解説書 Vol.1
ここでは本装置のATMインタフェースの性能,および帯域設計についての注意事項を示します。
- <この項の構成>
- (1) ATMインタフェースの性能
- (2) セル化のオーバヘッド
- (3) 過負荷時のセル廃棄によるルーティングプロトコルへの影響
- (4) ATMインタフェースでの送信QoS制御指定(Outbound)
- (5) RP処理負荷とQoS制御の関係
(1) ATMインタフェースの性能
本装置のATMインタフェースでの送信性能は回線当たり50kpacket/sです。それ以上のトラフィックが流入しないよう十分考慮して,ネットワークを設計してください。
(2) セル化のオーバヘッド
イーサネットなどの異なるメディアのネットワークからATMネットワークにパケット中継する場合,入力したトラフィックより出力するトラフィックがセル化のオーバヘッドによって高くなります。
イーサネットで受信したIPパケットをATMネットワークに送信する場合について,イーサネットフレームからセルへの変換を次の図に示します。
図6-22 イーサネットフレームからセルへの変換
例えば,イーサネットから64バイトのフレームを受信した場合,IPパケット長は46バイトです。これをATMネットワークに送信するときにはデータ長が48バイトの整数倍になるようにPADを加えるので,次のようになります。
ヘッダ(8バイト)+IPパケット(46バイト)+PADおよびトレーラ(42バイト) =96バイト これをセル化して,53×2バイト=106バイト(2セル)したがって,この場合はイーサネットからの受信速度に対し,ATMネットワークへの送信速度は1.66倍になります。
(3) 過負荷時のセル廃棄によるルーティングプロトコルへの影響
ATMインタフェースにトラフィックが集中し,設定したVCの帯域を超える過負荷状態が発生した場合,本装置はシェーピング機能によって帯域を超えた分のセルを廃棄します。このとき,該当するインタフェースにRIP,OSPFなどのダイナミックルーティングプロトコルを使用している場合,相手装置との間に通信断が発生する場合があります。これはセルの廃棄時に,ルーティングプロトコルの制御パケットを識別しないため,制御パケットを廃棄する場合があるためです。次に,RIPの場合を例として示します。
- セル廃棄によって3分間以上にわたってルーティングプロトコルの制御パケットが相手装置に送信されなかった場合,相手装置のルーティングテーブルから該当するインタフェースを経由する経路情報が削除されて,通信断が発生します。
- ルーティングテーブルの再構築および通信の復旧は,セル廃棄が発生しなくなってから最大30秒程度かかります。
過負荷発生時のシェーピングを次の図に示します。このような通信断を防ぐために,VCの帯域はトラフィック量を考慮して設定してください。
図6-23 過負荷発生時のシェーピング
(4) ATMインタフェースでの送信QoS制御指定(Outbound)
ATMインタフェースはQoS制御をレイヤ2レベルでサポートしています。このため,ATMのサービスカテゴリ(CBR,UBRなど)ごとに出力制御をします。ATMインタフェースのQoS制御を次の図に示します。
図6-24 ATMインタフェースのQoS制御(サービスカテゴリごとの出力制御)
イーサネットやWANインタフェースはQoS制御をレイヤ3レベルでサポートしているため,プロトコルやIPアドレスの判定によってQoS制御ができますが,ATMインタフェースでのQoS制御については,「解説書 Vol.2 1.10 QoS制御機能の仕様一覧」を参照してください。
(5) RP処理負荷とQoS制御の関係
RPに負荷が発生する場合は,QoS制御が機能しなくなる場合があります。詳細については「解説書 Vol.2 1.11 QoS制御使用時の注意事項」を参照してください。この場合,サービスカテゴリCBRのVCでも,廃棄発生によって送信トラフィック量が帯域以下となります。廃棄発生の程度より,CBR帯域をUBR帯域が使用する場合もありますので注意してください。
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