイミングはstaticコマンドのpollinterval,pollcountおよびrecovercountパラメータに依存します。
- 経路生成タイミング
インタフェースアップなどの経路生成要因を契機としてゲートウェイにポーリングします。該当するポーリングに対する応答を受信した場合,次のポーリング周期(pollinterval)に経路を生成します。スタティック経路の動的監視による経路生成の例を次の図に示します。
図10-13 スタティック経路の動的監視による経路生成
- 経路削除タイミング
pollinterval周期でのポーリングに対し,pollcount回数連続して応答がない場合に経路を削除します。pollcount=3の場合はポーリングに対して3回連続して応答がない場合に経路を削除します。なお,インタフェースダウンなどの経路生成要因がなくなった場合にもポーリングを使用しない(pollパラメータ未指定)スタティック経路と同様に,経路を削除します。スタティック経路の動的監視による経路削除の例を次の図に示します。
図10-14 スタティック経路の動的監視による経路削除(pollcount=3の場合)
- 経路再生成タイミング
スタティック経路の動的監視によって削除された経路のゲートウェイへのpollinterval周期のポーリングに対し,recovercount回数連続して応答があった場合に経路を再生成します。recovercount=2の場合はポーリングに対して2回連続して応答があった場合に経路を再生成します。スタティック経路の動的監視による経路再生成の例を次の図に示します。
図10-15 スタティック経路の動的監視による経路再生成(recovercount=2の場合)
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