解説書 Vol.1
エキスポート機能はルータ上で同時に動作しているルーティングプロトコル間で経路情報を再配布します。つまり,学習元プロトコルで学習した経路情報を配布先プロトコルを使用して他システム(ルータ)に広告します。
- <この項の構成>
- (1) フィルタリング条件
- (2) 再配布する経路情報のMED属性値
- (3) 拡張正規表現
- (4) ASパス正規表現
- (5) エキスポート設定時の注意事項
(1) フィルタリング条件
エキスポート・フィルタでは配布先プロトコルのフィルタリング条件(送出先)と学習元プロトコルのフィルタリング条件(送出経路情報)によって特定の宛先に特定の経路情報を送出できます。また,配布先プロトコルに依存する付加情報を配布先のフィルタリング条件ごとに指定できます。指定していない場合は,その配布先プロトコルのデフォルトの値となります。
指定できるフィルタリング条件を配布先プロトコルと学習元プロトコルに分け,「表15-16 配布先プロトコルのフィルタリング条件」と「表15-17 学習元プロトコルのフィルタリング条件」に示します。なお,配布先プロトコルが,RIPng,またはOSPFv3の場合は,「14.6.2 エキスポート・フィルタ(RIPng/OSPFv3)」を参照してください。
フィルタリング条件(送出先) 付加情報
- 送信先ピアアドレス
- 送信先ポリシーグループ番号
- 送信先AS番号
- LOCAL_PREF属性
- 追加ASパス長
- ORIGIN属性
- MED属性
- Community属性
学習元プロトコル フィルタリング条件(送出経路情報) 備考 RIPng
- 受信インタフェース
- 送信元ゲートウェイ
- 経路情報のタグ値
- 経路情報の宛先ネットワーク
RIPngで学習された経路情報 OSPF6
- OSPFv3ドメイン番号
- 経路情報の宛先ネットワーク
OSPFv3のAS内経路情報 OSPF6ASE
- OSPFv3ドメイン番号
- 経路情報のタグ値
- 経路情報の宛先ネットワーク
OSPFv3のAS外経路情報 BGP4+
- 送信元ピアアドレス
- 送信元AS番号
- 送信元ポリシーグループ番号
- 経路情報のAS_PATH属性
- 経路情報のORIGIN属性
- 経路情報のCommunity属性
- 経路情報の宛先ネットワーク
BGP4+で学習された経路情報 IS-IS
- 学習元レベル
- 経路情報の経路種別
- 経路情報のメトリック種別
- 経路情報の宛先ネットワーク
IS-ISで学習された経路 DIRECT
- インタフェース
- 経路情報の宛先ネットワーク
直結インタフェースの経路情報 STATIC
- 送出元インタフェース
- 経路情報の宛先ネットワーク
スタティックの経路情報 DEFAULT
- 経路情報の宛先ネットワーク
BGPのDEFAULT経路情報 AGGREGATE
- 経路情報の宛先ネットワーク
経路集約によって生成された経路情報
(2) 再配布する経路情報のMED属性値
再配布する経路情報のMED属性値を指定するには,次に示すパラメータを使用します。
- エキスポート・フィルタと組み合わせた,コンフィグレーションコマンドattribute-listまたはroute-filterのmedサブコマンド(パラメータ)
- コンフィグレーションコマンドbgp4+のdefaultmetricサブコマンド
再配布する経路情報のMED属性値を「表15-18 再配布する経路情報のMED属性値」に示します。また,エキスポート・フィルタと組み合わせたmedサブコマンド(パラメータ)でオフセット指定(±指定)した場合に,再配布する経路情報のMED属性値を「表15-19 オフセット指定した場合に再配布する経路情報のMED属性値」に示します。
med指定 学習元プロトコル MED属性値 あり 全プロトコル共通 エキスポート・フィルタで指定したMED属性値を使用します。 なし BGP4+ 外部ピアから学習した経路情報を内部ピアに広告する場合,経路情報のMED属性値を引き継ぎます。そのほかの場合,コンフィグレーションコマンドattribute-listまたはroute-filterのmedサブコマンド(パラメータ)で指定した値を使用します。default-metricサブコマンドの指定がない場合はMED属性値を設定しません。 その他 コンフィグレーションコマンドbgp4+のdefaultmetricサブコマンドで指定した値を使用します。default-metricサブコマンドの指定がない場合はMED属性値を設定しません。 表15-19 オフセット指定した場合に再配布する経路情報のMED属性値
学習プロトコル MED属性値 全プロトコル共通 「表15-18 再配布する経路情報のMED属性値」に示している再配布時に使用する経路情報のMED属性値に,オフセット値を±した値を使用します。ただし,経路情報にMED属性値が設定されていない場合は,0を基準にオフセット値を±した値を使用します。 注 オフセット値を±した結果がマイナスになった場合は0に,4294967295を超えた場合は4294967295に値が補正されます。
また,MED属性値以外に配布先プロトコルに依存する付加情報を配布先のフィルタリング条件ごとに指定できます。指定していない場合は,その配布先プロトコルのデフォルトの値となります。
指定できるフィルタリング条件を配布先プロトコルと学習元プロトコルに分けて「表15-16 配布先プロトコルのフィルタリング条件」と「表15-17 学習元プロトコルのフィルタリング条件」に示します。
なお,配布先プロトコルが,RIPng,またはOSPFv3の場合は,「14.6.2 エキスポート・フィルタ(RIPng/OSPFv3)」を参照してください。
(3) 拡張正規表現
フィルタリング条件であるAS_PATH属性やCOMMUNITY属性は,拡張正規表現(Extended Regular Expression)によって1文字単位に指定できます。拡張正規表現の指定形式は「9.4.1 インポート・フィルタ(BGP4) (3) 拡張正規表現」を参照してください。
フィルタリング条件であるAS_PATH属性はASパス正規表現(ASPath-Regular-Expression)によって複数のAS_PATHに一致するような表現で指定できます。ASパス正規表現の指定形式は「9.4.1 インポート・フィルタ(BGP4) (4) ASパス正規表現」を参照してください。
BGP4+は同一のルーティングプロトコルで学習した経路情報でも,エキスポートを定義しないと経路情報を広告しないので注意してください。
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