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エンジニアインタビュー ~次世代スイッチ開発~

チャレンジを続けるエンジニア達 海外でも勝てる次世代製品を作る

通信事業者向けのルータ・スイッチをメインに展開するアラクサラにとって、製品開発はまさに会社のコアとなる部分である。そんな製品開発に携わるエンジニアは今回の5周年をどう捉えているのだろうか? ハードウェア設計を行なう加賀野井晴大氏と、ソフトウェア開発を手がける野崎信司氏に今までの5年と今後の5年について聞いた。

開発現場のアラクサラウェイはこうやって醸成された

野崎信司氏
製品開発本部 ソフト技術部 GL主任技師
野崎信司氏

アラクサラ製品は、堅牢で質実剛健なネットワーク機器として知られる。高い信頼性、高速な処理能力、柔軟な拡張性などを要求される通信事業者やエンタープライズの要件を満たすべく、同社のエンジニアは日々情熱をもって製品開発に携わっている。今回は、こうした次世代製品の開発に携わる加賀野井氏と野崎氏に、まずは5年前から今に至るまでの経緯を聞いてみた。

加賀野井氏はNEC、野崎氏は日立製作所(以下、日立)の出身で、両者はともにアラクサラの主力製品であるAX6000シリーズを立ち上げたメンバーだ。「NECは古くからやっていましたが、日立のレイヤ2機能はGS4000で実装したばかりで、基本的な機能しか持っていませんでした。ですが、アラクサラができてからは、それなりの機能を求められたので、大変でしたね」と製品の立ち上げ当初について野崎氏は語る。具体的には認証やリングプロトコルなどの開発をかなり迅速に行なう必要があったという。

アラクサラになって実現できた部分として、野崎氏はハードウェアとソフトウェアの連携を挙げた。「この10年間、ルータやスイッチはハードウェア化が進んできました。これに対して、ソフトウェア担当の私も自分の思いを自社開発のASICに入れられたと思います」(野崎氏)と話す。とはいえ、ソフトウェアとハードウェアの境界線を変えるというのは、アーキテクチャ自体を変更することとイコールなので、短い時間にこれを実現するのは大変だったようだ。しかし、「パケット転送は今までも可能だったんですけど、アラクサラではプロトコルのアシストまでハードウェアが踏み込んでいきました。たとえばリングプロトコルはハードウェア処理しているので、非常に高速に経路の切り替えができるのです」(加賀野井氏)と、きちんとアラクサラ製品の特徴に育ったようだ。

加賀野井氏は「AX6000シリーズの開発を手がけて、完成したと思ったら、次はサポートや機能強化などをやって、気がついたら5年経っていました。もともとアラクサラにはものづくりをしたいという動機で入ったので、開発に没頭できたのは本望です」と、この5年を振り返った。

「広く」だけではなく「深く」だけではない開発体制が実現

加賀野井晴大氏
第二製品開発部 GL主任技師
加賀野井晴大氏

こうした製品開発の場面では、エンジニア同士が緊密に連携しなれければならない。異なる会社・組織を統合し、しかも急ピッチで開発を進める必要があったアラクサラはどうだったのだろうか? 加賀野井氏は「エンジニアに関しては、日立とNECの部隊が融合することで、苦労したという点はほとんどありませんでしたね。確かに組織が違っていたので、人脈を作るのは時間がかかりましたが、製品を立ち上げるという共通のゴールがあり、なにをすべきかを個人が把握していたので、まとまりがありました」と断言する。野崎氏は「特に当初はAX2400とか、AX3600のような新製品の開発ラッシュでした。今まで作ったことのなかったボックス型スイッチの開発プロジェクトに、多くのメンバーが途中からではなく、最初から関われたので、より一体感が持てたと思います」と話している。

さらに加賀野井氏は「今から考えると、NECは広い視野を持ったエンジニアがメインで、日立の方は『ここに関しては俺に任せろ!』みたいな深く掘り下げるエンジニアが多かったと思うんです。そのため、多くの人を集めて時間をかけて話し合いをしなければならないかわり、とにかく深い議論ができるようになったんです」とエンジニア組織の融合について意見を述べた。まさにジェネラリストとスペシャリストがこだわりの開発体制を生んだわけだ。

過去、印象深かった点を聞くと、「今まで日立の製品は通信事業者向けの製品がメインだったのですが、アラクサラになってエンタープライズ向けの製品も作り始めました。(エンタープライズのような)見えないお客さんを考えながら開発するというのは新鮮でしたね」(野崎氏)とエンタープライズ製品が大きなチャレンジだったと話している。

一方で加賀野井氏は「某キャリアさんに装置を納めるときにお客さんのニーズをすべて聞き出し、ハードウェアの仕様を1年間くらいかけてまとめる担当をしていました。いろいろな人と相談して、苦労してまとめたので、お客さんのところでサービスが動いたという話を聞いたときはほっとしましたね」と、逆に通信事業者向けのカスタマイズが印象に残っているとのことだ。

次の10年を見据えた製品開発に着手

現在、お二方は次世代をにらむ新製品の企画を進めている。加賀野井氏は「具体的になにをするというのはなかなかいえないのですが、一言でいえば海外でも戦える製品を作ります。ハードウェア面でいうと、我々の製品の特長の1つであるASICをさらに発展させることで、性能や機能面だけでなく、コスト耐力もある製品にしていきたいです」と、5年のみならず、10年~15年先まで使っても色あせないプラットフォームを目指すという。アラクサラ製品の特徴である省エネに関しても、「ASICはもちろんですが、たとえばトラフィック量を予測するなどして動的に省電力化を図れるといった技術にも力を入れていきます」(加賀野井氏)と話している。

野崎氏は「過去にAX6000を手がけてきたのですが、今となってはもっと盛り込みたかったところもあるんです。標準対応は当たり前として、ソフトウェアとハードウェアの連携をますます強めていき、レベルを上げていきたいです。あと、仮想化やモジュラ化など基盤部分で対応しないと難しい技術もあるので、これらをクリアし、拡張性の高いプラットフォームを実現したいです」と意気込みを語る。

ものづくりへの熱い情熱を持ったエンジニア達が作る、次世代製品はどのような形になるのだろうか?今から楽しみだ。