解説書 Vol.1

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9.2.5 高速経路切替機能

<この項の構成>
(1) 概要
(2) BGP4プロトコルによる適用例(第2優先経路への切り替え)
(3) BGP4プロトコルによる適用例(マルチパス経路の縮退)

(1) 概要

高速経路切替機能は,同一の宛先を持つ複数の経路が存在する場合に,最も優先度が高い経路情報(第1優先経路と呼ぶ)と,第1優先経路の次に優先される経路(第2優先経路と呼ぶ)をあらかじめルーティングテーブルに登録しておき,インタフェースダウンなどによって第1優先経路が使用不可能になったとき,素早く第2優先経路をフォワーディングテーブルに登録することで,通信停止時間の短縮を図る機能です。

注意
オプションライセンス【OP-MPLS】を有効にしているソフトウェアでは,高速経路切替機能をサポートしません。

高速経路切替のサポート範囲を次の表に示します。

表9-6 高速経路切替のサポート範囲

切替契機 切替内容
インタフェースダウン 第2優先経路への切り替え
マルチパス経路の縮退
インタフェースダウンを伴わないIGP経路の変更によるBGP経路のNextHop変更 第2優先経路への切り替え
マルチパス経路の縮退
インタフェースダウンを伴わないピア切断によるBGP経路のNextHop変更 第2優先経路への切り替え
マルチパス経路の縮退
BFD機能による隣接障害検出 第2優先経路への切り替え
マルチパス経路の縮退

注※ OSPFおよびスタティックでサポートします。


高速経路切替を適用する経路の組み合わせを次の表に示します。

表9-7 高速経路切替を適用する経路の組み合わせ

項目 第1優先経路※3※4
BGP4 OSPF RIP IS-IS スタティック(gateway指定)※1 スタティック(remote-gateway指定)※1 スタティック(interface指定)※1※2 集約経路 直結経路
第2優先経路
※3
※4
BGP4 × ×
OSPF × ×
RIP × ×
IS-IS × ×
スタティック(gateway指定)※1 × ×
スタティック(remote-gateway指定)※1 × ×
スタティック(interface指定)※1※2 × ×
集約経路 × × × × × × × ×
直結経路 × × × × × × × ×

(凡例) ○:適用する  ×:適用しない  −:この組み合わせは発生しない

注※1 
コンフィグレーションコマンドstaticのrejectサブコマンドまたはnoinstallサブコマンドを指定した場合は高速経路切替を適用しない。

注※2 
Nullインタフェース,local-addressまたはbroadcast型インタフェースを指定した場合は高速経路切替を適用しない。

注※3 
IPv4 over IPv6トンネルを送出インタフェースとする経路については高速経路切替を適用しない。

注※4 
第1優先経路または第2優先経路をルーティングテーブルに追加後,本経路に高速経路切替機能が適用されるまで,1万経路当たり約3秒の時間を要します。

その間,経路切替契機が発生しても,高速経路切替が適用されない場合があります。


(2) BGP4プロトコルによる適用例(第2優先経路への切り替え)

次の図の様に,BGP4プロトコルが複数のピアから学習した同一宛先の経路情報で高速経路切替を行うには,コンフィグレーションコマンドoptionsのfast-rerouteパラメータと,コンフィグレーションコマンドbgpのfast-rerouteサブコマンドでgen-secondary-routeパラメータを設定し,第2優先経路を生成する必要があります。この場合,「9.3.2 経路選択アルゴリズム」で示す優先順位が,最も高い経路が第1優先経路に,2番目に高い経路が第2優先経路に選択されます。なお,第1優先経路と第2優先経路のプリファレンス値が同じ値でない場合には,第2優先経路は生成しません。

図9-2 BGP4プロトコルによる高速経路切替機能の適用例(第2優先経路への切り替え)

[図データ]

この図で本装置Aは,ネットワークB宛の経路情報を学習した本装置Bおよび本装置Dとピアを形成し,ネットワークB宛の経路情報を本装置Bおよび本装置Dのそれぞれから学習しています。本装置Bから学習した経路情報は本装置Dから学習した経路情報よりも優先度が高いとします。また,本装置Bは,ネットワークA宛の経路情報を学習した本装置Aおよび本装置Cとピアを形成し,ネットワークA宛の経路情報を本装置Aおよび本装置Cのそれぞれから学習しています。本装置Aから学習した経路情報は本装置Cから学習した経路情報よりも優先度が高いとします。

この状態で第2優先経路を生成するように設定した場合,本装置Aおよび本装置Bから学習した経路を第1優先経路,本装置Cおよび本装置Dから学習した経路を第2優先経路とし,第1優先経路をフォワーディングテーブルに登録します。これによって本装置AではネットワークB宛の経路は本装置Bにルーティングし,本装置BではネットワークA宛の経路は本装置Aにルーティングします(図の(a)のケース)。

このとき,本装置Aと本装置Bとの間で障害が発生し,第1優先経路が使用不可能になると,即座に第2優先経路をフォワーディングテーブルに登録し,本装置AではネットワークB宛の経路は本装置Dにルーティングし,本装置BではネットワークA宛の経路は本装置Cにルーティングします(図の(b)のケース)。

このように,本装置Aと本装置Bでインタフェース障害を検出して即座に第2優先経路に切り替えることで通信停止時間を短縮できます。

(3) BGP4プロトコルによる適用例(マルチパス経路の縮退)

コンフィグレーションコマンドoptionsのfast-rerouteパラメータが設定されている場合,マルチパス経路の縮退が高速化されます。

図9-3 BGP4プロトコルによる高速経路切替機能の適用例(マルチパス経路の縮退)

[図データ]

この図で本装置Aは,ネットワークB宛の経路情報を学習した本装置Bおよび本装置Dとピアを形成し,ネットワークB宛の経路情報を本装置Bおよび本装置Dのそれぞれから学習しています。本装置Bから学習した経路情報と本装置Dから学習した経路情報の優先度は同一とします。また,本装置Bは,ネットワークA宛の経路情報を学習した本装置Aおよび本装置Cとピアを形成し,ネットワークA宛の経路情報を本装置Aおよび本装置Cのそれぞれから学習しています。本装置Aから学習した経路情報と本装置Cから学習した経路情報の優先度は同一とします。

この状態でBGPマルチパスが設定されている場合,本装置Aは本装置Bから学習した経路と本装置Dから学習した経路の間でマルチパスを形成しフォワーディングテーブルに登録します。また,本装置Bは本装置Aから学習した経路と本装置Cから学習した経路の間でマルチパスを形成しフォワーディングテーブルに登録します。これによって本装置AではネットワークB宛の経路は本装置Bまたは本装置Dにルーティングし,本装置BではネットワークA宛の経路は本装置Aまたは本装置Cにルーティングします(図の(a)のケース)。

このとき,本装置Aと本装置Bとの間で障害が発生し,マルチパスの一方が使用不可能になると,使用不可能となったパスを即座にフォワーディングテーブルから削除し,本装置AはネットワークB宛の経路はすべて本装置Dにルーティングし,本装置BはネットワークA宛の経路はすべて本装置Cにルーティングします(図の(b)のケース)。

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