コンフィグレーションガイド Vol.2
マルチプルスパニングツリーには,次に示す特長があります。
- MSTインスタンスによって,ロードバランシングを可能にしています。
- MSTリージョンによって,大規模なネットワーク構成を中小構成に分割することでネットワーク設計が容易になります。
以降,これらを実現するためのマルチプルスパニングツリーの機能概要を説明します。
- <この項の構成>
- (1) MSTインスタンス
- (2) MSTリージョン
(1) MSTインスタンス
マルチプルスパニングツリーは,複数のVLANをまとめたMSTインスタンス(MSTI:Multiple Spanning Tree Instance)というグループごとにスパニングツリーを構築でき,MSTインスタンスごとにロードバランシングができます。PVST+によるロードバランシングでは,VLAN数分のツリーが必要でしたが,マルチプルスパニングツリーではMSTインスタンスによって,計画したロードバランシングに従ったツリーだけで済みます。その結果,PVST+とは異なりVLAN数の増加に比例したCPU負荷およびネットワーク負荷の増加を抑えられます。本装置では最大16個のMSTインスタンスが設定できます。
MSTインスタンスイメージを次の図に示します。
図5-11 MSTインスタンスイメージ
この例では,ネットワーク上に二つのインスタンスを設定して,ロードバランシングをしています。インスタンス0には,VLAN 10およびVLAN 20を,インスタンス1にはVLAN 30を所属させています。
(2) MSTリージョン
マルチプルスパニングツリーでは,複数の装置をグルーピングしてMSTリージョンとして扱えます。同一のMSTリージョンに所属させるには,リージョン名,リビジョン番号,MSTインスタンスIDとVLANの対応を同じにする必要があります。これらはコンフィグレーションで設定します。ツリーの構築はMSTリージョン間とMSTリージョン内で別々に行い,MSTリージョン内のトポロジはMSTインスタンス単位に構築できます。
次に,MSTリージョン間やMSTリージョン内で動作するスパニングツリーについて説明します。
- CST
CST(Common Spanning Tree)は,MSTリージョン間や,シングルスパニングツリーを使用しているブリッジ間の接続を制御するスパニングツリーです。このトポロジはシングルスパニングツリーと同様で物理ポートごとに計算するので,ロードバランシングはできません。
- IST
IST(Internal Spanning Tree)は,MSTリージョン外と接続するために,MSTリージョン内でDefault動作するトポロジのことを指し,MSTインスタンスID 0が割り当てられます。MSTリージョン外と接続しているポートを境界ポートと呼びます。また,リージョン内,リージョン間でMST BPDUを送受信する唯一のMSTインスタンスとなります。全MSTインスタンスのトポロジ情報は,MST BPDUにカプセル化して通知します。
- CIST
CIST(Common and Internal Spanning Tree)は,ISTとCSTとを合わせたトポロジを指します。
マルチプルスパニングツリー概要を次の図に示します。
図5-12 マルチプルスパニングツリー概要
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