解説書 Vol.1

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8.5.7 OSPFマルチバックボーン機能

本装置では,1台のルータ上でASを複数のOSPFネットワークに分割し,OSPFネットワークごとに別個に経路の交換,計算,生成を行うことができます。この機能をOSPFマルチバックボーンと呼びます。OSPFマルチバックボーン機能の構成例を次の図に示します。以降,独立した各OSPFネットワークのことを,OSPFドメインと呼びます。OSPFドメインは,最大四つ定義できます。

図8-40 OSPFマルチバックボーン機能の構成例

[図データ]

1台のルータが接続している複数のOSPFドメインは,それぞれ独立したOSPFネットワークとして動作します。このため,経路再配布についてのコンフィグレーションの定義がない場合には,一方のOSPFドメイン上の経路が他方のOSPFドメインへ配布されることはありません。すなわち,各ドメインは互いに異なるプロトコルとして動作します。経路再配布については「8.6 経路フィルタリング(RIP/OSPF)」を参照してください。

<この項の構成>
(1) OSPFドメイン間の経路優先
(2) マルチバックボーン機能使用時の注意事項

(1) OSPFドメイン間の経路優先

複数のOSPFドメインに同じ宛先への経路がある場合,OSPFのAS内経路ならドメイン番号の小さいドメインの経路が優先されます。同じ宛先のAS内経路とAS外経路がある場合,通常はAS内経路が優先されます。AS外経路では,基本的にドメイン番号の小さいOSPFドメインの経路が優先されます。ただし,AS外経路では,コンフィグレーションコマンドimportのpreferenceパラメータまたはコンフィグレーションコマンドdefaults(ospfモード)のpreferenceサブコマンドによってプレファレンス(優先度)値を指定できます。この場合,指定したプレファレンス値の小さい方の経路を優先します。OSPFドメイン間の経路優先の例を次の図に示します。

図8-41 OSPFドメイン間の経路優先の例

[図データ]

この図の構成例では,次の表に示すようなOSPFドメイン間の経路優先が行われます。

表8-18 OSPFドメイン間の経路優先

宛先 ドメイン1 ドメイン2 優先する経路を
含むドメイン
備考
10.0.1.0/24 10 (OSPF) 10 (OSPF) ドメイン1 ドメイン番号
10.0.2.0/24 10 (OSPF) 150 (OSPFASE) ドメイン1 プリファレンス値
10.0.3.0/24 150 (OSPFASE) 10 (OSPF) ドメイン2 プリファレンス値
10.0.4.0/24 150 (OSPFASE) 150 (OSPFASE) ドメイン1 ドメイン番号
10.0.5.0/24 150 (OSPFASE) 140 (OSPFASE) ドメイン2 プリファレンス値
(インポート・フィルタ)

(2) マルチバックボーン機能使用時の注意事項

(a) マルチバックボーン使用についての注意

ネットワークを複数のOSPFドメインに分割して運用した場合,ルーティングループの抑止やコストに基づいた経路選択などのOSPFの特長が,OSPFドメイン間の経路の選択や配布によって失われます。新規ネットワーク構築時など,ネットワークを複数のOSPFドメインに分割して運用する必要がない場合には,単一のOSPFネットワークとして構築することをお勧めします。

(b) 複数ドメイン使用時のインタフェース定義についての注意

インタフェースを同時に複数のOSPFドメインに定義しないでください。本装置に接続している各インタフェースは,それぞれ一つのドメインの一つのエリアだけに所属できます。複数のドメインでOSPFインタフェースとして定義した場合,対象のインタフェースは,どのOSPFドメインでもOSPFインタフェースとして動作しなくなります。

(c) 装置アドレス使用についての注意

装置アドレスを複数のOSPFドメインに広告する必要がある場合には,OSPF AS外経路として広告してください。装置アドレスをOSPF AS外経路として広告するには,「8.6.2 エキスポート・フィルタ(RIP/OSPF)」を参照してください。

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