解説書 Vol.1

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16.6.1 IPv6マルチキャスト中継

本装置でIPv6マルチキャストパケットを中継する場合には次の点に注意してください。

<この項の構成>
(1) IPv6 PIM-SMおよびIPv6 PIM-SSM共通
(2) IPv6 PIM-SM
(3) IPv6 PIM-SSM

(1) IPv6 PIM-SMおよびIPv6 PIM-SSM共通

(a) 二重化装置での系切替に伴う中継断【AX7800R】

本装置は,二重化装置による運用で現用系から待機系に切り替わる場合は,IPv6マルチキャスト経路情報を再学習するまでIPv6マルチキャスト通信が停止するので注意してください。

ただし,IPv6 PIM-SSMの場合,コンフィグレーションによって,IPv6マルチキャスト通信を停止することなく系切替ができます。

(b) ルーティングプログラムの再起動に伴う中継断

本装置は,restart ipv6-multicastコマンド実行によるIPv6マルチキャストルーティングプログラムの再起動を行う場合は,IPv6マルチキャスト経路情報を再学習するまでIPv6マルチキャスト通信が停止するので注意してください。

(c) ポイント−ポイント型の回線

ユニキャストのスタティック経路を設定したポイント−ポイント型の回線を使用して,IPv6マルチキャスト通信を行う場合は,接続先アドレスを明示的に指定(ゲートウェイ指定)してください。

(d) タイミングによるパケット追い越し

本装置で送信者からのマルチキャストデータと受信者側からのPIM-Joinメッセージを同時に受信した場合,タイミングによっては一部のパケットで追い越しが発生し,パケットの順序が入れ替わる場合があります。

(e) VRRPとの同時使用

IPv6マルチキャストルーティングプロトコルとVRRPを同時に使用する場合,IPv6マルチキャストソフト処理パケット制御機能の受信パケット数のパラメータをすべて200以下に設定してください。

(2) IPv6 PIM-SM

IPv6でPIM-SMを使用する場合は次の点に注意してください。

(a) ソフトウェア中継処理時のパケットロス

本装置は,最初のIPv6マルチキャストパケット受信でIPv6マルチキャスト通信を行うためのIPv6マルチキャスト中継エントリをハードウェアへ設定します。エントリを作成するまでの間ソフトウェアでIPv6マルチキャストパケットを中継するため,一時的にパケットをロスする場合があります。

(b) ハードウェア中継切り替え時のパケット追い越し

本装置ではハードウェアへのIPv6マルチキャスト中継エントリの設定が完了すると,それまでのソフトウェアによるIPv6マルチキャストパケットの中継処理がハードウェア中継へと切り替わります。この時に一部のパケットで追い越しが発生し,パケットの順序が入れ替わる場合があります。

(c) パス切り替え時の二重中継またはパケットロス

本装置は,ランデブーポイント経由でのIPv6マルチキャストパケット中継時およびランデブーポイント経由から最短パス経由への切り替え時,一時的に二重中継またはパケットロスが発生する場合があります。

ランデブーポイント経由のIPv6マルチキャストパケットの中継動作およびランデブーポイント経由から最短パス経由切り替え動作は「16.4.1 IPv6 PIM-SMの動作」を参照してください。

(d) 装置アドレス定義必須

本装置をfirst-hop-routerとして使用する場合,ランデブーポイントへの通信には装置管理情報のローカルアドレスで定義されたIPv6アドレスが用いられます。そのためIPv6 PIM-SMでは,IPv4 PIM-SMとは異なりランデブーポイントやBSRでない場合にも装置アドレスの定義が必須です。

(e) 装置アドレス到達可能性

本装置をランデブーポイントおよびブートストラップルータとして使用する場合,装置管理情報のローカルアドレスで定義されたIPv6アドレスがランデブーポイントとブートストラップルータのアドレスとなります。この装置管理情報のローカルアドレスはIPv6マルチキャスト通信する全装置でユニキャストでのルート認識および通信ができる必要があります。

(f) 静的ランデブーポイント

静的ランデブーポイントは,BSRを使用しないでランデブーポイントを指定する機能です。静的ランデブーポイントはコンフィグレーションによって定義します。

静的ランデブーポイントはBSRからBootstrapメッセージによって広告されたランデブーポイント候補との共存もできます。共存時,静的ランデブーポイントはBSRからBootstrapメッセージによって広告されたランデブーポイント候補よりも優先されます。

なお,ランデブーポイント候補のルータは,ランデブーポイントルータアドレスが自アドレスであることを認識することでランデブーポイントとして動作します。したがって,BSRを使用しないで静的ランデブーポイントを使ってネットワークを設計する場合は,ランデブーポイント候補のルータでも静的ランデブーポイントの定義が必要です。

また,静的ランデブーポイントを使用する場合,同一ネットワーク上の全ルータに対して同じ定義をする必要があります。

(3) IPv6 PIM-SSM

IPv6でPIM-SSMを使用する場合は次の点に注意してください。

(a) 系切替時のnonstop forwarding【AX7800R】

IPv6 PIM-SSMに系切替時に通信を継続することが可能なnonstop forwarding機能をサポートしています。本機能は,コンフィグレーションでnonstop-forwardingを設定した場合だけ有効になります。nonstop forwarding機能使用時の注意事項を次に示します。

  1. 系切替後のIPv6マルチキャストルーティングテーブルの再学習完了時間は約595秒です。再学習の開始と終了は運用ログメッセージとして出力します。運用ログメッセージの詳細については,マニュアル「メッセージ・ログレファレンス」を参照してください。
  2. 系切替後のIPv6マルチキャストルーティングテーブルの再学習状況は,次に示す運用コマンドで確認できます。各コマンドの詳細については,マニュアル「運用コマンドレファレンス Vol.2」を参照してください。
    • show ipv6 mroute
    • show ipv6 mcache
    • show ipv6 pim mcache
  3. 系切替後のIPv6マルチキャストルーティングテーブルの再学習時間内の注意事項を次に示します。各注意事項は再学習完了後に解消されます。
    • 再学習中にIPv6マルチキャストデータの二重中継が発生した場合,その解消に時間が掛かることがあります。
    • 再学習中に中継中のIPv6マルチキャストエントリのインタフェースに障害が発生し,その後回復した場合,再学習に関係なく中継を再開することがあります。
    • 再学習中に中継中のIPv6マルチキャストエントリのインタフェースをコンフィグレーションまたはプロトコル処理によって削除した場合,中継が停止しないことがあります。
    • 再学習中に中継中のIPv6マルチキャストエントリの受信インタフェースが変更された場合,パケットロスが発生することがあります。
    • 再学習中に閉塞状態のPRU/NIFを運用状態にした場合,運用状態のほかのPRU/NIFでのIPv6マルチキャスト中継が一時的に停止することがあります。
    • 再学習中に閉塞状態のPRU/NIFを運用状態にした場合,該当するPRU/NIFでのIPv6マルチキャスト中継の開始に時間が掛かることがあります。これは,次に示す条件をすべて満たしているときに発生することがあります。
      ・IPv6マルチキャストエントリの中継先インタフェースがリンクアグリゲーションである場合
      ・該当リンクアグリゲーションが複数PRUにわたっている場合
      ・該当リンクアグリゲーションの閉塞状態であるPRU/NIFを運用状態にした場合
  4. nonstop forwardingが有効な状態で系切替したあと,マルチキャスト中継エントリを再学習している間,PIM-SSMの動作範囲をコンフィグレーションで変更しないでください。マルチキャスト中継エントリ再学習期間中にPIM-SSM動作範囲をコンフィグレーションで変更し,マルチキャスト中継エントリがPIM-SMからPIM-SSM経路またはPIM-SSMからPIM-SM経路となった場合,マルチキャスト中継の動作は保証できません。
  5. 系切替時にIPv6マルチキャストインタフェースの認識に時間が掛かる場合があります。pim6コンフィグレーションのhello-intervalがデフォルト値の場合,45秒間IPv6マルチキャストインタフェースの認識ができないと近隣ルータがタイムアウトし,IPv6マルチキャスト中継が中断します。その場合は,pim6コンフィグレーションのhello-interval,join-prune-intervalの値を大きくしてください。hello-interval,join-prune-intervalの算出式と,IPv6マルチキャストインタフェースを8,000個定義した場合の推奨値を次の表に示します。

    表16-16 hello-interval,join-prune-intervalの算出式と,IPv6マルチキャストインタフェースを8,000個定義した場合の推奨値

    設定項目 算出式(秒) マルチキャストインタフェースを
    8,000個定義した場合の推奨値(秒)
    hello-interval a/1.5 150
    join-prune-interval (a + b + c + d + e)/2.5 210

    a:装置切り替え時間
    系切替後,運用コマンドshow ipv6 pim interfaceまたはshow ipv6 mld interfaceコマンドで全IPv6マルチキャストインタフェースが表示されるまでの時間に余裕を持たせた(約5割増)時間。

    b:MLD Queryメッセージ送信周期

    c:Multicast Listner Report最大応答待ち時間(10秒固定)

    d:近隣ルータからのPIM-Helloメッセージ最大受信周期

    e:MLD Report/PIM Joinメッセージ集中によるプロトコル処理時間(15秒固定)

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