コンフィグレーションガイド Vol.3


3.1.4 ユニキャストアドレス

〈この項の構成〉

(1) リンクローカルアドレス

アドレスプレフィックスの上位64ビットがfe80::で,64ビットのインタフェースID部を含むアドレスをIPv6リンクローカルアドレスと呼びます。IPv6リンクローカルアドレスは同一リンク内だけで有効なアドレスで,自動アドレス設定,近隣探索,またはルータが存在しないときに使用されます。パケットの始点または終点アドレスがIPv6リンクローカルアドレスの場合,本装置はパケットをほかのリンクに転送しません。

本装置でIPv6を使用するインタフェースには,IPv6リンクローカルアドレスが必ず一つ設定されます。二つ以上は設定できません。IPv6リンクローカルアドレスを次の図に示します。

図3‒5 IPv6リンクローカルアドレス

[図データ]

(2) サイトローカルアドレス

アドレスプレフィックスの上位10ビットが1111 1110 11で,64ビットのインタフェースID部を含むアドレスをIPv6サイトローカルアドレスと呼びます。本装置はIPv6サイトローカルアドレスを「(3) グローバルアドレス」のIPv6グローバルアドレスとして扱います。そのため,IPv6サイトローカルアドレスをインタフェースに設定した場合は,IPv6サイトローカルアドレス情報がサイト外に出ないようにルーティングやフィルタリングを設定してください。IPv6サイトローカルアドレスを次の図に示します。なお,サイトローカルアドレスはRFC3879で廃止されました。

図3‒6 IPv6サイトローカルアドレス

[図データ]

(3) グローバルアドレス

アドレスプレフィックスの上位3ビットが001で始まるアドレスをIPv6グローバルアドレスと呼びます。IPv6グローバルアドレスは世界で一意なアドレスで,インターネットを経由して通信する場合に使用されます。パケットの始点アドレスがIPv6グローバルアドレスの場合,経路情報に従ってパケットが転送されます。IPv6グローバルアドレスを次の図に示します。

図3‒7 IPv6グローバルアドレス

[図データ]

(4) 未指定アドレス

すべてのビットが0のアドレス0:0:0:0:0:0:0:0(0::0,または::)は,未指定アドレスと定義されています。未指定アドレスはインタフェースにアドレスが存在しないことを表しています。これは,アドレスの割り当てを受けていないノードの接続開始時などに使用されます。未指定アドレスはノードに対して意図的に割り当てられません。未指定アドレスを次の図に示します。

図3‒8 未指定アドレス

[図データ]

(5) ループバックアドレス

アドレス0:0:0:0:0:0:0:1(0::1,または::1)は,ループバックアドレスと定義されています。ループバックアドレスは自ノード宛てに通信するときにパケットの宛先アドレスとして使用されます。ループバックアドレスはインタフェースに対して割り当てられません。また,終点アドレスがループバックアドレスのIPv6パケットは,そのノード外に送信することや,ルータによって転送することは禁止されています。ループバックアドレスを次の図に示します。

図3‒9 ループバックアドレス

[図データ]

(6) IPv4互換アドレス

IPv4互換IPv6アドレスは,二つのIPv6ノードがIPv4で経路制御されたネットワークで通信するためのアドレスです。下位32ビットにIPv4アドレスを含む特殊なユニキャストアドレスで,IPv4ネットワークに接続している機器同士が通信する場合に使用します。プレフィックスは96ビット長ですべて0です。IPv4互換アドレスを次の図に示します。なお,IPv4互換IPv6アドレスはRFC4291で廃止されました。

図3‒10 IPv4互換アドレス

[図データ]

(7) IPv4射影アドレス

IPv4射影IPv6アドレスは,IPv6をサポートしていないIPv4専用ノードで使用されます。IPv4しかサポートしないホストとIPv6ホストが通信する場合にIPv6ホストはIPv4射影IPv4アドレスを使用します。プレフィックスは96ビット長で上位80ビットの0に続き16ビットの1が設定されます。IPv4射影アドレスを次の図に示します。

図3‒11 IPv4射影アドレス

[図データ]

(8) NSAP互換アドレス

IPv6でNSAPアドレスを変換して使用するためのアドレス形式です。NSAPをサポートするアドレスフォーマットプレフィックスとして上位7ビットに0000 001が定義されています。NSAP互換アドレスを次の図に示します。なお,NSAP互換アドレスはRFC4048で廃止されました。

図3‒12 NSAP互換アドレス

[図データ]

(9) IPX互換アドレス

IPv6でIPXアドレスを変換して使用するためのアドレス形式です。IPXをサポートするアドレスフォーマットプレフィックスとして上位7ビットに0000 010が定義されています。IPX互換アドレスを次の図に示します。なお,IPX互換アドレスはRFC3513で廃止されました。

図3‒13 IPX互換アドレス

[図データ]

(10) 6to4アドレス

6to4トンネルで使用するアドレス形式です。プレフィックスとして2002::/16が割り当てられていて,17ビット目から48ビット目にトンネルを使用するサイトのIPv4アドレスを設定します。6to4アドレスを次の図に示します。

図3‒14 6to4アドレス

[図データ]

(11) IPv4埋め込みIPv6アドレス

IPv4アドレスとIPv6アドレスの変換に使用されるアドレス形式です。プレフィックスとしてウェルノウン・プレフィックスを使用する形式と,任意のプレフィックスを使用する形式があります。本装置では通常のグローバルアドレスとして扱います。

ウェルノウン・プレフィックス(64:ff9b::/96)を使用する形式では,下位32ビットにIPv4アドレスが格納されます。ウェルノウン・プレフィックスを使用したIPv4埋め込みIPv6アドレスを次の図に示します。

図3‒15 IPv4埋め込みIPv6アドレス(ウェルノウン・プレフィックスを使用)

[図データ]

任意のプレフィックスを使用する形式では,プレフィックス長は32,40,48,56,64,96のどれかになります。プレフィックス長が32,40,48,56,64の形式には,8ビットの予約領域と末尾の予約領域があります。このうちプレフィックス長が40,48,56の形式では,IPv4アドレスが8ビットの予約領域によって分割されます。任意のプレフィックスを使用したIPv4埋め込みIPv6アドレスを次の図に示します。

図3‒16 IPv4埋め込みIPv6アドレス(任意のプレフィックスを使用)

[図データ]

(12) 廃棄プレフィックスアドレス

特定の送信元または宛先アドレスのパケットを廃棄するために使用されるアドレス形式です。プレフィックスとして100::/64が割り当てられています。本装置では通常のグローバルアドレスとして扱います。廃棄プレフィックスアドレスを次の図に示します。

図3‒17 廃棄プレフィックスアドレス

[図データ]

(13) Teredo IPv6アドレス

UDPによるIPv6トンネリングを実現するTeredoで使用されるアドレス形式です。プレフィックスとして2001::/32が割り当てられています。本装置では通常のグローバルアドレスとして扱います。Teredo IPv6アドレスを次の図に示します。

図3‒18 Teredo IPv6アドレス

[図データ]