解説書 Vol.1
OSPFが動作しているルータは,ルータ間の接続性を検出するため,インタフェースごとにHelloパケットを送信します。Helloパケットを他ルータから受信することによって,ルータ間でOSPFが動作していることを認識します。
- <この項の構成>
- (1) ルータ間接続条件
- (2) ブロードキャスト型ネットワークと指定ルータ
(1) ルータ間接続条件
ブロードキャスト型とポイント−ポイント型とに関係なく,ルータ間を直接接続するネットワークのそれぞれについて,接続するルータのインタフェースでのOSPFの定義は,次に示す項目が一致している必要があります。これが一致していないルータ間では,OSPF上は,接続していないことになります。
ブロードキャスト型ネットワークでは,同一ネットワークへ接続しているすべてのルータのインタフェースは,IPネットワークアドレスとマスクが同じである必要があります。
OSPFでは,接続しているルータからの経路情報が正しくそのルータからのものかどうかを検証するために,認証を使用できます。認証を使用する場合は,同一ネットワークへ接続しているすべてのルータの,このネットワークへのインタフェースに定義した認証方式と鍵が一致している必要があります。認証については「8.5.6 認証」を参照してください。
ルータ間の直接接続では,両ルータのインタフェースに定義したエリアが一致している必要があります。
(d) HelloIntervalとRouterDeadInterval
OSPFでは,直接接続しているルータに自ルータを検出させるために,Helloパケットを送信します。HelloIntervalはHelloパケットの送信間隔,RouterDeadIntervalは,あるルータからのHelloパケットを受信できないことを理由にそのルータとの接続が切れたと判断するまでの時間です。検出と切断を適切に判断するためには,直接接続しているルータのインタフェースに定義した,この二つの値が一致している必要があります。
スタブエリアとNSSA,そのどちらでもないエリアとでは,エリアに通知される情報が異なります。このため,OSPFが二つのルータを直接接続していると判断するには,インタフェースが所属しているエリアのスタブについての定義が一致している必要があります。
(f) OSPFを使用するインタフェースの設定についての注意事項
OSPFでは,インタフェースに定義してある送信時パケットの最大長(MTU)と同じ長さのパケットを送信する場合があります。ここで,受信側のインタフェースに定義してある受信時パケットの最大長(MRU:特に記述がなければ,MTUと同一)よりも長い場合,通常のトラフィックでは顕在化しないルータ間の相互通信不可能の問題が発生する場合があります。
このため,OSPFを使用する場合は,特にすべてのネットワークおよびネットワークに接続しているすべてのルータのインタフェースについて,MTUが他のすべてのインタフェースのMRU以下に定義してあることの確認をお勧めします。
ブロードキャスト型ネットワークでは,トポロジ上の頂点であるネットワークとネットワークに直接接続しているルータ間の接続情報を管理するために,指定ルータ(Designated Router)とバックアップ指定ルータを選択します。指定ルータの障害時には,ネットワークの接続情報の管理ルータを速やかに移行するために,バックアップ指定ルータが指定ルータになります。
指定ルータおよびバックアップ指定ルータの選択には,ルータのネットワークへのインタフェースに定義するpriority(コンフィグレーションコマンドinterface(ospf areaモード)のpriorityサブコマンド)を使用します。指定ルータが存在しない場合,バックアップ指定ルータを指定ルータに選択します。指定ルータもバックアップ指定ルータも存在しない場合は最もpriorityの高いルータを指定ルータに選択します。指定ルータは存在するが,バックアップ指定ルータが存在しない場合,指定ルータを除いて最もpriorityの高いルータをバックアップ指定ルータに選択します。両ルータとも存在する場合,新しくよりpriorityの高いルータが現れても,選択は変更しません。
あるルータのあるインタフェースのpriorityを0と定義すると,このルータはインタフェースが接続しているエリアについて,指定ルータにもバックアップ指定ルータにも選択されません。
ブロードキャスト型ネットワーク上に複数のルータがあり,このネットワークをトラフィックの転送に使用する場合は,どれかのルータのネットワークに接続しているインタフェースのpriorityを1以上にする必要があります。
接続しているルータ数の多いネットワークでは,指定ルータの負荷は高くなります。このため,このようなネットワークに複数接続しているルータが存在する場合,このルータが複数のネットワークの指定ルータにならないように,priorityを設定することをお勧めします。
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