トラブルシューティングガイド


5.2.2 DHCPv6リレーエージェントでIPv6アドレスが割り当てられない

DHCPv6リレーエージェントの通信トラブルが発生する要因として,次の5種類が考えられます。

ここでは,次に示すネットワーク構成を例として,障害部位および原因の切り分け手順を説明します。

図5‒5 DHCPv6リレーエージェントのネットワーク構成例

[図データ]

確認ポイント

(図中の記号)

パケット内の値

宛先IPv6アドレス

送信元IPv6アドレス

宛先UDPポート番号

送信元UDPポート番号

a.

ff02::1:2

クライアントリンクローカルアドレス

547

任意

b.

2001:db8:2::1

2001:db8:2::2

547

546

c.

2001:db8:3::1

2001:db8:3::2

547

546

d.

2001:db8:3::2

2001:db8:3::1

547

任意

e.

2001:db8:2::2

2001:db8:2::1

547

547

f.

クライアントリンクローカルアドレス

2001:db8:1::1

546

547

〈この項の構成〉

(1) DHCPv6リレーエージェントの状態および統計情報の確認

DHCPv6リレーエージェントの状態および統計情報を確認して,次の表に示す障害解析方法に従って原因を切り分けてください。

表5‒2 DHCPv6リレーエージェントの障害解析方法

項番

確認内容・コマンド

対応

1

クライアント側インタフェースで,クライアントから受信したパケット数(DHCPv6 Request Packets CountのReceive Packets)がカウントされているか確認してください。

  • show ipv6 dhcp relay statistics

カウントされている場合は,項番2へ。

カウントされていない場合は,次の内容を確認してください。

  • (2) DHCPv6リレーエージェント設定の確認」を参照して,DHCPv6パケットの転送先が設定されていることを確認してください。

  • クライアントを直接接続している場合は,RAの設定を確認してください。手順については,「(3) RA設定の確認」を参照してください。

  • 本装置のクライアント側ネットワークセグメント(図中の確認ポイントa.)について確認してください。手順については,「5.2.1 通信できない,または切断されている」を参照してください。

  • 該当クライアントの要因切り分け手順に従って,コンフィグレーションを確認してください。

2

ホップ数が最大数以上のため廃棄されたパケット数(DHCPv6 Error Packets CountのHops Over)がカウントされているか確認してください。

  • show ipv6 dhcp relay statistics

カウントされている場合は,「(2) DHCPv6リレーエージェント設定の確認」を参照して,DHCPv6パケットの最大ホップ数を確認してください。

カウントされていない場合は,項番3へ。

3

クライアント側インタフェースの転送先で,サーバ(転送先)宛てへの送信に成功したパケット数(DHCPv6 Request Packets CountのSend Packets)がカウントされているか確認してください。

  • show ipv6 dhcp relay statistics

カウントされている場合は,項番4へ。

カウントされていない場合は,次の内容を確認してください。

4

サーバから受信したパケット数(DHCPv6 Reply Packets CountのReceive Packets)がカウントされているか確認してください。

  • show ipv6 dhcp relay statistics

カウントされている場合は,項番5へ。

カウントされていない場合は,次の内容を確認してください。

5

クライアント宛てへの送信に成功したパケット数(DHCPv6 Reply Packets CountのSend Packets)がカウントされているか確認してください。

  • show ipv6 dhcp relay statistics

カウントされている場合は,次の内容を確認してください。

  • クライアントを直接接続している場合は,RAの設定を確認してください。手順については,「(3) RA設定の確認」を参照してください。

  • 該当サーバの要因切り分け手順に従ってコンフィグレーションを確認して,割り当てるIPv6アドレスが十分にあるかなどを確認してください。

  • 該当クライアントの要因切り分け手順に従って,コンフィグレーションを確認してください。

カウントされていない場合は,項番6へ。

6

バインディング(IA_PD)エントリ数が最大数を超えたため破棄されたパケット数(DHCPv6 Error Packets CountのLease Prefix Over)がカウントされているか確認してください。

  • show ipv6 dhcp relay statistics

カウントされている場合は,アドレス割り当て数(IA_PD)が本装置の最大数を超えないように,ネットワーク構成を見直してください。

カウントされていない場合は,次の内容を確認してください。

  • 本装置のクライアント側ネットワークセグメント(図中の確認ポイントf.)について確認してください。手順については,「5.2.1 通信できない,または切断されている」を参照してください。

  • 該当クライアントの要因切り分け手順に従って,コンフィグレーションを確認してください。

(2) DHCPv6リレーエージェント設定の確認

DHCPv6リレーエージェントのコンフィグレーション設定ミスによって,クライアントにIPv6アドレスが割り当てられないという原因が考えられます。DHCPv6リレーエージェントのコンフィグレーションを確認する手順を次に示します。

  1. クライアント側のIPv6インタフェースに,DHCPv6パケットの転送先が設定(コンフィグレーションコマンドipv6 dhcp relay destination)されていることを確認してください。

  2. DHCPv6パケットの転送先として設定(コンフィグレーションコマンドipv6 dhcp relay destination)されている,サーバもしくはDHCPv6リレーエージェントのIPv6アドレス,またはIPv6インタフェースが,ネットワーク構成と一致していることを確認してください。

  3. DHCPv6パケットの最大ホップ数が,本装置とクライアント間のDHCPv6リレーエージェントの数よりも大きな値に設定(コンフィグレーションコマンドipv6 dhcp relay maximum-hop-count)されていることを確認してください。

(3) RA設定の確認

クライアントを直接接続している場合,RAのコンフィグレーション設定ミスによってクライアントにIPv6アドレスが割り当てられないという原因が考えられます。RAのコンフィグレーションを確認する手順を次に示します。

  1. クライアント側のIPv6インタフェースに,アドレス自動管理設定フラグを有効にする設定(コンフィグレーションコマンドipv6 nd managed-config-flag)がされていることを確認してください。アドレス自動管理設定フラグとは,RAによるアドレス自動設定とは別に,DHCPv6などのRA以外の手段によってIPv6アドレスを端末に自動で設定させるフラグです。

    なお,DHCPv6によってIPv6アドレス以外の情報だけを取得する場合は,上記のコンフィグレーションが設定されていないことを確認してください。

  2. クライアント側のIPv6インタフェースに,アドレス以外情報設定フラグを有効にする設定(コンフィグレーションコマンドipv6 nd other-config-flag)がされていることを確認してください。アドレス以外情報設定フラグとは,DHCPv6などのRA以外の手段によってIPv6アドレス以外の情報を端末に自動で取得させるフラグです。

    なお,DHCPv6によってIPv6アドレスだけを割り当てる場合は,上記のコンフィグレーションが設定されていないことを確認してください。

(4) DHCPv6リレーエージェントとIPv6マルチキャストを同時に運用している場合の確認

本装置でDHCPv6リレーエージェントとIPv6マルチキャストを同時に使用する場合,DHCPv6リレーエージェントの転送先として各サーバを個別に設定していることを確認してください。もし,DHCPv6パケットの転送先として全サーバ宛てを指定しているときは,次の点を確認してください。