コンフィグレーションガイド

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7.3.7　マルチプルスパニングツリー（ロードバランシング）の設定

＜この項の構成＞
(1)　設定内容の概要
(2)　構成図と設定条件
(3)　コンフィグレーション例

(1)　設定内容の概要

二つのMSTインスタンスによるマルチプルスパニングツリーを構築し，ロードバランシングを行う設定例を示します。

(2)　構成図と設定条件

［構成図］

図7-18　ロードバランシング

[図データ]

図7-19　MSTインスタンス1のトポロジ

[図データ]

図7-20　MSTインスタンス2のトポロジ

[図データ]

［設定条件］
  1. 各装置にマルチプルスパニングツリーを設定します。
  2. 各装置にMSTインスタンス1にVLAN10，VLAN20を設定，MSTインスタンス2にVLAN30，VLAN40を設定します。
  3. 通常時，本装置AがMSTインスタンス1のルートブリッジ，本装置BがMSTインスタンス2のルートブリッジとして，それぞれが稼働するようbridge-priorityを設定します。
  4. MSTインスタンス1では，本装置Aの0/1と本装置Dの1/4が通信経路となるようにpath-costを設定します。
  5. MSTインスタンス2では，本装置Bの1/0と本装置Cの0/5が通信経路となるようにpath-costを設定します。

(3)　コンフィグレーション例

［コマンドによる設定］

＜本装置A＞
 1    (config)# vlan 10,20,30,40
      [vlan 10,20,30,40]
 2    (config)# tagged-port 0/0-2
      [vlan 10,20,30,40]
 3    (config)# exit
 4    (config)# spanning-tree mst
      [spanning-tree mst]
 5    (config)# instance 1
      [spanning-tree mst instance 1]
 6    (config)# instance-vlan 10,20
      [spanning-tree mst instance 1]
 7    (config)# bridge-priority 4096
      [spanning-tree mst instance 1]
 8    (config)# path-cost 20000 0/0-2
      [spanning-tree mst instance 1]
 9    (config)# exit
      [spanning-tree mst]
10    (config)# instance 2
      [spanning-tree mst instance 2]
11    (config)# instance-vlan 30,40
      [spanning-tree mst instance 2]
12    (config)# bridge-priority 8192
      [spanning-tree mst instance 2]
13    (config)# path-cost 10000 0/2
      [spanning-tree mst instance 2]
14    (config)# path-cost 20000 0/0-1
      [spanning-tree mst instance 2]
15    (config)# exit
      [spanning-tree mst]
16    (config)# exit

表7-32　本装置Aのコンフィグレーション解説

解説番号 解説
1 ポートVLAN10，VLAN20，VLAN30，VLAN40を定義します。
2 VLAN10，VLAN20，VLAN30，VLAN40のTaggedポートとしてポート0/0，0/1，0/2を割り当てます。
3 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
4〜6 MSTインスタンス1に所属するVLANにVLAN10，VLAN20を設定します。
7 本装置をMSTインスタンス1内でのルートブリッジとするため，ブリッジ優先度に4096を設定します。
8 MSTインスタンス1内で本装置A，本装置D間の経路が選ばれるよう，パスコストに20000を設定します。
9 spanning-tree mst instanceサブコマンドモードからspanning-tree mstサブコマンドモードに戻ります。
10，11 MSTインスタンス2に所属するVLANにVLAN30，VLAN40を設定します。
12 本装置をMSTインスタンス2内での指定ブリッジとするために，ブリッジ優先度に8192を設定します。
13，14 MSTインスタンス2内で本装置A，本装置B間の経路が選ばれるよう，0/2のパスコストに10000を設定します。それ以外は20000を設定しています。
15 spanning-tree mst instanceサブコマンドモードからspanning-tree mstサブコマンドモードに戻ります。
16 spanning-tree mstサブコマンドモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。

＜本装置B＞
 1    (config)# vlan 10,20,30,40
      [vlan 10,20,30,40]
 2    (config)# tagged-port 1/0-2
      [vlan 10,20,30,40]
 3    (config)# exit
 4    (config)# spanning-tree mst
      [spanning-tree mst]
 5    (config)# instance 1
      [spanning-tree mst instance 1]
 6    (config)# instance-vlan 10,20
      [spanning-tree mst instance 1]
 7    (config)# bridge-priority 8192
      [spanning-tree mst instance 1]
 8    (config)# path-cost 10000 1/2
      [spanning-tree mst instance 1]
 9    (config)# path-cost 20000 1/0-1
      [spanning-tree mst instance 1]
10    (config)# exit
      [spanning-tree mst]
11    (config)# instance 2
      [spanning-tree mst instance 2]
12    (config)# instance-vlan 30,40
      [spanning-tree mst instance 2]
13    (config)# bridge-priority 4096
      [spanning-tree mst instance 2]
14    (config)# path-cost 20000 1/0-2
      [spanning-tree mst instance 2]
15    (config)# exit
      [spanning-tree mst]
16    (config)# exit

表7-33　本装置Bのコンフィグレーション解説

解説番号 解説
1 ポートVLAN10，VLAN20，VLAN30，VLAN40を定義します。
2 VLAN10，VLAN20，VLAN30，VLAN40のTaggedポートとしてポート1/0，1/1，1/2を割り当てます。
3 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
4〜6 MSTインスタンス1に所属するVLANにVLAN10，VLAN20を設定します。
7 本装置をMSTインスタンス1内での指定ブリッジとするために，ブリッジ優先度に8192を設定します。
8，9 MSTインスタンス1内で本装置A，本装置B間の経路が選ばれるよう，1/2のパスコストに10000を設定します。それ以外は20000を設定しています。
10 spanning-tree mst instanceサブコマンドモードからspanning-tree mstサブコマンドモードに戻ります。
11，12 MSTインスタンス2に所属するVLANにVLAN30，VLAN40を設定します。
13 本装置をMSTインスタンス2内でのルートブリッジとするため，ブリッジ優先度に4096を設定します。
14 MSTインスタンス2内で本装置B，本装置C間の経路が選ばれるよう，パスコストに20000を設定します。
15 spanning-tree mst instanceサブコマンドモードからspanning-tree mstサブコマンドモードに戻ります。
16 spanning-tree mstサブコマンドモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。

＜本装置C＞
 1    (config)# vlan 10
      [vlan 10]
 2    (config)# untagged-port 0/0
      [vlan 10]
 3    (config)# tagged-port 0/4-5
      [vlan 10]
 4    (config)# exit
 5    (config)# vlan 20
      [vlan 20]
 6    (config)# untagged-port 0/1
      [vlan 20]
 7    (config)# tagged-port 0/4-5
      [vlan 20]
 8    (config)# exit
 9    (config)# vlan 30
      [vlan 30]
10    (config)# untagged-port 0/2
      [vlan 30]
11    (config)# tagged-port 0/4-5
      [vlan 30]
12    (config)# exit
13    (config)# vlan 40
      [vlan 40]
14    (config)# untagged-port 0/3
      [vlan 40]
15    (config)# tagged-port 0/4-5
      [vlan 40]
16    (config)# exit
17    (config)# spanning-tree mst
      [spanning-tree mst]
18    (config)# instance 1
      [spanning-tree mst instance 1]
19    (config)# instance-vlan 10,20
      [spanning-tree mst instance 1]
20    (config)# bridge-priority 32768
      [spanning-tree mst instance 1]
21    (config)# path-cost 10000 0/4
      [spanning-tree mst instance 1]
22    (config)# path-cost 20000 0/5
      [spanning-tree mst instance 1]
23    (config)# exit
      [spanning-tree mst]
24    (config)# instance 2
      [spanning-tree mst instance 2]
25    (config)# instance-vlan 30,40
      [spanning-tree mst instance 2]
26    (config)# bridge-priority 32768
      [spanning-tree mst instance 2]
27    (config)# path-cost 10000 0/5
      [spanning-tree mst instance 1]
28    (config)# path-cost 20000 0/4
      [spanning-tree mst instance 2]
29    (config)# exit
      [spanning-tree mst]
30    (config)# exit

表7-34　本装置Cのコンフィグレーション解説

解説番号 解説
1 ポートVLAN10を定義します。
2 VLAN10のUntaggedポートとしてポート0/0を割り当てます。
3 VLAN10のTaggedポートとしてポート0/4，0/5を割り当てます。
4 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
5 ポートVLAN20を定義します。
6 VLAN20のUntaggedポートとしてポート0/1を割り当てます。
7 VLAN20のTaggedポートとしてポート0/4，0/5を割り当てます。
8 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
9 ポートVLAN30を定義します。
10 VLAN30のUntaggedポートとしてポート0/2を割り当てます。
11 VLAN30のTaggedポートとしてポート0/4，0/5を割り当てます。
12 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
13 ポートVLAN40を定義します。
14 VLAN40のUntaggedポートとしてポート0/3を割り当てます。
15 VLAN40のTaggedポートとしてポート0/4，0/5を割り当てます。
16 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
17〜19 MSTインスタンス1に所属するVLANにVLAN10，VLAN20を設定します。
20 本装置をMSTインスタンス1内での指定ブリッジとするため，ブリッジ優先度に32768を設定します。
21，22 MSTインスタンス1内で本装置A，本装置C間の経路が選ばれるよう，0/4のパスコストに10000を設定します。それ以外は20000を設定しています。
23 spanning-tree mst instanceサブコマンドモードからspanning-tree mstサブコマンドモードに戻ります。
24，25 MSTインスタンス2に所属するVLANにVLAN30，VLAN40を設定します。
26 本装置をMSTインスタンス2内での指定ブリッジとするため，ブリッジ優先度に32768を設定します。
27，28 MSTインスタンス1内で本装置B，本装置C間の経路が選ばれるよう，0/5のパスコストに10000を設定します。それ以外は20000を設定しています。
29 spanning-tree mst instanceサブコマンドモードからspanning-tree mstサブコマンドモードに戻ります。
30 spanning-tree mstサブコマンドモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。

＜本装置D＞
 1    (config)# vlan 10
      [vlan 10]
 2    (config)# untagged-port 1/0
      [vlan 10]
 3    (config)# tagged-port 1/4-5
      [vlan 10]
 4    (config)# exit
 5    (config)# vlan 20
      [vlan 20]
 6    (config)# untagged-port 1/1
      [vlan 20]
 7    (config)# tagged-port 1/4-5
      [vlan 20]
 8    (config)# exit
 9    (config)# vlan 30
      [vlan 30]
10    (config)# untagged-port 1/2
      [vlan 30]
11    (config)# tagged-port 1/4-5
      [vlan 30]
12    (config)# exit
13    (config)# vlan 40
      [vlan 40]
14    (config)# untagged-port 1/3
      [vlan 40]
15    (config)# tagged-port 1/4-5
      [vlan 40]
16    (config)# exit
17    (config)# spanning-tree mst
      [spanning-tree mst]
18    (config)# instance 1
      [spanning-tree mst instance 1]
19    (config)# instance-vlan 10,20
      [spanning-tree mst instance 1]
20    (config)# bridge-priority 32768
      [spanning-tree mst instance 1]
21    (config)# path-cost 10000 1/4
      [spanning-tree mst instance 1]
22    (config)# path-cost 20000 1/5
      [spanning-tree mst instance 1]
23    (config)# exit
      [spanning-tree mst]
24    (config)# instance 2
      [spanning-tree mst instance 2]
25    (config)# instance-vlan 30,40
      [spanning-tree mst instance 2]
26    (config)# bridge-priority 32768
      [spanning-tree mst instance 2]
27    (config)# path-cost 10000 1/5
      [spanning-tree mst instance 2]
28    (config)# path-cost 20000 1/4
      [spanning-tree mst instance 2]
29    (config)# exit
      [spanning-tree mst]
30    (config)# exit

表7-35　本装置Dのコンフィグレーション解説

解説番号 解説
1 ポートVLAN10を定義します。
2 VLAN10のUntaggedポートとしてポート1/0を割り当てます。
3 VLAN10のTaggedポートとしてポート1/4，1/5を割り当てます。
4 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
5 ポートVLAN20を定義します。
6 VLAN20のUntaggedポートとしてポート1/1を割り当てます。
7 VLAN20のTaggedポートとしてポート1/4，1/5を割り当てます。
8 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
9 ポートVLAN30を定義します。
10 VLAN30のUntaggedポートとしてポート1/2を割り当てます。
11 VLAN30のTaggedポートとしてポート1/4，1/5を割り当てます。
12 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
13 ポートVLAN40を定義します。
14 VLAN40のUntaggedポートとしてポート1/3を割り当てます。
15 VLAN40のTaggedポートとしてポート1/4，1/5を割り当てます。
16 vlanモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。
17〜19 MSTインスタンス1に所属するVLANにVLAN10，VLAN20を設定します。
20 本装置をMSTインスタンス1内での指定ブリッジとするため，ブリッジ優先度に32768を設定します。
21，22 MSTインスタンス1内で本装置A，本装置D間の経路が選ばれるよう，1/4のパスコストに10000を設定します。それ以外は20000を設定しています。
23 spanning-tree mst instanceサブコマンドモードからspanning-tree mstサブコマンドモードに戻ります。
24，25 MSTインスタンス2に所属するVLANにVLAN30，VLAN40を設定します。
26 本装置をMSTインスタンス2内での指定ブリッジとするため，ブリッジ優先度に32768を設定します。
27，28 MSTインスタンス2内で本装置B，本装置D間の経路が選ばれるよう，1/5のパスコストに10000を設定します。それ以外は20000を設定しています。
29 spanning-tree mst instanceサブコマンドモードからspanning-tree mstサブコマンドモードに戻ります。
30 spanning-tree mstサブコマンドモードからグローバルコンフィグモードに戻ります。

［コンフィグレーションの表示］

＜本装置A＞
(config)# show vlan
vlan 10
  tagged-port 0/0-2
!
vlan 20
  tagged-port 0/0-2
!
vlan 30
  tagged-port 0/0-2
!
vlan 40
  tagged-port 0/0-2
!
(config)# show spanning-tree mst
spanning-tree mst
  instance 1
    instance-vlan 10,20
    bridge-priority 4096
    path-cost 20000 0/0-2
  instance 2
    instance-vlan 30,40
    bridge-priority 8192
    path-cost 20000 0/0-1
    path-cost 10000 0/2

＜本装置B＞
(config)# show vlan
vlan 10
  tagged-port 1/0-2
!
vlan 20
  tagged-port 1/0-2
!
vlan 30
  tagged-port 1/0-2
!
vlan 40
  tagged-port 1/0-2
!
(config)# show spanning-tree mst
spanning-tree mst
  instance 1
    instance-vlan 10,20
    bridge-priority 8192
    path-cost 20000 1/0-1
    path-cost 10000 1/2
  instance 2
    instance-vlan 30,40
    bridge-priority 4096
    path-cost 20000 1/0-2

＜本装置C＞
(config)# show vlan
vlan 10
  untagged-port 0/0
  tagged-port 0/4-5
!
vlan 20
  untagged-port 0/1
  tagged-port 0/4-5
!
vlan 30
  untagged-port 0/2
  tagged-port 0/4-5
!
vlan 40
  untagged-port 0/3
  tagged-port 0/4-5
!
(config)# show spanning-tree mst
spanning-tree mst
  instance 1
    instance-vlan 10,20
    bridge-priority 32768
    path-cost 10000 0/4
    path-cost 20000 0/5
  instance 2
    instance-vlan 30,40
    bridge-priority 32768
    path-cost 20000 0/4
    path-cost 10000 0/5

＜本装置D＞
(config)# show vlan
vlan 10
  untagged-port 1/0
  tagged-port 1/4-5
!
vlan 20
  untagged-port 1/1
tagged-port 1/4-5
!
vlan 30
  untagged-port 1/2
  tagged-port 1/4-5
!
vlan 40
  untagged-port 1/3
  tagged-port 1/4-5
!
(config)# show spanning-tree mst
spanning-tree mst
  instance 1
    instance-vlan 10,20
    bridge-priority 32768
    path-cost 10000 1/4
    path-cost 20000 1/5
  instance 2
    instance-vlan 30,40
    bridge-priority 32768
    path-cost 20000 1/4
    path-cost 10000 1/5

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