コンフィグレーションガイド Vol.3


21.1.2 ピアの種別と接続形態

BGP4およびBGP4+のどちらも,ピアの種別と接続形態は同じです。以降,BGP4とBGP4+をまとめてBGPと表します。

BGPはAS間のルーティングプロトコルなので,扱う経路情報は宛先ネットワークへのASパス情報(パケットが宛先のネットワークに到達するまでに通過するASの列)で構成されます。BGPが動作するルータをBGPスピーカと呼びます。このBGPスピーカは,そのほかのBGPスピーカと経路情報を交換するためにピアを形成します。

本装置で使用されるピアの種類には,外部ピアと内部ピアがあります。コンフェデレーション構成時は,これら二つのピアに加えて,メンバーAS間ピアが追加されます。ネットワーク構成に合わせてピアを使用してください。なお,メンバーAS間ピアについては,「22.1.10 コンフェデレーション」を参照してください。

外部ピアと内部ピアを次の図に示します。

図21‒1 内部ピアと外部ピア

[図データ]

注※ IGPが動作します。

〈この項の構成〉

(1) 外部ピア

外部ピアは,異なるASに属するBGPスピーカ間に形成するピアです。ピアリングに使用するIPアドレスには,IPv4アドレスの場合は直接接続されたインタフェースのアドレスを,IPv6アドレスの場合は直接接続されたインタフェースのリンクローカルアドレスまたはグローバルアドレスを使用します。

なお,コンフィグレーションコマンドneighbor ebgp-multihopを使用すると,直接接続されたインタフェース以外のアドレス(例えば,ループバックインタフェースに設定したアドレス)で接続できます。

図21‒1 内部ピアと外部ピア」のルータ1−ルータ6間,ルータ2−ルータ7間,ルータ3−ルータ8間に形成されるピアが外部ピアです。

(2) 内部ピア

内部ピアは,同じASに属するBGPスピーカ間に形成するピアです。BGPはピア間のコネクションを確立するためにTCP(ポート179)を使用します。そのため,すべてのBGPスピーカが物理的にフルメッシュで接続される必要はありませんが,内部ピアはAS内の各BGPスピーカ間で論理的にフルメッシュに形成される必要があります。これは,内部ピアで受信した経路情報をそのほかの内部ピアに通知しないためです。なお,ルート・リフレクションやコンフェデレーションの機能を使用すると,この条件は緩和されます。

図21‒1 内部ピアと外部ピア」のルータ1−ルータ2間,ルータ1−ルータ3間,ルータ2−ルータ3間に形成されるピアが内部ピアです。

(3) ループバックインタフェースに設定したアドレスを使用したピアリング

本装置ではループバックインタフェースに設定したアドレスを外部ピアや内部ピアのIPアドレスとして使用すると,特定の物理インタフェースの状態に依存したピアリング(TCPコネクション)への影響を排除できます。

例えば,「図21‒1 内部ピアと外部ピア」でルータ1−ルータ2間の内部ピアにインタフェースのIPアドレスを使用すると,ルータ1−ルータ2間に障害が発生してインタフェースが使用できない場合にルータ1−ルータ2間の内部ピアを確立できません。しかし,内部ピアのIPアドレスとしてループバックインタフェースに設定したアドレスを使用すると,ルータ1−ルータ2間のインタフェースが使用できない場合でもルータ4,ルータ5経由で内部ピアを確立できます。

[ループバックインタフェースに設定したアドレスを使用する場合の注意事項]

ループバックインタフェースに設定したIPv4アドレスを使用する場合,そのアドレスへの経路情報をスタティックまたはIGP(RIP,OSPF)で互いに学習している必要があります。また,IPv6アドレスを使用する場合,そのアドレスへの経路情報をスタティックまたはIGP(RIPng,OSPFv3)で互いに学習している必要があります。なお,本装置はループバックインタフェースに設定したアドレスを直結経路情報として扱います。

[内部ピアで非BGPスピーカを経由する場合の注意事項]

内部ピアで非BGPスピーカを経由して経路情報を通知する(例えば,ルータ2からルータ3に通知する)場合,非BGPスピーカでIGP経由でその経路情報を学習している必要があります。これは該当する経路情報の通知によって通知先BGPスピーカから入ってくる該当宛先へのIPパケットが,該当する経路を学習していない非BGPスピーカのルータで廃棄されるのを防ぐためです。例えば,「図21‒1 内部ピアと外部ピア」ではルータ3からルータ5に入ってくるIPパケットがルータ5で廃棄されるのを防ぐためです。