解説書 Vol.1
BGP4マルチパスは,一つの宛先ネットワークに対し複数の経路(パス)を生成し,トラフィックの負荷分散を実現します。本装置でのBGP4経路のマルチパス生成の概念を次に示します。
- <この項の構成>
- (1) IGP経路のマルチパス化によるBGP4経路のマルチパス
- (2) 複数のピアから学習したBGP4経路のマルチパス
(1) IGP経路のマルチパス化によるBGP4経路のマルチパス
本装置はBGP4経路のネクストホップ解決をIGP経路に基づいて行います。ネクストホップ解決時,BGP4経路のNextHop属性値に対応するIGP経路がマルチパス化されている場合はBGP4経路もマルチパス化されます。マルチパス生成の概念を次の図に示します。
図9-20 IGP経路のマルチパス化によるBGP4経路マルチパス化の概念
各ルータ間は物理的に2本のインタフェースが接続されているものとします。各ルータ間のピアリングは装置自体に付与されたアドレスを使用するように構成します。本装置ではコンフィグレーションコマンドlocal-addressによって,装置自体にアドレスを付与できます。また,コンフィグレーションコマンドexternalpeeras/internalpeeras/routingpeeras(bgpモード)のlcladdrサブコマンドを使用して,ピアリングの自側アドレスに装置アドレスの使用を指定できます。なお,外部ピアおよび内部ピア(インターナルピア)でlcladdrサブコマンドを使用する場合は,コンフィグレーションコマンドpeer(bgp externalpeeras/bgp internalpeerasモード)のmultihopサブコマンドも合わせて指定してください。
AS100から本装置1に通知されたBGP4経路(宛先:ネットワークW,NextHop:A)は,ネクストホップ解決時にIGP経路を参照します。NextHopA宛てのIGP経路のゲートウェイが「a」および「b」となっていることによって,BGP4経路のゲートウェイも「a」および「b」になります。同様に,本装置1から本装置2に通知されたBGP4経路(宛先:ネットワークW,NextHop:B)は,NextHopB宛てのIGP経路のゲートウェイが「c」および「d」となっていることによって,BGP4経路のゲートウェイも「c」および「d」になります。
- IGP経路のマルチパス化に伴うBGP4マルチパスの注意事項
- 本装置でマルチパス化を行えるIGP経路はスタティック経路およびOSPF経路です。スタティック経路のマルチパス化の概念については「8.3.1 スタティックルーティング」を,OSPF経路のマルチパス化の概念については「(2) イコールコストマルチパス」の項を参照してください。
本装置はコンフィグレーションコマンドbgpのmultipathサブコマンド,およびコンフィグレーションコマンドoptionsのmax-pathsパラメータを定義して,同一隣接ASと接続された複数のピアから学習したタイブレーク状態にある同一宛先へのBGP4経路をマルチパス化できます。また,コンフィグレーションコマンドbgpのmultipath-optionサブコマンドにall-asを指定して,異なる隣接ASから学習した,BGP4経路をマルチパス化できます。タイブレーク条件を次の表に示します。
条件 備考 LOCAL_PREF属性の値が等しい。 − AS_PATH属性の取り扱い属性のAS数が等しい。 AS_PATH属性の取り扱い属性上のパスタイプAS_SETは,全体で一つのASとしてカウントします。
AS_PATH属性の取り扱い属性上のパスタイプAS_CONFED_SETは,ASパス長には含まれません。ORIGIN属性の値が等しい。 − MED属性の値が等しい。 MED属性値によるタイブレーク条件は,同一隣接ASから学習した重複経路に対してだけ有効になります。なお,コンフィグレーションコマンドbgpのcompare-medサブコマンドにall-asを指定すると,異なる隣接ASから学習した重複経路に対しても有効になります。 同一ピアタイプ(外部ピア,メンバーAS間ピア,内部ピア)で学習している。 − ネクストホップが等しい(ネクストホップ解決時に使用したIGPメトリックが等しい)。 − (凡例) −:該当しない
注 コンフィグレーションコマンドbgpのcompare-aspathサブコマンドにnoを指定することで,ASパス長によるタイブレーク条件を無効化できます。
複数のピアから学習したBGP4経路マルチパス化の概念を次の図に示します。
図9-21 複数のピアから学習したBGP4経路マルチパス化の概念
AS100のルータ2,およびルータ3から本装置1に通知されたBGP4経路(ルータ2の経路:宛先 ネットワークW,NextHop a,ルータ3の経路:宛先 ネットワークW,NextHop b)がタイブレーク状態である場合,本装置1は各BGP4経路が持っているNextHop属性を基にゲートウェイを生成します。「図9-21 複数のピアから学習したBGP4経路マルチパス化の概念」の例では,ゲートウェイは「a」および「b」となります。なお,該当するBGP4経路を本装置1からそのほかのBGP4ピアに広告する場合は,今まで示した2経路のうち最優先経路を広告します。
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