コンフィグレーションガイド Vol.3


12.1.7 VRRPのサポート規格

本装置では複数のVRRPの規格をサポートしているため,既存システムで採用されている規格に合わせて,柔軟に仮想ルータを設定できます。VRRPの規格を仮想ルータに適用するには,コンフィグレーションコマンドvrrp modeでVRRP動作モードに対応するパラメータを設定します。

サポートしているVRRPの規格と対応するvrrp modeコマンドのパラメータを次の表に示します。

表12‒2 VRRPの規格と対応するvrrp modeコマンドのパラメータ

規格

パラメータ

IPv4

RFC3768

rfc3768

RFC5798

rfc5798(デフォルト動作)

draft-ietf-vrrp-unified-spec-02

ietf-unified-spec-02

IPv6

RFC5798

rfc5798(デフォルト動作)

draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-02

ietf-ipv6-spec-02

draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-07

ietf-ipv6-spec-07

draft-ietf-vrrp-unified-spec-02

ietf-unified-spec-02

ADVERTISEMENTパケットのフォーマットやフィールドの意味は規格ごとに異なります。そのため,仮想ルータを構成する装置間で異なる設定にすると,ADVERTISEMENTパケットを不正パケットと判断して破棄してしまい,お互いがマスタ状態になることがあります。したがって,仮想ルータを構成する装置間では同じ規格に従うようにコンフィグレーションを設定してください。

〈この項の構成〉

(1) RFC3768に従った動作の概要

IPv4仮想ルータでサポートしています。

VRRPパケットVer.2(RFC3768で規定されているパケットフォーマット)を使用してADVERTISEMENTを行い,ADVERTISEMENTパケットの認証機能が利用できます。

本装置に設定されたADVERTISEMENTパケットの送信間隔を基に,障害検出時間を決定します。

(2) RFC5798に従った動作の概要(デフォルト動作)

IPv4/IPv6仮想ルータでサポートしていて,IPv4/IPv6仮想ルータでのデフォルト動作です。

VRRPパケットVer.3(RFC5798で規定されているパケットフォーマット)を使用してADVERTISEMENTを行います。

マスタ装置からのADVERTISEMENTパケットの受信によって得られるマスタ装置のADVERTISEMENTパケットの送信間隔を基に,障害検出時間を決定します。

ADVERTISEMENTパケットの認証機能は利用できません。

(3) draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-02に従った動作の概要

IPv6仮想ルータでサポートしています。

VRRPパケットVer.3(draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-02で規定されているパケットフォーマット)を使用してADVERTISEMENTを行い,ADVERTISEMENTパケットの認証機能が利用できます。

本装置に設定されたADVERTISEMENTパケットの送信間隔を基に,障害検出時間を決定します。

(4) draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-07に従った動作の概要

IPv6仮想ルータでサポートしています。

VRRPパケットVer.3(draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-07で規定されているパケットフォーマット)を使用してADVERTISEMENTを行います。

本装置に設定されたADVERTISEMENTパケットの送信間隔を基に,障害検出時間を決定します。

ADVERTISEMENTパケットの認証機能は利用できません。

(5) draft-ietf-vrrp-unified-spec-02に従った動作の概要

IPv4/IPv6仮想ルータでサポートしています。

VRRPパケットVer.3(draft-ietf-vrrp-unified-spec-02で規定されているパケットフォーマット)を使用してADVERTISEMENTを行います。

マスタ装置からのADVERTISEMENTパケットの受信によって得られるマスタ装置のADVERTISEMENTパケットの送信間隔を基に,障害検出時間を決定します。

ADVERTISEMENTパケットの認証機能は利用できません。

(6) 障害検出時間について

本装置では,仮想ルータが次に示す規格に従って動作している場合,ADVERTISEMENTパケットの送信間隔をミリ秒単位で指定すると,すばやく障害を検出して,仮想ルータを切り替えられます。

すばやくVRRPを切り替えるためには,障害検出時間を短くする必要があります。障害検出時間は,ADVERTISEMENTパケットの送信間隔を基に,次の式で算出されます。

 障害検出時間=ADVERTISEMENTパケット送信間隔×3+Skew_Time

なお,Skew_Timeの算出方法はVRRPの規格ごとに異なります。VRRPの規格とSkew_Timeの算出方法を次の表に示します。

表12‒3 VRRPの規格とSkew_Time算出方法

VRRPの規格

ADVERTISEMENTパケット送信間隔の指定単位

Skew_Time

RFC3768

(256 - Priority※1) / 256

(単位:秒)

RFC5798

1/100秒

((256 - priority※1) * Master_Adver_Interval※2) /256

(単位:Master_Adver_Interval※2と同じ)

draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-02

(256 - Priority※1) / 256

(単位:秒)

draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-07

1/100秒

((256 - priority※1) * Advertisement_Interval※3) / 256

(単位:Advertisement_Interval※3と同じ)

draft-ietf-vrrp-unified-spec-02

1/100秒

((256 - priority※1) * Master_Adver_Interval※2) /256

(単位:Master_Adver_Interval※2と同じ)

注※1 仮想ルータの優先度

注※2 マスタ装置のADVERTISEMENTパケット送信間隔

注※3 自装置に設定されたADVERTISEMENTパケット送信間隔

本装置では,仮想ルータがRFC5798,draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-07,またはdraft-ietf-vrrp-unified-spec-02で動作している場合,ADVERTISEMENTパケットの送信間隔に250ミリ秒以下を指定すると,障害検出時間を1秒以内に設定できます。