解説書 Vol.1
エキスポート機能はルータ上で同時に動作しているルーティングプロトコル間での経路情報の再配布を制御します。学習元プロトコルで学習した経路情報を,配布先プロトコルを使用してほかのシステム(ルータ)に広告します。
エキスポート・フィルタでは配布先プロトコルのフィルタリング条件(送出先)と学習元プロトコルのフィルタリング条件(送出経路情報)によって特定の宛先に特定の経路情報を送出できます。
- <この項の構成>
- (1) フィルタリング条件
- (2) 再配布する経路情報のメトリック値
エキスポート・フィルタでは配布先プロトコルのフィルタリング条件(送出先)と学習元プロトコルのフィルタリング条件(送出経路情報)によって,特定の宛先に特定の経路情報を送出できます。また,配布先プロトコルに依存する付加情報を配布先のフィルタリング条件ごとに指定できます。指定していない場合は,その配布先プロトコルのデフォルトの値となります。
指定できるフィルタリング条件を配布先プロトコルと学習元プロトコルに分け「表8-23 配布先プロトコルのフィルタリング条件」と「表8-24 学習元プロトコルのフィルタリング条件」に示します。なお,配布先プロトコルが,BGP4の場合は,「9.4.2 エキスポート・フィルタ(BGP4)」を参照してください。
配布先プロトコル フィルタリング条件(送出先) 付加情報 RIP
- 送信先インタフェース
- 送信先VPN ID
- メトリック値
OSPFASE
ただし,学習元が同じOSPFドメインのOSPF,OSPFASEの場合は制御できません。
- OSPFドメイン番号
- 送信先VPN ID
- メトリック値
- AS外経路タイプ
- タグ値
学習元プロトコル フィルタリング条件(送出経路情報) 備考 RIP
- 受信インタフェース
- 送信元ゲートウェイ
- 経路情報のタグ値
- 経路情報の宛先ネットワーク
- 学習元VPN ID
RIPで学習された経路情報 OSPF
- OSPFドメイン番号
- 経路情報の宛先ネットワーク
- 学習元VPN ID
OSPFで学習された経路情報 OSPFASE
- OSPFドメイン番号
- 経路情報のタグ値
- 経路情報の宛先ネットワーク
- 学習元VPN ID
OSPFのAS外経路情報 DIRECT
- インタフェース
- 経路情報の宛先ネットワーク
- 学習元VPN ID
直結インタフェースの経路情報 STATIC
- 送出元インタフェース
- 経路情報の宛先ネットワーク
- 学習元VPN ID
スタティックの経路情報 DEFAULT【OP-BGP】
- 経路情報の宛先ネットワーク
BGP4のDEFAULT経路情報 AGGREGATE
- 経路情報の宛先ネットワーク
- 学習元VPN ID
経路集約によって生成された経路情報
フィルタリング条件には再配布する経路情報のメトリック値,またはメトリック値に加算する値を指定できます。RIPで再配布する経路情報のメトリック値を「表8-25 再配布する経路情報のメトリック値(RIP)」に,OSPFで再配布する経路情報のメトリック値を「表8-26 再配布する経路情報のメトリック値(OSPFASE)」に示します。また,フィルタリング条件でオフセット指定(+指定)した場合に,RIPで再配布する経路情報のメトリック値を「表8-27 オフセット指定した場合に再配布する経路情報のメトリック値(RIP)」に,OSPFで再配布する経路情報のメトリック値を「表8-28 オフセット指定した場合に再配布する経路情報のメトリック値 (OSPFASE)」に示します。
metric指定 学習元プロトコル メトリック値 あり RIP 経路情報のメトリック値を引き継ぐ。 その他 エキスポート・フィルタで指定したメトリック値を使用します。 なし RIP 経路情報のメトリック値を引き継ぎます。 直結経路 直結経路(ブロードキャスト型回線)の場合,1で広告します。直結経路(ポイント−ポイント型回線の自装置側インタフェース)の場合,1で広告します。直結経路(ポイント−ポイント型回線の相手装置側インタフェース)の場合,2で広告します。 集約経路 集約経路の場合,1で広告します。 OSPF,OSPFASE,BGP4,IS-IS コンフィグレーションコマンドripのinherit-metricサブコマンドを指定した場合,経路情報のメトリック値またはMED属性値を引き継ぎます。ただし,値が1~15以外の場合は,RIPとして広告しません。そのほかの場合,デフォルト・メトリック値を使用します。 スタティック経路,デフォルト経路 デフォルト・メトリック値を使用します。 表8-26 再配布する経路情報のメトリック値(OSPFASE)
metric指定 学習元プロトコル メトリック値 あり 全プロトコル共通 エキスポート・フィルタで指定したメトリック値を使用します。 なし OSPF コンフィグレーションコマンドdefaults(ospfモード)のinherit-metricサブコマンドを指定した場合,経路情報のメトリック値を引き継ぎ,経路の種類がtype1になります。これ以外でコンフィグレーションコマンドospfのcostサブコマンド(パラメータ)を指定した場合,その指定値を使用します。そのほかの場合,デフォルト・メトリック値を使用します。 OSPFASE(Type1) コンフィグレーションコマンドripのinherit-metricサブコマンドを指定した場合,経路情報のメトリック値と経路の種類(type 1)およびタグ値を引き継ぎます。これ以外でコンフィグレーションコマンドospfのcostサブコマンド(パラメータ)を指定した場合,その指定値を使用します。そのほかの場合,デフォルト・メトリック値を使用します。 OSPFASE(Type 2) コンフィグレーションコマンドripのinherit-metricサブコマンドを指定した場合,経路情報のメトリック値に1を加えた値と経路の種類(type 2)およびタグ値を引き継ぎます。これ以外でコンフィグレーションコマンドospfのcostサブコマンド(パラメータ)を指定した場合,その指定値を使用します。そのほかの場合,デフォルト・メトリック値を使用します。 RIP,直結経路,集約経路,BGP4,スタティック経路,デフォルト経路,IS-IS コンフィグレーションコマンドripのinherit-metricサブコマンドを指定した場合,経路情報のメトリック値を引き継ぎます。経路情報にメトリック値またはMED属性値がない場合は,0を使用します。
また,値が16777215(10進数)以上の場合は,OSPFASEとして広告しません。経路の種類はデフォルト(ospfコマンドで指定のない場合はtype2)になります。上記以外でコンフィグレーションコマンドospfのcostサブコマンド(パラメータ)を指定した場合,その指定値を使用します。そのほかの場合,デフォルト・メトリック値を使用します。注 学習元プロトコルのOSPF,OSPFASEは配布先と異なるドメインに所属するOSPF,OSPFASEを示します。同一ドメインへの経路情報は再配布しません。
表8-27 オフセット指定した場合に再配布する経路情報のメトリック値(RIP)
学習元プロトコル メトリック値 RIP,直結経路,集約経路,スタティック経路,デフォルト経路, 「表8-25 再配布する経路情報のメトリック値(RIP)」に示すメトリック値に,オフセット値を加算した値を使用します。 BGP4,OSPF,OSPFASE,IS-IS 「表8-25 再配布する経路情報のメトリック値(RIP)」に示すメトリック値に,オフセット値を加算した値を使用します。ただし,コンフィグレーションコマンドripのinherit-metricサブコマンド指定によって,引き継いだメトリック値,またはMED属性値が0の場合は,0を基準にオフセット値を加算した値を使用します。 注 オフセット値の加算結果が16以上になった場合,経路情報は再配布しません。
表8-28 オフセット指定した場合に再配布する経路情報のメトリック値 (OSPFASE)
学習元プロトコル メトリック値 OSPF,OSPFASE ドメイン間で経路情報を再配布する場合は,「表8-26 再配布する経路情報のメトリック値(OSPFASE)」に示すメトリック値に,オフセット値を加算した値を使用します。(注:同一ドメインへの経路情報の再配布は行わないため,オフセット値の加算も行いません) RIP,BGP4,直結経路,集約経路,スタティック経路,デフォルト経路,IS-IS 「表8-26 再配布する経路情報のメトリック値(OSPFASE)」に示すメトリック値に,オフセット値を加算した値を使用します。 注 オフセット値の加算結果が16777215以上になった場合,経路情報は再配布しません。
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